全ての中小企業にSDGsを根付かせる、中小機構の本気度をみる

2021年度、日本全国にSDGsの活動を浸透させるべく、国の中小企業の振興政策実行の中核を担う(独)中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)がついに動き出した。国内中小企業・小規模事業者に対し、SDGsの基本理解の浸透からSDGsに則した経営計画の策定支援、実行サポートまで、SDGsを基盤にした経営が当たり前な社会をつくるべく、これまで以上の経営支援体制を構築した。その全貌を中小機構理事の高橋浩樹氏に伺った。           

【会社概要】
・独立行政法人中小企業基盤整備機構
・東京都港区虎ノ門3-5-1虎ノ門37森ビル
・設立2004年7月
・資本金:1兆1154億393万469円(2021年11月26日現在)
・人数:常勤職員773人(2021年4月現在)

中小企業基盤整備機構は、事業の自律的発展や継続を目指す中小・小規模事業者・ベンチャー企業のイノベーションや地域経済の活性化を促進し、我が国の経済の発展に貢献することを目的とする政策実施機関。経営環境の変化に対応し持続的成長を目指す中小企業等の経営課題の解決に向け、直接的な伴走型支援、人材の育成、共済制度の運営、資金面での各種支援やビジネスチャンスの提供を行うとともに、関係する中小企業支援機関の支援力の向上に協力する。

ゲスト

高橋 浩樹 様
独立行政法人中小企業基盤整備機構
理事

【経歴】
昭和58年4月 地域振興整備公団入団
平成31年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構北陸本部長
令和2年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構事業推進役[兼]北陸本部長
令和3年1月 独立行政法人中小企業基盤整備機構理事

中小機構のSDGs支援始動

中小機構は、2021年より本格的なSDGs支援活動を開始した。

まずは2021年3月末に「中小企業SDGs応援宣言」を行い、3つの柱を宣言した。

1.中小企業・小規模事業者へのSDGsの普及・啓発に取り組みます。

2.SDGsの考えに沿った中小企業・小規模事業者の活動を支援します。

3.中小機構自らもSDGsの考え方に沿った組織運営を行います。

この宣言に基づきSDGsの相談窓口を開設。東京・大阪の2か所から始まり、自治体や商工会、商工会議所といった地域の支援機関とも連携し現在では全国20箇所で相談窓口を拡充。さらにオンラインでの相談も可能となり(EーSODAN:https://bizsapo.smrj.go.jp/)いつでもどこでもSDGsに係る経営相談を受けることが可能な体制を整えた。

また、特に関心の高いカーボンニュートラルの対応に関しては別途東京で専門窓口を設置。加えて中小企業・小規模事業者が自らの取り組みを確認できる「カーボンニュートラルチェックシート」(https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/carbonneutral/checksheet.html)を公開。

個別の相談対応だけでなく、多くの方に周知を行うべく、SDGsに係るセミナーも積極的に開催。これまでに全国で20回以上実施した。また事業者が取り組んだSDGsの事例をまとめた冊子も作成、取り組み方に悩む事業者にとって指南書となる一冊が出来上がった。          

相談対応やセミナーだけでなく、SDGsを意識したビジネスチャンスの創出にも取り組んでいる。中小機構の運営するビジネスマッチングサイトJ-GoodTech(https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/)を活用し、カーボンニュートラル、脱炭素をテーマとしたオンライン商談会を開設し160件のオンライン商談が実現した。

これらの取り組みは中小機構が運営する経営支援情報サイトJ-NET21の特設ページ(https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/index.html)にて日々更新している。

SDGsの相談傾向

相談企業は業種業態、企業規模を問わず様々で、2021年4月から11月までに700件の相談、月に約100件の相談が寄せられている。

相談内容は当初、そもそもSDGsとは?といった基本的な情報収集が多かったが、徐々にSDGsを経営計画に取り入れていきたいという具体的な相談も直近では多く寄せられるようになった。

SDGsの取り組みを行うことはコストがかかると思われがちだが、これまで行ってきた企業活動を振り返った時に、実はSDGsの目標に合致する活動をすでに行っていたことに気づいてもらうことも、SDGsを理解していただく第一歩だと思う。

また今後は、SDGsを理解していただくための啓発活動は継続しつつ、中小機構の強みである企業に直接入り込んだハンズオン支援により、SDGsを経営の根幹に据えた経営計画の策定支援や計画に基づいた新商品・新サービスの開発といった実行面の支援を同時に推し進めていきたい。

中小機構自身のSDGsへの取り組み

企業支援を行う側としては、自らもSDGsの取り組みを更に強固なものにしていく必要があると感じている。機構内でSDGsへの関心が高い人材を「SDGsパートナー」に立候補してもらい、現在約130名のSDGsパートナーが中心となって、セミナー講師としての登壇や、経営支援の現場への積極的な参画を行うなど、日々研鑽を積んでいる。

また、2019年より開始した中小企業応援士を通じた取り組みもその一つである。「中小企業応援士」とは、顕著な功労があり、地域への影響力もある経営者や中小企業支援者に対して委嘱している制度で、当機構とともに中小企業の成長、発展を支援していただくことが主な役割である。現在約200名登録され、定期的に意見交換の場も設けているが、その中でもやはりSDGsに係る関心は尽きない。このため、応援士自身のSDGsに係る取り組みの共有や応援士を通じた機構のSDGs支援施策の情報提供も進めていきたい。こうした取り組みを足掛かりとし、更にSDGs経営の機運を醸成していく。

SDGsが当たり前の経営へ

SDGsの取り組みは企業規模に関わらずどの企業にとっても無視できない状況になってきている。サプライチェーンを維持するために取引先企業の要請から仕方なく取り組むとか、自治体のSDGs認証等を取得するために取り組むというようなものだけでなく、まさに企業活動を行う基本姿勢として自発的に取り組むものであるべきである。

SDGsに取り組むことが当たり前のビジネス環境をつくることこそ、中小機構に課せられた使命である。

国の中小企業施策を担う中小機構がSDGsの実現に向けて、様々な施策を講じていることに驚くとともに、他の施策も含めてまだまだ活用の余地があると思われる。こうした施策を日本全国の9割以上を占める中小企業が十分に活用できていないのは大きな機会損失ではないだろうか。SDGsだけでなく、専門家によるハンズオンでの経営支援や各種補助金制度も豊富に用意されており、中小機構からますます目が離せない。

【JNET21  SDGs特設サイト】
https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/index.html

J-Net21 経営課題を解決する羅針盤

【中小機構オンライン相談窓口:EーSODAN】
https://bizsapo.smrj.go.jp/

E-SODAN ~いつでも経営相談室~

【カーボンニュートラルチェックシート】
https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/carbonneutral/checksheet.html

【中小機構の運営するビジネスマッチングサイトJ-GoodTech】
https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/

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