総務省統計局が5年に1度実施している国勢調査は、大正9年(1920年)に調査が開始され、令和2年(2020年)に100年の節目を迎える。国勢調査は日本の人口の実態を把握する唯一の全数調査であるが、こうした公的統計の作成面にも新型コロナウイルス感染症の影響がでてきている。特に調査員の募集活動への影響が大きく、総務省統計局は7月7日に「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた令和2年国勢調査の対応方針」として、調査期間の一部地域での延長と、国勢調査の結果の公表時期の延期を発表した。
厚生労働省も、毎年実施している国民生活基礎調査について、新型コロナウイルス感染症への対応などの観点から、令和2年調査を中止すると発表。文部科学省も小学校、中学校の児童を調査対象とした全国学力・学習状況調査を中止すると発表している。
新型コロナウイルス感染症で先行きが不透明ななか、これらの公的統計の調査の延期、中止が相次いでいることは、現状を把握するうえで今後大きな懸念材料になるだろう。
そうしたなか、公的統計を代替、補完するデータとして、POSデータやクレジットカードの取引情報、スマートフォンの位置情報[1]、SNSの投稿などの「代替データ」が注目を浴びている。
国内クレジットカード最大手のジェーシービー(東京都港区)とナウキャスト(東京都千代田区)の2社は、匿名加工されたクレジットカードの取引データや属性データを活用し統計化した、国内消費動向指数「JCB消費NOW」を提供している。すべての消費動向を示す総合消費指標をはじめとして、業種別の消費指数について2週間で集計し配信されており、政府の公表する既存の消費統計などと比べて速報性が高い。また、この「JCB消費NOW」のデータは、内閣府の月例経済報告[2]など政府の景気判断においても活用されている[3]。
帝国データバンクが毎月実施しているTDB景気動向調査は、2002年に調査が開始されてから18年間、毎月多くの企業の皆様からご回答をいただくことで、代替性、速報性の高い情報を発信している。新型コロナウイルスによる影響で大変ななか、多くの企業の皆様から貴重なお時間をいただいていることで、継続して調査結果を公表できている。この場をおかりして御礼を申し上げるとともに、いただいた貴重な声をより見やすい形で公表できるよう努めたい。
[1] 当コラム2020年4月15日掲載「新型コロナウイルス対策に活用されるビッグデータ」
[2] 内閣府「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(令和2年7月)」https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2020/07kaigi.pdf
[3] TDB景気動向調査でも、個人消費に関連した企業のセンチメントを測る指標として、業種分類のうち、小売業および飲食店、旅館・ホテル、娯楽サービス、教育サービスの景気DIから、「個人消費DI」を作成している。(TDB景気白書2019年版、景気Special Report No.1 「消費の実態はどこにあるのか?」)
この記事は帝国データバンク様の記事を転載したものです。
新型コロナウイルスの影響を受ける公的統計と存在感増す代替データ