米国のスミス大学で外国語科目として日本語を履修している学部生と武蔵野大学グローバル学部日本語コミュニケーション学科神吉ゼミ3年生および大学院言語文化研究科の学生が、日英二言語でSDGsについて一緒に話し合い、考え、調査し、web雑誌を作成してweb上で発信を行いました。
日本語コミュニケーション学科は日本語と外国語によるコミュニケーションを通した社会参加や課題解決を重視していることから、「SDGs×学科・研究科の専門性」を考え、日本語と英語の二言語を使用し取り組むことにしました。
この活動では、SDGsの17の目標の中から、グループで最も興味のあるテーマを選び(2つ以上の組み合わせも可)、そのテーマに関係のある自分たちの身近にある問題について調べ、わかったことや目標を達成するために自分たちでできることを考え、協働でウェブガジンを作ります。
実施目的は以下の3点です。 (1)保持している言語・文化、社会的背景等が異なる学生同士でSDGsを共通テーマとして協働作業を行うことで、世界の課題解決に向けて協力して取り組むことを,自分たちのできる範囲で実現する。 (2)日英の二言語でプロジェクトを行うことによって、日英それぞれの学生たちの外国語使用機会を増やすとともに、外国語能力の向上と洗練を図る。 (3)SDGsについて調べ、まとめ、web発信することで、世界のより多くの人たちに課題の存在とその解決の必要性を訴える機会を作る。
この活動を通して、計5種類総計99ページのweb雑誌を作成しました。 2020年度は2019年度の経験を生かし、さらに学びの質を高めて同様の取り組みを継続していく予定です。
この記事の著者 グローバル学部 日本語コミュニケーション学科 神吉宇一
出雲殿は、愛知県と静岡県に4つの法人を置き冠婚葬祭サービスを展開するグループ企業。両県であわせて5の結婚式場・アニバーサリー会場と65のセレモニーホール(葬儀会館)を展開している、地域に根ざした東海地区の代表企業であります。サスティナブル経営がグループの企業理念と一致するとして、このたびSDGs宣言を行い、SDGsの目標達成に向け経営の舵を切りました。地域とともに歩んできた企業が、SDGsの目標達成に挑む理由を聞きました。
社員数 838名(男499名、女359名) ※2022年4月現在 グループ資本金 5億8,600万円 グループ売上高 224億円(2020年8月期)
【グループ各法人】 ■ 株式会社出雲殿 名古屋法人 愛知県名古屋市中村区名駅南3丁目3番27号 営業エリア:名古屋、春日井、小牧、尾張旭、瀬戸 ■ 株式会社出雲殿 豊田法人 愛知県豊田市小坂本町2丁目43番地1 営業エリア:安城、刈谷、知立、東浦、豊田、みよし、日進 ■ イズモ株式会社 静岡県浜松市中区三組町185番地 営業エリア:浜松、掛川、菊川、袋井、磐田 ■ 株式会社出雲殿 岡崎法人 愛知県岡崎市竜美西2丁目2番地7 営業エリア:豊橋、田原、豊川、岡崎、西尾 ■ 株式会社出雲殿互助会静岡法人 静岡県浜松市中区連尺町307番地の14 ■ 株式会社出雲殿互助会愛知法人 愛知県名古屋市中村区名駅南4丁目9番地22号 ■ 株式会社出雲流通センター 静岡県浜松市南区飯田町246番地の1 ■ 株式会社出雲事務管理センター 静岡県浜松市中区連尺町307番地の14
インタビュー先 ■■ 株式会社出雲殿互助会静岡法人■■■■ FUREAI事業部 顧客支援課 ■■ 株式会社出雲殿名古屋法人本部 ■■ 株式会社出雲事務管理センター 鈴木 好貴■ 様■■■ 山田 修功■ 様■■■ 松本 克博■ 様■■■
SDGs宣言を行うこととは
まずSDGs宣言書を作成するにあたり、何から実施したらいいのか、何を優先すべきかが分からなかったです。また、グループ各社の事業内容、サービス内容が異なることから、グループ一丸となって同じ目標に向かってSDGsを推進するということが難しく感じました。
ただ、出雲殿グループにはブレない企業理念がありました。
「出雲殿グループは、地域社会に最高のサービスを提供することを使命とする」
また、社訓として ・調和のとれた、伝統の重さを大切にする。 ・開拓の精神を忘れず、いつの時代も先駆者である。 ・創造の中から、夢を現実のものにする。 これらを掲げてこれまで活動してきました。
SDGsの目標、行動を紐解いてみると、目指すところはグループの理念、社訓と合致すると認識しました。SDGsの活動は必ずしも新しいことに取組むことではなく、自分たちがこれまで行ってきたことを整理し、目標化し、目標に向けて活動し続ける。それが持続可能な社会をつくるSDGsの活動であるということに気づきました。その気づきがSDGs宣言書作成につながってゆきました。
出雲殿グループは、地域社会に貢献する事が最大の目標 です。 SDGs宣言書作成にあたり、グループ各社より持続可能な社会をつくるために行っている日々の活動を集めました。
SDGs宣言を行う
SDGs宣言を行うにあたり、宣言をして終わりでないことは認識していました。 宣言は具体的な行動にまで落とし込んで明記し、宣言している以上は具体的に実行しなければならない、具体的な行動目標を各法人ごとに半期に一度、どこまで、どういう活動をしたのか、取り組んだのかを開示し、それに対する修正計画や、新たな取り組みがあれば付け加えていくことを決めました。
宣言は、17の目標から6つを重点目標として絞り込みました。
その中で最重要項目においたのは、4質の高い教育をみんなにと、11住み続けられるまちづくり 、になります。地域のことを最重要に考え、SDGs活動は地域への恩返しであること を改めて認識しました。
4 質の高い教育をみんなに、 の目標では、地域のサッカー大会を主催し(https://www.izumoden.co.jp/news/2050.html )、 学びたくても学べない経済状況の地域の子どもたちに、出雲殿財団による奨学金制度を創設し勉学ができる環境を提供しています。(https://izumoden-foundation.or.jp/ )11住み続けられるまちづくり、 の目標を具体化するため、高齢者「地域見守り」ネットワークの協定を拠点である浜松市と結びました。今ではサービスを提供させていただいている19の自治体(磐田市、掛川市、豊橋市、豊川市、岡崎市、知立市、刈谷市、東浦町、安城市、豊田市、みよし市、春日井市、小牧市、尾張旭市、長久手市、名古屋市、あま市、日進市、愛知県)に拡大し、地域の見守り活動を開始しています。 これら活動はSDGs宣言を行う以前より、地域貢献として構想され行われてきたものでした。 ただSDGs宣言は対外的な目標だけではありません。
8 働きがいも経済成長も、 の目標では、地域へ貢献するための基盤である社内にも目を向けました。 地域と永続的に共に発展してゆく為、地域は働く場所であり社員が生活を営む場所であります。 社員の働きがいは地域貢献につながり、出雲殿グループは地域に貢献してこそ存在意義があると感じます。宣言は実行するために行います。半年後、1年後、2年後、出雲殿グループとしてどこまで達成できているか。その達成度合いが地域に貢献できた度合いであることを信じて、出雲殿グループはSDGsの目標達成に挑みます。
出雲殿グループSDGs宣言サイトはこちら
【出雲殿グループSDGs宣言】
3 すべての人に健康と福祉を ・施設・職場内の受動喫煙の防止 ・施設・職場内のウィルス感染対策の実施(検温機やアルコール消毒液を設置) ・施設内にAEDの設置 ・定期健康診断の受診の徹底・特定保健指導実施率の向上 ・ストレスチェック回答率向上及び保健指導の実施 ・インフルエンザ予防接種の費用負担 ・従業員の日々の体調管理:管理表を活用 ・徒歩や自転車での通勤の推奨 ・柔軟な料理メニュー対応:アレルギー対応のメニュー構成、妊婦様へのメニュー配慮等 ・行政への不織布マスクの寄付 ・エコキャップ回収運動を通じて、世界の子供達にポリオワクチンを供給 ・人形供養、各種セミナーなど、地域の方のためのイベントの開催 4 質の高い教育をみんなに ・社員教育の実施(年数回の試験実施) ・コンプライアンス研修の実施 ・募集資格者など、有資格者の増員(募集資格者、ブライダルプロデューサー、葬祭ディレクター、終活 コーディネーター等) ・出雲殿財団による奨学金制度 ・大学、学術機関への寄付金の贈呈 ・高齢者にとっても学習しやすく生涯楽しく続けられる学習教材・サービスを提供 ・美術品の収集と展示を通じた文化の継承 ・セミナーの開催(葬儀の役割、終活、社葬、生前贈与、エンディングノート、防災、脳トレ 等) ・イベントの開催(硬筆教室、ヨガ教室、フラワーアレンジメント 等) ・少年少女サッカー大会への協賛(刈谷市) 5 ジェンダー平等を実現しよう ・女性リーダーの活躍、育児との両立(育児休業取得率100%、復職率 100%) ・ハラスメント研修の開催 ・性別に関係なく、セレモニーディレクターを採用 ・女性の結婚や産後の働き方改革や育児と仕事の両立を叶えるワークライフバランスを支える施策(時短 勤務形態の導入[性別に関わらず取得可能]) ・浜松市助産師会への支援 ・結婚相談所「出雲殿互助会の縁結び」で、婚活を支援 8 働きがいも経済成長も ・働き方改革への積極的な取組 ・年功序列制度の撤廃 ・仕事と子育ての両立支援 ・健康的で働きやすい職場環境作り ・有給休暇取得奨励 ・残業時間の軽減、休日日数の増加 ・パート、アルバイトの昇給制度を採用・インターンシップ:マナー研修や祭壇の組み立てなどを通し て、「仕事」を体験していただく場を提供 ・ゴミの分別:職場にて分別実施、ゴミ減量計画書を毎年作成 ・花材の菊やカトレア・胡蝶蘭は直接地元の農家から仕入れ 11 住み続けられるまちづくりを ・市町村とのあんしんネットワークに関する協定の締結 (高齢化や核家族化に加え、地域とのつながりの希薄化などによって、高齢者の社会的な孤立が進む 中、見守りや声掛け、適切な関係機関との連携を行う事で、高齢者を地域で見守るネットワーク) ・一般社団法人 冠婚葬祭文化振興財団が行う、社会貢献基金への寄付 ・自社所在の自治体と地域見守り協定をおこない、営業活動を通じた地域の見守り活動を実施 ・地域防災活動(セミナー・訓練等) ・地域清掃活動に参加 ・災害支援協定締結(豊田市、刈谷市、東浦町、みよし市、日進市、あま市等) ・まちづくり協議会:地域活動の実施、地域説明会などで弊社会場を提供 ・交通立哨 ・地域より「認知症の人に優しいお店」に指定されている ・環境パートナーシップ事業者として活動 ・お祭りなどの地域イベント時に地元住民へのサービス還元 ・地元花火大会などのイベント時への協賛 12 つくる責任 つかう責任 ・飲食事業: 地産地消(できるだけ地元で採れた無添加の食材を、一番美味しい旬の時期にお届けできる よう努めています。) ・食品ロス減少への取り組み:冠婚葬祭料理での一人当たり食べきり適正重量の設定 ・冠婚料理では、 ①アレルギー対応を顧客へ行い、食べられない料理は提供しない ②特に酸化に強く、調理メリットもある米油を使用 ・葬祭料理では、 ①仕出し弁当料理の重量表示 ②食用油の酸化防止循環機使用による使用量の削減 ・廃油は専門業者にて回収され廃油リサイクル商品として活用 ・端材・ロスを出しにくい冷凍野菜・乾燥野菜を活用 ・国産を中心とした地産地消に取り組むことで農業のサスティナブルに貢献、ごみを出さない料理商品 の開発 ・伊勢海老の殻を専門業者にて別回収し、肥料やせんべい等の原料に再利用 ・段ボール・ペットボトルを分別してリサイクル業者へ渡すことで資源の再利用に貢献 ・従業員一人一人が資源を大切にし、ゴミを減らす意識を持って業務に取組む ・100%天然素材のゴム風船を使用:日光や水によって分解される100%自然の原料ラテックス製品 コトラでは業界動向や今後のキャリアについて無料キャリア相談会を開催しております。 最新の採用動向や非公開求人情報などの情報提供をさせていただきます。 また、ざっくばらんな意見交換・ご相談をさせて頂きながら、理想のキャリアを歩むためのアドバイスをさせていただきます。 お気軽にご相談ください。
昨今、環境問題などESGに配慮した事業を行う企業に対する「ESG投資」が話題となっている。一方で実態は異なるのに、投資家らを意識して企業が環境に配慮していることを装う「グリーンウォッシュ」の課題も指摘される。そうした中、存在感を放つのが、中立の立場で企業の経営体制を評価する「格付け機関」だ。その格付け機関の中でも、「Sustainalytics」は国連が持続可能な開発目標 (SDGs)を発表した2015年よりもずっと前から、環境影響によるリスク情報や評価を提供し続けてきた。1992年に創設されて以来、ESGのコーポレート・ガバナンスのための調査、レーティング、分析などを手掛ける大手 ESG 評価機関として、世界中の投資家の投資戦略をサポートしてきた、いわばESGレーティングの「老舗」機関。更に、現在ではグリーン、ソーシャル、トランジションボンド等のサステナブル・ファイナンスに対する外部評価を行うサービスも展開している。欧米・北米を中心に世界で17の拠点を有し、1200人以上のスタッフを抱え、依然、その規模を拡大し続けている。2016年10月に開設された日本法人で働くお二人に、その組織のミッションや風土を伺った。
朝妻 弥生様
(サステイナリティクス クライアントリレーションズ/ディレクター)
ジャーディン・フレミング証券東京支店(現JP モルガン証券)を経て、野村證券シンガポール/香港/ロンドン現地法人でアジア株式リサーチセールスとして、グローバルの機関投資家向けのアジア株式業務に長期に渡り携わる。サステイナリティクス・ジャパンには2019年に入社。クライアントリレーションズとして、ESGリサーチの機関投資家向けセールスを担当。現在、日本国内外の多くの投資家や金融機関のESG投資のサポートに従事。
兼松 浩介様 (サステイナリティクス コーポレート ソリューションズ/アソシエイト・ディレクター)
2021年に入社し、コーポレートソリューションズ・チームの日本リーダーを務める。サステイナリティクス入社以前は、ボストン コンサルティング グループ及びA.T. カーニーにて金融・保険業界を中心に全社改革、新規事業、営業・マーケティング、サステナビリティ戦略などの多数プロジェクトを遂行。また、ワシントンD.C.の世界銀行本部及び気候投資基金(Climate Investment Funds)にて、途上国・新興国向けのマクロ経済分析・政策提言や気候変動対策への資金供与(グリーンボンドなど)に関する業務に従事。東京大学教養学部(国際関係論)卒業、コロンビア大学修士(公共経営)。
ーどんなサービス・プロダクトを提供されていらっしゃいますか。
朝妻様)
クライアントリレーションズ という部門で、機関投資家に向けたESGリスクに関する様々なソリューション提供しています。一番の主力商品は「ESGリスクレーティング」 で、企業に対しESGのリスク評価を行うプロダクトです。投資家が投資先の企業の財務リスクを理解できるよう設計されています。ほかにも国のリスクや、企業のカーボン削減への取り組みを評価するプロダクト、また、企業が人権に反していないか、武器製造に関わっていないかなどのスクリーニング評価をするプロダクト、企業の不祥事を追うプロダクトもあります。他には、投資家が投資先の企業とのエンゲージメントをお手伝いをするスチュワードシップサービスも行っています。
兼松様)
私は、事業会社や金融機関をお客様とするコーポレートソリューションズ という部署で、企業がグリーンボンドや社会貢献に寄与することを目的としたソーシャルボンドを発行するときに、そのボンドが「国際的な基準や市場慣行を満たしている形で発行されるボンドである」という意見を示す「セカンドパーティーオピニオン」=SPO を提供しています。企業がサステナビリティに寄与する事業活動に使うお金を調達したいときに、国際的に見て投資家の期待する効果につながるプロジェクトであるか否かをチェックし、オピニオンを書く仕事です。対象となる金融商品はボンドが中心ですが、ローンもあります。たとえば最近ですと、ESGやサステナビリティに関する野心的な目標の達成に応じて、企業が通常よりも有利な金利で資金調達できる「サスティナビリティ・リンク・ローン」という商品も出てきており、そのローンが環境や社会にとって良い形で使われる得るのかについてのオピニオンも書いています。
ーSPOとはどんなものでしょうか。
兼松様)
サステイナリティクスのSPOは、資金調達者である企業が策定するフレームワーク、特にボンドもしくはローンからの調達資金の活用や管理方法が広く一般に認められた市場原則(グリーンボンド原則やグリーンローン原則など)及び市場慣行や投資家からの期待に沿っていることを確認し、投資家に対して示す意見書です。あくまでも中立的な立場でのオピニオンであり、助言やコンサルティングではありません。あくまで、企業ではなく投資家に対し、我々の意見と正しい情報を提供することが目的です。弊社ではインベストサイドもコーポレートサイドも投資家との関係を最も重視しており、その関係の中でサステナブル・ファイナンスの市場を創ることを目指しています。
ー2016年に日本法人を立ち上げられた経緯はなんでしょうか。
朝妻様)
世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が各投資機関にESG投資を義務付け始めたことにより、投資家がESGの概念を投資に組み入れ始めたのがその時期で、そこからESGのブームが起き始め、弊社のような機関も投資家から頼られるようになり日本に拠点を構えました。
ー最近のセールスの伸びはどのくらいですか。
朝妻様)
伸びは著しく、私が入社した2019年からの2年間でも、新規セールスが約3倍になっています。投資機関も、日系で20社ほどだったのが、30社以上になっており、それがここ1年半くらいで起きています。
会社自体も、人員が私の入社時点の650人から1200人以上に増えており、2年間で2倍くらいになっています。
兼松様)
市場が伸びているので、早急に優秀な人に入ってもらうという「供給サイド」を埋めていく必要があります。
ーグローバルの市場と比べると日本はどうでしょうか。
朝妻様)
ESGの考え方自体が欧州から来ているので、欧州発で色々なものが始まり日本がキャッチアップしている状況ですが、そのラグがどんどん埋まっている気がします。必ず欧州で起こったものと同じ波が日本にも来るので、アンテナの高いお客様は欧州を常に見ています。
兼松様)
弊社のビジネスの拡大をお伝えする前提として、市場自体のトレンドを共有させてください。グリーンボンド発行のグローバル市場の規模は、対前年比60〜80%の伸びと言われています。日本も同じくらいの伸びです。菅前首相がカーボンニュートラル実現を表明して以来、グリーンボンドを必要とする事業がどんどん立ち上がっています。たとえば2021年で発行額が一番大きかったNTT様のグリーンボンドですが、本業である通信事業のエネルギー効率を高める技術を開発・普及を中心とした資金使途で総計約5000億円規模の調達をされました。本案件のSPOも弊社が作成・提供させて頂いております。また、債券発行市場全体に占めるグリーンボンドの割合は、まだ10%以下ですが、今後更に増える余地があると考えられ、企業の活動自体も環境保護や気候変動対策につながるビジネスへの変革や新規事業立ち上げのために行う債券調達はグリーンボンドでおこなう、という形になるのがより普通になるのではないでしょうか。理論上、債券発行体がグリーンボンドを“Self-label”の形で発行することもできますが、投資家が安心してグリーンボンドを購入するためにはセカンドパーティーなど外部評価が欠かせませんので、グリーンボンドの発行と同時にSPOが必要とされる状況は続いていくと思います。サステナブル・ファイナンスとしては、グリーン、ソーシャルに加えて、まだ黎明期ではありますが日本政府が推進をしているトランジションファイナンスも広がってくると思われますので、我々のサービスについて引き続き大きな成長・拡大を見込んでいます。
ー御社の活動の実績はどういったものがありますか。
朝妻様)
弊社はESG評価機関として、約30年の実績があります 。私たちはESGのリーダーであるという自負を持っており、業界内でもそういった評価をされています。サステイナリティクスという名前はブランド力があると思います。世界有数の機関投資家クライアントがいらっしゃり、そうしたお客様のESG投資のお手伝いのため、ESGリサーチやデータを提供し、我々としても持続可能な世界に貢献するというのがミッションです。
兼松様)
ESG評価機関としては30年の歴史があって、投資家やキャピタルマーケット、政府の関係者からの信頼やブランドはすごくあると感じます。グリーンボンドは約10年前に新しく出た金融商品ですが、弊社は2014年にはSPOのビジネスをスタートさせており、ESG債が生まれたのとほぼ同じタイミングで参入しています。7年間事業を行い、既にグローバルの累積で800件のSPOを提供し、トップシェアを維持しています。世界の様々な国の各産業のトップ企業のESG債発行のお手伝いさせていただいていることは社員として大変誇らしく思います。創業者であるMichael Jantziは30年前にESGにフォーカスした会社を立ち上げて、非常に先見性があるなと思います。
朝妻様)
世界に17のオフィスがありますが、社員は常に増えています。採用ペースが大変速く、世界的に人材を見つけるのがチャレンジングな状況です。ESGは新しいコンセプトがどんどん登場していて、プロダクトの数もどんどん増えています。リサーチの質を保つためにも人員を増強していく必要があると感じます。
ーどんな人材が御社で活躍できそうですか。
兼松様)
当社は、より公正で公平な世界経済に貢献するという同じ情熱を持った人々のコミュニティであることを誇りにしています。そのため、より持続可能な未来に向けた私たちの価値観やビジョンを共有できる方を常に求めています。さらに、知的好奇心が旺盛で、対人関係や協調性に優れた人材を求めています。また、ESG分野の急速な成長と当社の急成長を踏まえた時に、適応力の高いチームメンバーも求めています。 入社後のトレーニングプログラムや、OJTもありますが、変化の激しい市場で展開している会社なので、そういう変化を楽しめる人がいいと思います。新たなソリューション、プロダクトも日々出てきますので、学んでいく意欲があるかどうか。これからグリーン、ソーシャルという基準も不変なものではなく、投資家が求めることや企業が新たに生み出す事業の内容に応じて変わってくるので当社が参照する自社独自の基準(タクソノミー)も進化していきます。そうした変化についていき、プロダクト・サービスをデリバリーできる人材はウェルカムです。コンサル、金融業界に限らず様々なバックグラウンドをお持ちで、ESGを積極的に学んでいく意欲を持って仕事を進めていくエネルギッシュな方が向いていると思います。
朝妻様)
適応力が高く、変化に耐えられるが重要です。ESGに興味がないと辛いでしょう。逆にESGに興味があれば、とことん学べる ので非常に面白いです。自分で考えて行動できる、むしろ無いものを作り上げるくらいの気概を持ったアントレプレナーシップがある人材は活躍できる と思います。
兼松様)
当社は30年以上の歴史のあるエスタブリッシュな企業という側面もありますが、ベンチャー企業で事業を作っているようなスピード感があります 。私自身も、伸びていく市場に自ら関与してその成長に貢献しているということにやりがいを感じているので、近いマインドセットの方々には楽しめる環境ではないかと思います。また、国内市場も伸びていますが、海外の各地域でも市場は伸びていますし、新たな市場のルール形成の動きもありますので、その流れにも関わっていきたいというグローバルマインドのある人なら、なお面白いと思います。“この大学のこの学位が必要”という類いのビジネスでもないので、ESGやサステナブル・ファイナンスに対する思い入れのある人が第一人者になることを目指すような場だと感じています。
ー語学力は重要ですか。
兼松様)
私は日常的にオーストラリア人やカナダ人などの上司と作戦会議をしたりプロジェクトの進捗をチェックしてもらったりするので、スムーズにやり取りをするなら、英語がしっかりできることが望ましいです。
ただ、日本チームのお客様は日本企業が中心なので、英語だけでなく、大手の機関投資家や、大企業を相手に仕事を行う最低限のビジネスコミュニケーションが必要だと思います。
ーお二人はどんなキャリアを歩んでこられましたか。
朝妻様)
私はずっと証券会社でアジア株式を20年以上取り扱ってきました。シンガポール、香港、ロンドンで営業をやり、2年半前に会社を辞めました。ここから先に投資に関わるために何を仕事にしようか考え、ESGを学ぶべきだと思いました。ESGについて学べる場所は限られており、親しかった機関投資家のお客様にご紹介いただいて、ご縁があって入社しました。機関投資家向けの営業に関わっているという点では首尾一貫したキャリアです。自分としてもESGに関わるお仕事であれば社会に貢献できると思いました。
兼松様)
これまではコンサル、国際機関で働いてきました。振り返ってみると、結果として、比較的長らくサステナビリティやESGの分野に携わってきましたが、新卒で就職活動を行っていた2000年前後には、今やっているような仕事はありませんでした。そういう意味で、今20〜30代の人は若い頃からサステナビリティをお仕事にできて羨ましいと思います。
私が今の仕事を志向する原点について、少し長くなりますが経緯をご説明します。25年前のことですが、大学の900番教室の前で何気ない会話をしている中で経済学部の友人が「今後は環境影響への取り組みが評価されて企業の株が売買される世界になる」という話をしていたのを今でも鮮明に覚えています。その時、環境とビジネスがつながるという面白い世界観だなと思いました。また、同じ年にアジア通貨危機があってアジアの発展途上国で社会的混乱が起き、「必要なところに必要なお金が回らなくなることはすごく不幸なことだ」と強く感じ、将来起こる金融危機を防ぐような仕事に関わりたいと思っていました。このような思いを持ちつつ、2015年前後に世界銀行で気候変動関連の仕事をしていた時に、グリーンボンドという金融商品に触れ、民間の資金や企業の事業活動を活用して、気候変動という地球規模の課題解決に貢献すること、本来必要なところに必要なお金が回る仕組みを作ることは、25年前に抱いた思いを実現する仕事になり得ると感じました。それらの体験が、今の仕事に携わることになった主な2つが原点です。
一方で、最初に申した通り、20年の社会人経験の中で常時サステナビリティやESGに関われたわけでなく、今持っているようなキャリアの方向性を得ることに至るまでは、様々もがいていた気がします。昔から各勤め先で、少しでもサステナビリティ、ESG、気候変動などに関わることは僅かな機会でもやりたいという思いを持ち、その時、その持ち場で最大限ベストを尽くしていたことで、今やっと“connect the dots”の状態になっているのかなと思います。
新卒で勤務した外資系コンサルティングファームのA.T. カーニーでは、社会人としての基礎体力を身に付けるような期間だったと思いますが、同時にサステナビリティ経営というテーマに初めて触れる機会を得た場でもあったと思います。2007年頃に当時のグローバルCEOが「サステナビリティ戦略」というテーマで講演などをしているのを見て、面白いと思いました。彼はアメリカ民主党に近く、若き日にJoe Bidenのアドバイザーもしていたような人なので、特にこのようなトレンドへの感度が高かったのだと想像します。私は、当時の日本代表に「いくつかのクライアントにサステナビリティ戦略のプロジェクトを提案したい」と訴え、サポートを頂きました。しかし、当時のビジネスコミュニティでは、まだ機が熟しておらず、芳しい反応は得られませんでした。
その後世界金融危機が起こり、それまでの強欲な資本主義ではない新しい金融の仕組みができるのではないかと仮説を持ち、そういうことが決められるのはワシントンDCだろうと思い世界銀行に転職しました。世銀内では様々な部署で働いたのですが、2015年より気候投資基金(Climate Investment Funds)に勤務することになり、そこでグリーンボンドを発行するスキームを考えるファイナンシャルモデリングを行う仕事をやっていました。2015-16年にパリ協定が締結及び批准されという追い風の中、世界銀行の気候変動グループも我が世の春を謳歌するような雰囲気で、携わっていた総額5,000億円規模のグリーンボンドの案件もスムーズに前に進む感じでした。しかし、いざプロジェクトのGOサインを出す理事会の1か月前に関係国での政治状況が大きく変化したことで、一気に風向きが変わりプロジェクトが止まってしまいました。本案件は、2016年から5年後のCOP26でやっと案件発表に至りました。私は、当時気候投資基金内でこの案件を前に進めるよう様々動いていましたが2018年頃にはかなり難しいと悟り、40代に差し掛かるキャリアをより前向きに築ける場を模索し始めました。
世銀の気候投資基金で気候変動の世界の”天国と地獄”を味わった経験から、「時の政権・政治に左右されることなく、民間主導で気候変動への取り組みが進められることが重要」という思いがあり、そのような影響力を発揮できる会社として、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に転職することにしました。BCGではソーシャル・インパクトチームの日本での立ち上げに関わったり、金融機関のお客様を相手にサステナビリティ経営やカーボンニュートラルに関わるプロジェクトを行ったりして、充実した時期を過ごしていました。一方で、気候投資基金でグリーンボンドを発行まで持っていけないかったことが自身のキャリア上の”unfinished business”としてひっかかっていたのと、広い気候変動という分野の中でもファイナンスを軸にした経験を積みたいという思いに駆られ、国内外でサステナブル・ファイナンス市場の急成長が予見された2021年初頭にサステイナリティクスに転職することを決めました。投資家や証券会社、事業会社の間に立つ中立的な評価会社でグローバルナンバーワンの会社に行くことは自分のキャリアに大きくプラスになると思うと同時に、年齢的にも市場の成長フェーズ的にも、これを逃したら次のタイミングないという気持ちで、思い切ってリスクテイクした感じだったと当時の心境を回想しています。
ー当初から環境ビジネスでご経験を長らく積んでこられたんですね。
兼松様)繰り返しになりますが、結果としてはそうですね。せっかくキャリアの様々な経験が繋がってきたので、これから新しい金融のメインストリームになる可能性を秘めたサステナブル・ファイナンスを健全な形で普及させたいと思っています。この数年の間に民間主導の自律的な市場のメカニズムとして確立されていくと、どんなに政治対立があったとしても、サステナブル・ファイナンスが回っていく環境を作るのに貢献できたらと思います。気候変動の世界は、パリ協定締結・批准当時の盛り上がりから様々アップダウンがありましたが、サステナブル・ファイナンスに関わる者として今がまさに勝負どころだという思いでいます。いずれにしても、俯瞰的に見ると、気候変動等の地球規模の課題に対して公的な財政施策ではは限界があり、機関投資家等、民間のお金がサステナビリティ領域に回っていくことの必要性は変わりません。主要先進国が財政赤字である一方、機関投資家のアセット規模はどんどん大きくなっている状況がそれを示しています。いかにキャピタルマーケット、機関投資家に貢献してもらう の か、その橋渡しが我々の仕事 だと考えています。
ー御社を一言で言うならどんな会社でしょうか。
兼松様)
ビジネスの大学・学位がMBAなら、当社はESG の“学位”が取れる 大学 のような側面があると思っています 。実際の大学でESGを包括的に学べるところはハーバードにも東大にも今のところありません。30年の蓄積があって、グローバルのマーケットリーダーであるサステイナリティクスでは、ビジネスを回していくことと同時に、ESGやサステナブル・ファイナンスを体系的に学べる環境でもあるため、3〜5年働けば、その経験・実績が一種のMBAのようになるのではないかと思っています。ESGのMBAを取るような感じです。
朝妻様)
入社する時フランス人の上司に、ESGの勉強ができるかどうかで会社を決めたいと相談したら「サステイナリティクスでは死ぬほど勉強できるよ」と言われました。逆に勉強しないとキャッチアップできない世界です。
兼松様)
同僚との会話一つとってもESG分野の最先端の知識を学び吸収できていると感じます。ヨーロッパとアジアと北米の同僚と各国政府のタクソノミー策定の動向について意見交換しました。それらの動きを踏まえつつ、当社のタクソノミーは現在どうなっていて、今後どう変わっていくのか思考を巡らせるのも知的な刺激があります。そういう日々の仕事を通して、ESGやサステナブル・ファイナンス分野での第一人者になれると最高ですね。
ー次のキャリアの展開はどう考えていますか。
兼松様)最大かつ先進的なマーケットを視野に入れて、次はヨーロッパの本社に行きたいと思っています。
朝妻様)サステイナリティクスは自由で、やる気があって行きたい国があればどこでも働けるチャンスはあります。アジアの市場も急速に成長をしており、日本はアジアの一部でしかありませんので、私も将来的にはAPAC市場で再び働きたいです。
ー業務をやってこられる中でどのような時にやりがいを感じますか。
朝妻様)機関投資家と20年以上話す中で、以前は機関投資家の考えていることはいかに株式市場でお金を儲けるかということだと思っていましたが、実はそうではなく、彼らもESG投資を通して世界にポジティブなインパクトを与えようとしている、そうした側面が見えたことは新たな発見でした。投資はただ儲けるだけではなく社会にインパクトを与えることだ ということが実感できる時が面白いです。
前は私も株式市場においては利益しか見ていませんでした。今は機関投資家もどんどんマインドセットが変わり、以前であればESG投資しても儲からないと言っていたのが、そうは言ってられない時代になってしまいました。ポジティブなインパクトを世界に与えていきたいという思いが皆にあり、さらに利益が出たら素晴らしいと、両面で見えるようになったというのが私にとってもプラスです。
兼松様)
サステナブル・ファイナンスの市場はグローバルでも日本でも盛り上がってきており我々の主力商品であるSPOの提供を通して、市場を作るという点にやりがいがあります。「この事業は、市場が求めるこの基準・閾値を満たしているのでグリーンだ」という事例を通して、だんだんスタンダートが世の中に伝わる形で健全な市場の形成に貢献できていることを実感します。
今後進めたいと考えているのは、政府の関係者との対話を増やしていくことです。サステナブル・ファイナンスには、環境省、金融庁、経産省、また日本銀行も関係していますので、我々のグローバルや日本国内での長年の知見・経験を還元する形で、対話を通して一緒に健全な形の市場を作っていけたらと思っています。
ーグリーンウォッシュについて問題視する声もありますが、御社の存在意義はどこにありますでしょうか。
兼松様)
「健全な形の市場の形成」という言葉を何度も使わせて頂きましたが、まさにグリーンウォッシュは防ぎたい問題です。投資家に信頼できる情報を提供し続けるところが我々の存在価値です。コーポレートソリューションズのビジネスでいえば、グリーン適格ととは言えないボンドに我々は意見書を付けられませんので、この段階で一定のグリーンウォッシュの可能性を排除していけます。また、我々がグリーン適格であるとその時点で認めれば、投資家も安心してボンドを購入し、企業側も事業を進めることができます。また、アニュアルレビューというサービスを提供することで、事前に約束したグリーン適格な事業と違う事業にお金を回していないことを確認することで、債券発行後もグリーンウォッシュがないことを担保できると考えます。正しいところに正しいお金を回すことが重要なミッションであり、 信頼と実績が当社の強み です。
朝妻様)
我々の知見がESGにおけるスタンダードだと思ってくれる投資家は多いです。
兼松様)
この業界に関わっている重要な意思決定者である機関投資家、政府関係者、事業会社、証券会社の方々からもサステイナリティクスがこの分野の フロントランナー と認識していただいているので、ビジネスがやりやすいと感じます。同時にその信頼を維持・発展させていく責務を感じます。
朝妻様)
ESGという世界では我々はリーダー的な存在です 。それを味わいたい人、やる気の若者に入ってきてほしいと思います。
兼松様)
サステイナリティクスのブランドに胡座をかくことなく、それをテコにして、ビジネスを作っていきたい人や、政府と政策対話をしたり、機関投資家や事業会社と信頼関係をつくりビジネスを大きくして、新サービスを提供していこうという気概のある人と一緒に働きたいです。
ーお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
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【会社概要】 ・独立行政法人中小企業基盤整備機構 ・東京都港区虎ノ門3-5-1虎ノ門37森ビル ・設立2004年7月 ・資本金:1兆1154億393万469円(2021年11月26日現在) ・人数:常勤職員773人(2021年4月現在)
中小企業基盤整備機構は、事業の自律的発展や継続を目指す中小・小規模事業者・ベンチャー企業のイノベーションや地域経済の活性化を促進し、我が国の経済の発展に貢献することを目的とする政策実施機関。経営環境の変化に対応し持続的成長を目指す中小企業等の経営課題の解決に向け、直接的な伴走型支援、人材の育成、共済制度の運営、資金面での各種支援やビジネスチャンスの提供を行うとともに、関係する中小企業支援機関の支援力の向上に協力する。
高橋 浩樹 様 独立行政法人中小企業基盤整備機構 理事 【経歴】 昭和58年4月 地域振興整備公団入団 平成31年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構北陸本部長 令和2年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構事業推進役[兼]北陸本部長 令和3年1月 独立行政法人中小企業基盤整備機構理事
中小機構のSDGs 支援 始動 中小機構は、2021年より本格的なSDGs支援活動を開始した。
まずは2021年3月末に「中小企業SDGs応援宣言」 を行い、3つの柱を宣言した。
1.中小企業・小規模事業者へのSDGsの普及・啓発に取り組みます。
2.SDGsの考えに沿った中小企業・小規模事業者の活動を支援します。
3.中小機構自らもSDGsの考え方に沿った組織運営を行います。
この宣言に基づきSDGsの相談窓口を開設。東京・大阪の2か所から始まり、自治体や商工会、商工会議所といった地域の支援機関とも連携し現在では全国20箇所で相談窓口を拡充。さらにオンラインでの相談も可能となり(EーSODAN:https://bizsapo.smrj.go.jp/ )いつでもどこでもSDGsに係る経営相談を受けることが可能な体制を整えた。
また、特に関心の高いカーボンニュートラルの対応に関しては別途東京で専門窓口を設置。加えて中小企業・小規模事業者が自らの取り組みを確認できる「カーボンニュートラルチェックシート」(https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/carbonneutral/checksheet.html )を公開。
個別の相談対応だけでなく、多くの方に周知を行うべく、SDGsに係るセミナーも積極的に開催。これまでに全国で20回以上実施した。また事業者が取り組んだSDGsの事例をまとめた冊子も作成、取り組み方に悩む事業者にとって指南書となる一冊が出来上がった。
相談対応やセミナーだけでなく、SDGsを意識したビジネスチャンスの創出にも取り組んでいる。中小機構の運営するビジネスマッチングサイトJ-GoodTech(https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/ )を活用し、カーボンニュートラル、脱炭素をテーマとしたオンライン商談会を開設し160件のオンライン商談が実現した。
これらの取り組みは中小機構が運営する経営支援情報サイトJ-NET21の特設ページ(https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/index.html )にて日々更新している。
SDGsの相談傾向 相談企業は業種業態、企業規模を問わず様々で、2021年4月から11月までに700件の相談、月に約100件の相談が寄せられている。
相談内容は当初、そもそもSDGsとは?といった基本的な情報収集が多かったが、徐々にSDGsを経営計画に取り入れていきたいという具体的な相談も直近では多く寄せられるようになった。
SDGsの取り組みを行うことはコストがかかると思われがちだが、これまで行ってきた企業活動を振り返った時に、実はSDGsの目標に合致する活動をすでに行っていたことに気づいてもらうことも、SDGsを理解していただく第一歩だと思う。
また今後は、SDGsを理解していただくための啓発活動は継続しつつ、中小機構の強みである企業に直接入り込んだハンズオン支援により、SDGsを経営の根幹に据えた経営計画の策定支援や計画に基づいた新商品・新サービスの開発といった実行面の支援を同時に推し進めていきたい。
中小機構自身のSDGsへの取り組み 企業支援を行う側としては、自らもSDGsの取り組みを更に強固なものにしていく必要があると感じている。機構内でSDGsへの関心が高い人材を「SDGsパートナー」に立候補してもらい、現在約130名のSDGsパートナーが中心となって、セミナー講師としての登壇や、経営支援の現場への積極的な参画を行うなど、日々研鑽を積んでいる。
また、2019年より開始した中小企業応援士を通じた取り組みもその一つである。「中小企業応援士」とは、顕著な功労があり、地域への影響力もある経営者や中小企業支援者に対して委嘱している制度で、当機構とともに中小企業の成長、発展を支援していただくことが主な役割である。現在約200名登録され、定期的に意見交換の場も設けているが、その中でもやはりSDGsに係る関心は尽きない。このため、応援士自身のSDGsに係る取り組みの共有や応援士を通じた機構のSDGs支援施策の情報提供も進めていきたい。こうした取り組みを足掛かりとし、更にSDGs経営の機運を醸成していく。
SDGsが当たり前の経営へ SDGsの取り組みは企業規模に関わらずどの企業にとっても無視できない状況になってきている。サプライチェーンを維持するために取引先企業の要請から仕方なく取り組むとか、自治体のSDGs認証等を取得するために取り組むというようなものだけでなく、まさに企業活動を行う基本姿勢として自発的に取り組むものであるべきである。
SDGsに取り組むことが当たり前のビジネス環境をつくることこそ、中小機構に課せられた使命である。
国の中小企業施策を担う中小機構がSDGsの実現に向けて、様々な施策を講じていることに驚くとともに、他の施策も含めてまだまだ活用の余地があると思われる。こうした施策を日本全国の9割以上を占める中小企業が十分に活用できていないのは大きな機会損失ではないだろうか。SDGsだけでなく、専門家によるハンズオンでの経営支援や各種補助金制度も豊富に用意されており、中小機構からますます目が離せない。
【JNET21 SDGs特設サイト】 https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/index.html
【中小機構オンライン相談窓口:EーSODAN】 https://bizsapo.smrj.go.jp/
【カーボンニュートラルチェックシート】 https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/carbonneutral/checksheet.html
【中小機構の運営するビジネスマッチングサイトJ-GoodTech】 https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/
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野田 敦 様 執行役、COO ESG & Climate Office(ECO) 統括 パートナー
サイモン メイザー 様(Simon J.Mather) バリュエーション・モデリング・エコノミクスサービス統括 パートナー 長山 聡祐 様 産業機械・建設/エネルギー統括 ESG & Climate Office(ECO) パートナー
山西 顕裕 様 リストラクチャリングサービス パートナー
手計 徹也 様 インフラ・公共セクターアドバイザリー統括 マネージングディレクター
-御社はM&Aなどのフイナンシャルサービスを展開されております。一見、ESGとは無関係のようにも見えますが、どういったところに接点がありますでしょうか。
野田 : 我々のメイン業務の大きな2本柱は、M&Aとクライシスマネジメントです。
どちらにも共通しているのは、企業の買収、再編、危機対応といった、企業の存続や将来に大きな影響を及ぼすイベント、言い換えれば「変化点」にある企業の意思決定で、我々のファイナンスやビジネスの専門性、知見を持って支援するところに弊社の強みがあります。
その企業の変化点において、今後、最も重要な意思決定の判断材料の一つになってくるのがESG であり気候変動だと言えます。これから加速度的に厳しくなっていくであろう規制や、物理的な環境変化、それに伴い変化する様々なステイクホルダーからの期待に対し、企業がスピード感を持ってビジネスモデルを変革していくためには、M&Aや再編といった手段がますます重要になってきます。
その際に、ESGや気候変動に関するリスクを定量的に評価し、意思決定に繋げていくことが企業に求められていくと考えており、今後まさにフォーカスしていく部分になっていきます。
サイモン : 私の領域であるバリュエーション・モデリング・エコノミクスサービスにおいては、これまでは財務的な情報に基づいた価値評価により意思決定の支援をしてきましたが、今後も継続可能なデューデリジェンスを実現するためには、必ずしも財務的な情報だけではなく、ESGに関する非財務的な情報によりどれだけバリューが生み出されているのかに注目していくことが必要になります。
これらの情報を両立させながら、エコノミクスやファイナンスの知見に基づいてクライアントを支援していくことが重要になってきています。複雑化するクライアントの意思決定に際して、多面的なサービスを展開するためにも、様々なバッググラウンドを持つ人材を集めて、より一層難しいオーダーに対しても支援していければと思います。
-御社でESGに関わる業務を行う魅力はどういったところにありますでしょうか。
野田:
M&Aの領域では規模・サービスの幅ともに業界トップクラスにいると自負しています。常にリスクを恐れずに我々自身も積極的にM&Aを実施し、サービスを広げてきました。一見するとM&Aとは結びついていなさそうですが、足元ではブランドコンサルティングやシナリオプランニングもやっています。
M&Aであれば、買収前の戦略策定から買収後のPMI、つまりエンド・トゥ・エンドでサポートするために既存のサービスに新しいサービスを取り入れ、掛け算で新しいソリューションを導き出しています。
ESG関連の業務は、まだまだ進化していく領域だと思っています。われわれの既にもっている幅広い業務領域をレバレッジしながら、ESGの領域を組み合わせ、業界をリードできるような新サービスを生み出していきます。 そのための環境と企業文化があるのが、我々の組織で働くことの魅力です。
-御社の企業文化とはどういったものでしょうか。
野田: 失敗やチャレンジを恐れない文化です。 失敗を責めるよりもチャレンジするほうが認められる。新しいことを広げていきたいという人にとってはマッチする風土だと思います。
山西: 新しいものを作り上げていくやりがいと同時に、サービスを提供したときにクライアントに与えるインパクトの大きさを感じます。
市場環境がESG、気候変動により大きく変わり、クライアントが今までの戦い方だと生き残っていけない中で、我々が戦い方をアドバイスし、将来の戦略を練り直したり中期経営計画を一緒に作っていく際に、ESGの観点を入れていくということは、クライアントだけではなく社会へのインパクトを与える意味でも重要な仕事だと思います。
ESGに関しては、クライアントの問題意識が高まっており、経営陣と話をしていても、このテーマは非常によく話が出てくるようになりました。我々のサービスを日々進化させていく必要があります。
-ESGの分野において、日本、そして世界に対し、どういったプレゼンスを発揮していこうとお考えでしょうか。
野田: 「日本のビジネスを強く、世界へ。」、という我々のスローガンのもと、様々な企業を支援してきました。
欧米に比べると、そもそも国全体としてもルールメイキングが出遅れているなど、ESGに関する日本の課題は多くありますが、まさにコーポレートスローガンに従って、巻き返しを図り、日本の企業変革を支援していくという点で我々のプレゼンスを発揮していきたいという思いを持っています。
そのためには、デロイト トーマツが持つグローバルネットワークが重要になってきますし、これまで以上に連携していく必要があります。また、アジアパシフィック(APAC)全体でも今は欧米に対して少し遅れをとっていますが、日本がAPACにおいてESG関連サービスや議論をリードできる存在になっていきたい、その先導役になりたい と考えています。
長山: M&Aの議論の前段階として、企業の多くは、そもそも自分たちの会社はどうESGに対してアプローチしていけばいいのかと逡巡されています。
その解決策の一つとしてM&Aがあり、組織の変化によって解決できる場面は必ずあるはずです。その時に我々がアドバイスできるなら価値あることですし、日本だけでこのビジネスをどうするかという小さい世界の中で議論していては解決の選択肢が狭くなってしまいます。
お客様は、海外でどう活路を見出していくのかというところも求められています。デロイトトーマツのグローバルネットワークを生かしながら、海外も視野に入れたソリューションをご提供できるようになる ことこそが我々の目指すところです。
-グローバルネットワークが御社の強みですね。
長山: そうですね、ESG・気候変動の議論は、既にUK、アジアならオーストラリア、シンガポールでも盛んになってきていますし、アメリカも力を入れるようになってきました。そういった各国のリソースに敷居なくアクセスできる環境はすごく重要だと思います。
-ESGを定量的に分析する上での指標はどう作っていかれているのでしょうか。
長山: ESGにはE(Environment)とS(Social)とG(Governance)の側面がありますが、Gは定量的に分析するのは難しいです。Sについても、たとえば人権問題を数字で示すのは難しく、今のところは定性的な説明がメインとなります。重要なのはEにどれだけアプローチできるかです。
たとえば「株価にどれだけ影響与えるのか」などの視点で定量化ができるでしょうが、過去の経験則から示すことは出来ても、M&Aの場合は「将来のバリュー」をどう数字として表すかが重要になってくるため、サイモンさんが頭を悩ませているところです。
野田: 決まった型がなく、マーケットプラクティスとして誰が見ても納得する指標はまだ確立していません。今後10年をかけて、マーケットの指標として作っていかないといけない。そこでも我々がどこまで先頭に立てるのかという思いがあります。
カーボンプライシングにしても、炭素1単位あたりどれくらいのコストが掛かり、どれくらいプライスが作れるのか、という話を色々な研究機関がしていますが、10〜30年後にどのくらいになっているかは誰もわかりません。お客様が求めているのは、まさにそうした定量的なデータでもあるので、一緒に考えてくれる人がいればぜひ弊社に来てもらいたいと思います。
サイモン: 最近の傾向では短期のインパクトを定量化してほしいというお客様のニーズが高まっています。長期的にも、SやGを良くすることによって株価がどれだけ高まるか、我々で研究をしていますが、その因果関係はまだまだ未知の世界です。
一方、経済的な効果だけではなく、環境に配慮し社会にも貢献する行動によって持続可能なビジネスを行っていくという考え方で意思決定する会社が増えています。従来どおりのファイナンス理論、体系に基づいた分析・評価だけではなく、たとえば投資することで周りのコミュニティや社会へのインパクトがどれだけあるのかなどを、定性だけではなく定量的にお示ししていく 必要があります。
この分析手法を考えていくのは、新たな指標を作っていくことであり面白いことだと思います。
-御社のESG関連部署=ESG&Climate Office(ECO)の立ち上げに至った経緯をお聞かせください。
長山: ECOを立ち上げたのは2021年12月です。実は、すでに2020年秋に事務局を立ち上げており、ESGや気候変動の関連業務を開発、推進していく後押しをする活動はしていたのですが、改めて組織化しました。多くのお客様からご要望を受けたときに、ESGの文脈でのアドバイスや業務をご提供する機会が多くなり、その情報を一つの部署に集約することで社内の連携をしやすくすることが一つの大きな狙いです。
また、ナレッジを集約し、それを皆にきちんと発信し、社内のリテラシーを高めるためでもあり、お客様とお話をする際にデロイト トーマツは総合力でこういう事ができるとご提案できるようにバックアップすることもできます。DTFA内だけではなく、リスクアドバイザリーやコンサルティングともコネクションを密にしています。
組織化したことで、アジアにはDTFAのこうした組織があるということも発信できるようになりますし、日本のM&AにおけるESGに関することはECOに聞けばいいと思ってもらえるようになりたいと考えています。
山西: きちんとした部署があり、旗が立っているのは意義が大きいと思います。詳しい専門家がいてナレッジがたまっており、色々な情報が聞けるため、お客様の種々のニーズに答えられるようになりました。様々な部門の人間がお客様と対峙する際にESGに関することでサポートがもらえるのは、総合力という意味で強みになっています。
-どんな方がいらっしゃいますか。
長山: 今ECOのコアメンバーは4人で、M&A、キャピタルインベストメント、公共投資をそれぞれ専門に持つメンバーです。うち1人は金融機関出身の方で、マーケット目線でESGを考えています。我々としてもお客様の考え方について、様々な角度から見ることができることが大事です。
M&Aを生業としつつ、どうお客様のニーズをその中に組み込むか。社外でESG関連業務の経験を持った方を入れていくことにより、近視眼的にならずに、多様な見方で考えていきたいと思います。
-昨年からESGに関するお客様からお問い合わせは、どのくらい増えていますか。
野田: M&AにおけるESG業務ということであれば、2020年は0に近い状態でしたが、2021年に入ってから話が急激に増えてきました。また、お話しいただくお客様の裾野が広がってきていて、以前は誰もが知っているような上場企業のお客様からお話を頂くだけでしたが、21年春以降から、お客様が多様化しています。
同時に、何をやれば良いのかわからないというようなご相談から、こういうことをやるにはどうしたらいいのかというご相談まで、その幅は確実に広がってきています。
山西: お客様は必ずしも上場企業だけではなくなってきています。今担当している案件の中にも非上場で規模も大きくない会社があります。世の中の目が厳しくなっている中で、どこまでやればいいのかと悩まれています。
また、ESGへの取り組みを対外的にアピールすると、取引先との関係も改善されますし、採用活動における若い世代への波及効果が大きいということも、皆さん認識してきています。情報開示への対応で必要にかられて、というだけではなく、問題意識の裾野が広がっています。
今後注力していきたいと考えている領域はございますか。
サイモン: バリュエーションにおいては、企業を買収するときの株式価値などを財務情報に基づきアドバイスする一方、ESGの取り組みは非財務情報になります。ESGは評価の際視点が少し異なり、従来どおりのファイナンスの知識にとどまらない専門的な知識が必要となります。
例えば、社会的なインパクトや全体的な経済の波及効果がいくらになりそうかという分析や、今後の気候変動がどこまで経済的な面で影響を及ぼすのかといったシナリオ分析の部分にも注力していきたいです。経済的、学術的に、よりシンプルに数字を導き出していくことが重要 になり、実務的な部分でサポートできるかが大事になってくると考えています。
手計: 私の担当は、インフラ関連とキャピタルプロジェクトを支援する部署です。特にESGのEの部分なのですが、世界の潮流に合わせ、政府が洋上風力発電を始めとする再生可能エネルギーの一層の導入を進めていく中で、これに関連するアドバイザリーニーズが大きくなっています。
こうしたプロジェクトは、投資期間が長期にわたりかつ大規模な資金を必要とするので、どこか一社が単独で実行するのは難しく、電力会社、商社、建設会社といった様々なプレイヤーがコンソーシアムを組んで事業を検討し、参画している領域です。
また、水素など技術面のみならず色々なアイディアからイノベーションを生みだすことが必要になるため、コンソーシアムに対してアドバイスを提供する 仕事が今後は特に求められていくと考えています。
長山: M&AトランザクションのなかでもESGデューデリジェンスというところに力をいれていかないといけません。ESGデューデリジェンスは、これまでは基準をクリア出来ているかいないかというチェックがメインでしたが、定量化できる分析を通じて、どれくらい企業に金額的インパクトを与えていくかにまでカバーしていく必要があります。その買収がESGの観点からマーケットにどう見られるかを一緒に考えていくところをやっていきたいです。
そのようなM&Aの実行前のアドバイスもそうですが、M&A実行後についても、今までのPMI同様に、買収した会社のESGレベルをどのように自社グループのESGレベルまで引き上げていくか、といったような視点が今後も重要になっていきます。
また、今、日本ではビジネスを外に売っていく動きも多いので、自社が売ろうとしているビジネスがどれくらいESGに対応できているのかを買う側にアピールしなければならず、そこをきちんと評価、あるいは説明できるのかという点も我々が積極的に支援していきたい領域です。企業の組織的な変化点で必ず出てくるそうした課題に、ESGという複雑な要素が加わった 中で、解決の道筋を一緒に考えていきます。
山西: 私はリストラクチャリングとクライシスマネジメントを担当しています。リストラクチャリングとはビジネスモデルの再構築を行うことです。市場環境が変わっていく中でどう生き残っていくか、ESGを絡めた会社の戦略や、中期経営計画を策定する業務です。
もう一つ、これからトライしたいテーマとしては、新規事業があります。子会社でデロイト トーマツ ベンチャーサポートという会社があり、色々なスタートアップとリレーションを作っています。昨今、ESGのスタートアップは多く生まれていて、サプライチェーンのGHG排出量を算定する技術を持っていたり、CCUSなど環境関連の技術やソリューションを持っているスタートアップが多いので、大企業とコラボレーションすることでもっと面白いことが生まれるのではと思っています。
弊社のビジネス領域は多岐にわたります。まさにESGの観点でも、デューデリジェンスにおいてエンド・トゥ・エンド、最初から最後まできちんとカバーしていく必要があります。
野田: 会社全体としては、我々自身のサービスのデジタル化も推進していく必要があります。既存サービスを自動化してクラウドで提供したり、バリューションでも現在サービスの開発を進めています。ESGのテーマがそこに乗る形で、DXとESGという両方のビジネスを他に先行して機会をとっていきたいと思っています。ですから、DXとESGの2本柱で、それぞれのスキルをお持ちの人材を探しています。
-最後のご質問ですが、どういった人材と一緒に働きたいですか。
長山: 総合的には、気候変動の話も20年くらい前からある話で、ずっとやってきた経験のある方々にももちろん来てほしいですが、今後どうマーケットを作っていくのか、我々としてどういったアプローチでお客様のお役に立てるのかを一緒に考えていける人を望んでいます。
知識があることはすごく重要でアドバンテージでもありますが、それだけだと我々のようなFAという業務は難しく、ESGと我々のビジネスをどう繋いでいくのかといった複雑な部分も一緒に考えていける人材を求めています。
山西: チームワークが根本的なコアの部分です。一人のスーパースターがいればいいという世界ではありません。我々の強みは、いろいろなタレント・専門性を持った人でチームを作り、より大きな経営課題に対峙していくことなので、他者をリスペクトできて、一緒にチームを組めるということが大事です。
スキル面では、私のいるリストラクチャリング部門ですと、企業再生に関わった経験をお持ちでESGにも興味を持っている方はもちろんですが、ESGに関する業務の経験はあるけどリストラクチャリング業務の経験はない、でも興味は持っているといった方も歓迎です。加えて、チャレンジ精神を持っていることが重要ですね。
手計: インフラ業界では、例えば建設や運営等に関与した発電所が周辺環境や住民生活に悪影響を及ぼしていないかといった、環境や社会に配慮する視点が、ESG投資が話題になる以前からあります。また、先の例に挙げた再生可能エネルギーの分野では、オープンイノベーションやコンソーシアムによって色々な会社・人が連携していく必要があります。
こうした業務に携わる上で、社内外とのチームワークを楽しめることが重要です。専門性の違うプロフェッショナルや会社同士の議論は時にかみ合わないこともありますが、そういった場面でもお互いにリスペクトしあう、協力しあっていけることが素養として大事だと考えています。
サイモン: 我々のいるプロフェッショナルサービスの業界では、プロフェッショナルとして専門性と好奇心を持つことはもちろん大切ですが、お客様を助けることに対し楽しさややりがいを感じられるかどうかがとても大事です。短期的な視点だけではなく、中長期的にもお客様をサポートしたいというマインドがある人に来てほしいですね。
-お話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
今回特集しましたデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(DTFA )様の求人をご紹介します。 ご興味がある方は、下記ボタンよりぜひご応募ください。
コトラでは業界動向や今後のキャリアについて無料キャリア相談会を開催しております。 最新の採用動向や非公開求人情報などの情報提供をさせていただきます。 また、ざっくばらんな意見交換・ご相談をさせて頂きながら、理想のキャリアを歩むためのアドバイスをさせていただきます。 お気軽にご相談ください。
佐々井 良二 氏
[ 経歴 ] ソフトバンク株式会社 SDGs推進室 兼 CSR本部 CSR戦略部 部長 大手金融機関及び広告代理店を経て2010年ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)に入社。宣伝・販促部門にて主にCM制作、メディアバイイング、プロモーション企画を担当した後、ロボット部門にて事業企画・マーケティング企画業務に従事。 2017年よりCSR部門に異動。2019年よりSDGs/ESGの全社戦略立案、各種情報開示、社内外施策立案を担当。
日下部 奈々 氏 [ 経歴 ] ソフトバンク株式会社 SDGs推進室 兼 CSR本部 CSR戦略部 CSR戦略課 課長 2004年ソフトバンクBB株式会社(現ソフトバンク株式会社)入社。人事部門にて新卒・中途採用、グループ人材育成機関立ち上げ、次世代リーダー育成やキャリア開発、ダイバーシティ推進など、人・組織にむけた施策を担う。 現在は、SDGs推進室において、SDGs戦略策定や対外コミュニケーション、社内浸透施策などの取り組みを推進。BCS認定ビジネスコーチ、MBTI認定ユーザー。
ー「情報革命で人々を幸せに」という経営理念を掲げ、社会にインパクトを与える企業として、SDGsにどう貢献したいと考えていらっしゃいますか。
佐々井: AIやIoTといった最先端テクノロジーを強みとしている会社として、SDGsの目標達成や社会課題の解決に、これまで同様、テクノロジーを活用して貢献していく、その先導役を担いたいと考えています。それにより我々自身も成長していくということが、弊社の一番の根幹にある考え方です。企業も社会の一員であり、投資家などステークホルダーの期待と要請に応えていくなかで、社会で必要とされる企業としてプレゼンスを発揮しながら、果たすべき役割を日々追求していきたいと考えています。
ー御社ではサステナビリティな事業推進にあたり、6つの重要課題である目標(=以下「マテリアリティ」)を設定されています。
日下部: マテリアリティの選定方法については、二つの軸で考えています。横軸はソフトバンクにとっての企業活動、事業に対して重要なものにグラデーションをつけており、縦軸は世の中として何が重要か、各ステークホルダーから見たソフトバンクの事業においてSDGsの観点から何を重要視されているのか、この2軸から考えたときに、社内外から見てより重要度の高い項目を6つに厳選し、マテリアリティとして明示しています。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大防止など、求められる社会課題への対応プライオリティも日々変わってきているので、マテリアリティのプロットについて外部のステークホルダーを交えて定期的に検証しています。
ー全体の社員にサステナビリティに対する理念を浸透させるうえで工夫されていることはありますか。
佐々井: トップのメッセージを定期的に発信しています。月次の朝礼で話題にしたり決算や株主総会でも言及しています。社員はEラーニングで勉強していますが、実効性を担保するために社員の目標管理制度と連動させ、目標にSDGsを紐づけてKPIを設定することを始めています。
日下部: トップのメッセージとして、ソフトバンクのマテリアリティは「SDGs推進室」だけがやるものではなく社員一人ひとりが取り組んでいくものだということは前社長の宮内も、現社長の宮川も強く発信しています。その根底にあるのは、ソフトバンクの全ての事業活動は、6つのマテリアリティに基づいているということです。社員全員がSDGsに関わっているという考え方を前提として、サステナビリティに対してどう貢献できるのかを一人ひとりが考え、目標設定に落とし込み、チェックすることで意識しています。
佐々井: 実は社員の名刺も環境負荷のかからない素材を使って作っています。さらにマテリアリティごとにデザインを変えていて、それをお客様に渡したときに会話のきっかけになるようにしているため、お客様への啓発の効果も狙っています。
日下部: 名刺を渡すときにこの紙はなんですか、こんなにデザインがあるんですか、ソフトバンクさんもSDGsに取り組んでいるのですねと、会話のきっかけになるツールとして使ってもらえればと思います。
ーSDGs推進室とはどのような役割を持った組織ですか。
日下部: SDGs推進室は、横連携ができるようにさまざまな部署の人が入って運営されています。各事業部門ごとに、事業責任者のもとで確実に実行を伴った形でアクションができるように、事務局は推進を管理する役割を担っています。
あくまで、SDGsに資する事業を実行するのは私たちではなく各事業部門の社員です。「SDGs推進室」は、グループ会社を含め、SDGsに資する活動が本当に行われていくことをしっかり見ていくのが役割ですので、グループ全体でアワードをつくって、各社で良い取り組みがあれば部門賞にノミネートしています。そうすることで、グループ全体で「こんな取り組みの方法があったのか」とノウハウも横展開していくことができます。
ー代表取締役社長を委員長とする「SDGs推進委員会」の設置から、活動報告書である「サステナビリティレポート」の発表までに約5ヶ月しかかかっていません。
佐々井: さまざまな有識者の方々からも、ソフトバンクはスピード感と実行力だよね。とよく言われます。トップの「絶対に世の中に誇れる企業にしていくんだ」という強い思いと、それをスピード感を持って形にしていこうという体制が弊社の強みでもあります。
日下部: 日本企業の多くは100点にしてから開示したいという思いがあると感じます。ただ海外企業の事例をみると、今できている範囲からスピーディーに開示しています。投資家からすると開示していないとやっていないに等しいと捉えられてしまうので、現時点でどのように取り組んでいるのかを正しくコミュニケーションをとり、なぜ自分たちがそれをやっているのかという思いを含めて開示をしていくことが重要だと考えます。
その開示に対してステークホルダーの方々から適切なフィードバックをいただき、よりいい形にしていく。この繰り返し自体がサステナビリティの活動だと思います。現場レベルでは、もう少し体制を整えてから開示したいという声もありましたが、より良くしていくためにまずは開示することが必要な取り組みであることを、社内で意識をすり合わせながら進めてきました。
佐々井: 良いものも悪いものもきちんと包み隠さず示し、世の中に出していくことが、誠実で透明性のある企業であるということを各部署に理解してもらうことを心がけました。
ー2021年に「日経SDGs経営大賞」社会価値賞を受賞されました。特に社内でのD&I促進が評価されていらっしゃいましたが、力を入れていらっしゃる取り組みはございますか。
日下部: 「2035年度までに、管理職の女性比率20%」を目指しています。テクノロジー業界や理系人材には女性が少ないということが世界的な課題でもあり、弊社でも現在の女性管理職比率は約7%です。それを3倍にしていこうというチャレンジングな目標をかかげて、社長をトップとして達成に向けて取り組んでいます。また、数年前から女性に対するアンコンシャス・バイアスを取り除くための定期的なトレーニングや、女性の部下をどう育成していくか、という管理職に対する研修を必要なタイミングで行っています。
ーなぜ、いま御社でサステナビリティへの取り組みが必要だとお考えになったのでしょうか。
佐々井: 弊社は、2018年から東証一部上場企業となりましたが、社長含め、投資家と対話する機会が増えています。2019年頃から世の中のSDGsに関する動きも加速し、ESGの話題も増えてきたので、体系的に組織化して取り組もうという機運が生まれました。ただ、それまで取り組んでいなかったということではなく、「ESG」「SDGs」という考え方やフレームワークにのっとった形でやっていなかったということです。「情報革命で人々を幸せに」が弊社の経営理念ですが、テクノロジーで社会課題を解決することを生業にする風土はもともとありました。その点を「サステナビリティ」と結びつけ始めたのが2019年頃のことです。
日下部: 通信事業の持続的な成長を図りながら通信以外の領域の拡大を目指していくという「Beyond Carrier戦略」を掲げています。これは、これまでの通信会社としての基幹事業をベースとしながら、ヤフーやLINEといったコミュニケーションサービス、AIによるサービスなど様々なテクノロジーが集まっていく環境を整備してグループの強みを生かし、あらゆる産業のデジタルサービスを支えるプラットフォームの構築・整備を行っていくことを目指したものです。
経営層も社員も、「Beyond Carrier戦略」を掲げる中で、取り組み当初の社長(現会長)の宮内が「SDGsの取り組みは、最初、投資家からの要請もあってやろうと思ったが、改めてSDGsの17の目標を見ると、ソフトバンクが「Beyond Carrier戦略」で作りたい地球の未来の姿がつまっていて、これを僕達は成し遂げたくてこれまでやってきたんだ。SDGsのゴールはその答えだ」ということを言っていたのがすごく印象的でした。我々はSDGs目標達成に貢献することで会社としてもまだまだ成長できますし、さらに社会の役にも立てますから、SDGsを経営の羅針盤としてしっかり見ていこうといった話をしており、そういった意味でも、ソフトバンクのマテリアリティは「情報革命で人々を幸せに」という弊社の経営理念と「Beyond Carrier戦略」の架け橋になっています。
ー6つのマテリアリティを中心とした御社の今後のサステナビリティ推進の展望をお聞かせください。
佐々井: 6つのマテリアリティは不変のものではありません。将来の状況や社会のトレンドと照らし合わせながら、進めるべき目標が変わっていないかを意識し確認しながら進んでいくものです。技術のあり方もかなり速く変化しているので、30〜40年後の社会の姿を予測しつつ、我々がやらなければいけないこと、我々の立ち位置が間違っていないか検証しながら事業を進めていきたいです。
ーお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
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[ 経歴 ] 下着メーカー、化粧品メーカー、IT企業を経て、2019年に株式会社ユーグレナに入社。これまで、情報システム、Web担当、宣伝、EC、広報を経験。ユーグレナ社では、広報宣伝部の部長として、広報全体の企画・実施やオウンドメディア施策の企画策定、商品・素材のPRなどを管轄している。
管理部 人事課 採用チームリーダー 金田 謙祐 氏 [ 経歴 ] 新卒でIT企業に入社。小学生向けプログラミング教育を手掛ける子会社にて事業責任者として従事。2017年9月、株式会社ユーグレナ入社。経営戦略部でM&A業務等を担当したのち、2018年10月、管理部人事課に異動。採用チームリーダーとして新卒・中途採用を担当するほか、人事制度企画・運用、組織エンゲージメントの向上に取り組んでいる。
ー御社は、 ヘルスケア事業、バイオ燃料事業のほか、バングラデシュの人びとを支援するソーシャルビジネスも行っていらっしゃいますが、 創業のきっかけがそもそも「SDGs」に関わっていらっしゃいました。
北見様: 創業のきっかけは、社長の出雲が大学1年生の夏休みにバングラデシュを訪れ、栄養失調に苦しむ子どもたちを目の当たりにしたことでした。日本に戻り、栄養問題を解決できる食品がないか探す中、出合ったのが「ユーグレナ」という藻の一種です。ユーグレナは植物と動物の両方の性質を持ち、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など、59種類もの栄養素がバランスよく含まれているスーパーフードです。ユーグレナで栄養問題を解決しようと決意し、2005年に創業しました。
しかし、当時は、ユーグレナを屋外で大量培養する技術がなく、増やすのは不可能だと言われていました。社長の出雲も、培養方法を模索しており、夜行バスで日本中を駆け回り、ユーグレナの研究者と会い続け、仲間とともに研究を続けました。また、起業した会社へ投資してくれる投資家を必死に探し回っていました。
すべては「ユーグレナで世界を救いたい」という思いでした。それが今に続いています。
一方、環境負荷が少ないユーグレナを活用した「バイオ燃料」の製造にもチャレンジが続いています。それ以外にもユーグレナは、様々な応用の方法があることがわかってきました。たとえば、バイオプラスチックや農業の肥料などへの活用です。佐賀市に「サステナブルテック・ファーム」という農地を設け、ユーグレナを肥料に用いた研究をしています。また、養殖の飼料への活用も進んでおり、三重県多気町で「多気サステナブルサーモン」の養殖を行っています。多気町で生産したユーグレナや使われずに捨てられていた米ぬかなどをブレンドした飼料で育成したニジマスで、未利用資源の活用が「サステナブル」だと考えています。これからも様々な応用を進めていきます。
ー「バイオ燃料」といえば、2021年6月、御社は自社開発のバイオ燃料を使った飛行機のフライトに成功しました。
北見様: 2020年まではバイオ燃料でのフライトは国内では0回でした。当時、世界では30万回以上、バイオ燃料を給油した飛行機のフライトが行われていましたが、日本では輸入のバイオ燃料、国内で生産したバイオ燃料、どちらでもフライトは行われていませんでした。2021年にようやくバイオ燃料でのフライトがはじまり、当社製造のバイオ燃料でも2021年6月4日に国土交通省が保有・運用する飛行検査機で、同月29日には民間航空機で、つまり2度にわたるフライトを実現しました。
バイオ燃料の製造に関しては、2018年10月末に、横浜市鶴見区に日本初のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを竣工し、2020年3月にバイオディーゼル燃料が完成してからは、バスやフェリーなどに導入してきました。21年6月に、バイオジェット燃料を搭載した飛行機のフライトをようやく皆様にお披露目できました。
ーこのフライトにはどんな意義があったのでしょうか。
北見様: たった1回、というフライトに感じる方もいるかもしれませんが、0回と1回では大きく意味合いが違います。「まず1回できる」ということは2回目、3回目ができる可能性があるということです。0回ということは進め方の検討がついていない状況に端からみると感じられますが、1回ということはステータスが変わり、再現性はどうすればできるのかとなります。そして当社は2021年になんとか2回、フライトを実施できました、これはまたこれからもできるということを皆様にお伝えできたのではないでしょうか。
当社は、思い描いたアイディアを社会実装させることが大事だと思っています。研究レベルで終わるのではなく、株式会社として事業をやっているからには、いかに社会でそのアイディアを当たり前にしていくべきかを考えています。現在、バイオ燃料を産業として確立するため、商業用のバイオ燃料製造プラントを作る計画を進めていますが、そのための第一歩が踏み出せたという点で意義がありました。
ーバイオ燃料を国産で作っていくことはどんな意味がありますでしょうか。
北見様: 産油国ではなかった日本において、「日本企業が産油企業になれる、油を供給できる」可能性が出てくる、という夢を感じています。また、サステナビリティという観点からも重要です。今後、世界的に石油が枯渇する可能性がある上、石油の利用には二酸化炭素を排出という課題がより大きくなってきます。廃食油とユーグレナ由来の油脂を原料にしたバイオ燃料を使うことで、燃焼段階で二酸化炭素を排出したとしても、カーボンニュートラルに貢献できる可能性があります。
ー2020年に企業理念を変えられました。その理由はなんだったのでしょうか。
北見様: サステナブルな社会をつくっていく、その決意の形として創業15周年を迎えた2020年8月、ユーグレナ・フィロソフィーとして「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を掲げました。企業は、常に持続可能な社会を志向していくべきですが、どうしても事業を進める上で難しくなることもあります。私たちは「Sustainability First」という企業フィロソフィーを設定することで、必ずサステナビリティを一番に考え実行していく、という企業としての覚悟を示したのです。2021年8月には定款を変更し、SDGsの17の目標全てを取り込みました。これは、SDGsを事業でやりきるという意思表示です。持続可能な社会を実現するため、真っ向から社会問題の解決に挑戦し、事業として成り立たせる。当社が成長することにより社会問題が縮小していくようにしたいと思っています。
ー創立当初から、サステナビリティの視点を持って事業の根幹に据えてこられましたが、改めてフィロソフィーに掲げられました。
北見様: 周りから見れば、1人の青年が世界を救うという妄想のようなところからスタートし、社会をより良くする技術を実装したいという思いで創業した会社です。その手段の1つがユーグレナで、ユーグレナを原料の一部に使ったバイオ燃料を出荷できるようになり、ようやく1つの形としてお見せできるようになりました。世界を救う夢を語ったときに妄想だと批判されても、事業として実行してきました。今回のCI(コーポレート・アイデンティティ)の変更は、2020年の1月にプロジェクトをキックオフし、一言目から、どんな表明ができるかと考えてきた集大成です。改めて、「Sustainability First」という共通語を持って、当社のメッセージを対外的にアピールできるようになったと同時に、今いる仲間たちと、揺るぎない当社の価値観を共有することができたと思います。
ー御社はバイオジェット燃料の実用化を、あしかけ10年で研究・実現されました。スタートアップやベンチャー企業が脱炭素という大きな課題に取り組む上での障壁や苦悩を教えてください。
北見様: バイオテクノロジーを社会実装していくには資金が必要ですし、多くの企業・組織とのパートナーシップも重要です。SDGsの目標にも「パートナーシップ」が掲げられていますが、事業は多くの会社や地方自治体との協力のもとで成り立っているものです。たとえば、バイオディーゼル燃料では「いすゞ自動車」、「横浜市」に協力してもらっています。課題としては、事業の規模感がさらに10〜100倍になったときに、パートナーシップをもっと広げないといけないことです。みんなが当社のバイオテクノロジーを望んでくれる状態が大事だと考えていて、バイオ燃料がたとえ少量での商用活用であったとしても対外的に発表し、多くの人の共感を求めていきたいです。
ーチャレンジングにひたすらつきすすんでいらっしゃる御社ですが、どんなときにやりがいを感じられますか。
ユーグレナ社は理系な会社というイメージがあるとよく言われるのですが、かならずしも学校でいうところの理系科目が得意ではない仲間も多くいますし、生産管理からスタッフ職まで、バイオテクノロジーを社会実装させるために、さまざまな仲間が事業に携わっています。
2021年4月に、ガソリンスタンドでバイオ燃料を販売してみようという企画をしたときに、私たちの多くの仲間が一緒に運営に関わって、自分たちがつくってきたものをお客様に届けることができました。仲間たちは実際にガソリンスタンドに立ち、多くのお客様にお越しいただいたのを目にし、お客様に自らバイオ燃料の説明をすることも実施しました。その際、お客様からは「応援しているよ」「バイオ燃料を自分の車に入れることができて嬉しい」などというありがたい言葉をたくさん頂きました。
日々、成功だけではなく失敗も多々ありますが、お客さんの喜ぶ声に勇気づけられます。ウェブサービスであれば即日で実装できるケースもありますが、テクノロジーはアイディアを思いついて実装するまで、短くても3〜5年かかることが多いです。アイディアはあっても実装の段階に至れないということも多いと思いますが、2021年は特に持続可能な社会を目指すニーズが高まったこともあり、私たちの10年越しのバイオテクノロジーを一般の方々に広く知っていただくことができました。
事業は利益を追求することが必要ですが、2021年は、サステナビリティに取り組みながら利益も生み出せるということをひとつ事例として出せたのではないかと考えています。
ーサステナビリティ を 推進する際に、日本の企業はどうあるべきでしょうか、お考えをお聞かせください。
北見様: 日本は技術面での心配はないと思っています。ただ、より規模を大きくしていく上ではもっとパートナーシップを強化していくことが必要ではないかと思います。これからの社会では、自分たちだけが良ければ良いのではなく、得意分野を持ちよって一緒にイノベーションを創出していかないといけません 。いまはまだ規模が大きくないにせよ、まだ社会から認知されていない技術やアイディアがたくさんあるはずです。力を持ちうる人や企業、組織などがそこに手を差し伸べるべきだと思います。それにより社会をよりよくする技術の社会実装は2倍にも3倍にもなるはずです。
社会のあり方にも多様性が必要です。トレンドや、ナンバーワンだけで成立する社会なのではなく、人の興味や嗜好のバリエーション、生活の仕方も様々なもので成り立たせていくことが重要ではないでしょうか。多種多様なものが組み合わさることによって、サステナブルな社会が実現できるのだと思います。競合ではなく共存で社会を作っていくという心持ちでやっていかなければならないと考えています。
SDGsの考え方は、誰かが良くなれば世界が良くなるのではなく、みんなが取り組まないと実現できない、1人のヒーローが地球を救うわけではなく、「誰ひとり残さない」という標語に対して、全員が意識的に取り組まないといけないと言っています。気づいたら良くなっているという形ではなく、「取り組むことが良いことなんだ」という気付きを当社からも発信していきたいと考えています。そのためには、夢を語る部分と、実現した部分、それぞれを社会に発信していきます。たとえアイディアの実装を失敗したとしても、同じように挑戦している人がいる、ということに気づいてもらえたら嬉しいです。
ー社会の中で、どんな会社になっていきたいと考えていらっしゃいますか。
北見様: 国連から発表されたSDGsの目標が言わんとしているのは、「このままでは地球全体がだめになるから、持続可能な社会に変わらなければいけない」ということです。そのための変化を私たちもつくっていきたいと思います。そのためには、先頭に立ち、バイオベンチャーとして前に進んでいく姿をお見せして、大中小、さまざまな企業が追随してくれたら嬉しいです。リスクを恐れずに事業を進めて、持続可能な社会を実現していくためのリーディングカンパニーとなっていきたいです 。
ーどんな人材を求めていますか。
金田様: 答えがない課題に対して仮説を立てて、自ら行動できる人です。当社は設立からまだ16年程度の企業で、歴史のある成熟した大手企業とは異なります。試行錯誤して、どうしたら昨日より今日、今日より明日がより良くなるのか、アプローチを考え続けなければいけない会社です。
私たち自身も日々、過去に囚われず、より良いアプローチを探し続けています。自分自身でどう動いたら今より良くなるかを考えて、主体的に行動できる人を求めています 。SDGsに掲げられる社会課題を本業のビジネスで解決していると世間から認められている会社は日本でまだ多くないと思います。つまり、世の中にまだロールモデルが少なく、ほかを参考にして真似したり、追随してもできない中で、どのように社会性と収益性の二項対立を超えて、社会に大きなインパクトを与えていけるかということを考えていける仲間と一緒に働きたいと考えています。
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【会社概要】 雪ヶ谷化学工業株式会社(https://www.yukilon.co.jp/ ) 東京都品川区東大井5丁目12番10号 大井朝陽ビル6F 設立1952年11月7日 資本金 1,000万円 スポンジ・各種発泡体製造、化粧用スポンジを主力とした石油化学メーカー。化粧用スポンジは世界シェア70%を超える。
坂本 昇 様雪ヶ谷化学工業株式会社 代表取締役社長 サスティナブル経営にシフト 2019年坂本社長はある経営研究会で講師のコンサルタントから、これからは「社会課題解決型製品」を開発すべきだという話を耳にした。「社会課題解決型製品」とはなにかを模索する中で、これまでの製品開発からの大転換に行き着くことになる。
雪ヶ谷工業株式会社は世界シェア70%を誇る化粧品スポンジを製造している。その化粧品スポンジは1970年代に石油原料の樹脂から生み出された製品だ。天然ゴム入りの化粧スポンジは天然ゴム由来のアレルギー物質によって、アレルギーを引き起こす場合があった。石油原料の樹脂の合成ゴムを開発した結果、アレルギーを引き起こさない化粧品スポンジが生まれた。その合成ゴムスポンジは瞬く間に化粧品業界に広まり、化粧用スポンジで世界シェア70%のトップシェアを獲得するに至った。
「社会課題解決型製品」を考えた時、そのような盤石な経営基盤となる製品に関してメスを入れる事となる。 合成ゴムの原料となる石油原料の樹脂の使用は、生産過程で膨大なCO2を発生させる。自社の製品はサスティナブルではない。ただこの世界シェア70%の製品をサスティナブルな製品に変えることにより、CO2排出削減に貢献できるのではないか。
実は、合成ゴムスポンジ誕生の要因であった天然ゴムのアレルギー物質除去はすでに自社では克服する技術を開発し、特許も取得していたが、製造コストを抑えるために製品の製造には活用していなかった。 天然ゴム入りの化粧品スポンジ製作は可能だ、ただそれだけで社会課題解決型製品と言えるのか、坂本社長は天然ゴム自体の生産状況にも目を向けた。天然ゴムは東南アジアの熱帯雨林が主な産地だが、果たして自社の仕入れる天然ゴムは、フェアトレードによるものなのか。フェアトレードを確認するために自社スタッフを生産地に向かわせた。 天然ゴムのフェアトレードは証明されたが、現状天然ゴムのフェアトレードを証明するような機関はない。であれば自社でフェアトレードであることの認証マークを作ろう。 こうして、石油由来の樹脂の使用を抑え、フェアトレードの天然ゴムを使用した化粧スポンジが誕生する。
サスティナブル経営を広める CO2を削減し、フェアトレードにより天然ゴム生産地の貧困問題の解決にも繋がる製品を広める事自体が社会課題解決に繋がる、坂本社長は明確な信念を持ってサスティナブル化粧スポンジを推し進めていく。
ただ予想外の壁が立ちはだかる。クライアントである名だたる化粧品メーカーの購買部門の反応は坂本社長の期待を下回った。各社のHPではSDGsの取り組み目標を掲げ、SDGsを推進していくことを説いているが、資材調達の現場にはその方針は下りてきていないようだ。資材調達の現場のニーズは、これまでと同じく良いものをより安く、これが現状だ。
これまでの御用聞き営業ではだめだ。製品を売るのではなく社会課題を共に解決する仲間として一緒に活動するために、社会課題が解決される製品を導入すべき、と説いた。
この製品を採用することで、社会課題の解決に関心が高いと訴求できる、化粧品メーカーは徐々に動き始めた。
社員も変わった。当初サスティナブル経営を社内で説いた時、社員の多くは困惑した。茶化すものもいた。ただSDGsが世間で注目されメディアでも多数取り上げられるようになってくると、社員たちは自分たちが取り組んでいることがSDGsの活動そのものであることに気づいた。今では社員が率先して、SDGs推進のための目標を設定し、実行のための企画をたて自発的に取り組んでいる。
坂本社長は言う。 全ての経済行為は価値の交換である。ただここ2〜3年でコロナ禍とあいまって価値観は大幅に変わった。安価で良いものよりサスティナブルが優先する価値観に変貌した。サスティナブルでなければ価値のない世界になったのだ。会社と従業員とクライアントと社会との関係。これら全てにサスティナブルという価値がなければ成り立たない社会になった。
この価値観の変貌を、自社の製品、活動を通して関係する全ての人に伝え、社会課題を共に解決する仲間として進んでいかなければならない。それが新しい価値の交換であり、誰一人取り残さないSDGsの価値観である。
雪ヶ谷化学工業株式会社のSDGsアクション ⇒ https://www.yukilon.co.jp/sdgs/
企業理念と会社概要 https://www.kubota.co.jp/corporate/identity/index.html
https://www.kubota.co.jp/corporate/overview/index.html
SDGsへの貢献 https://www.kubota.co.jp/sustainability/sdgs/index.html
長期ビジョン https://www.kubota.co.jp/corporate/vision/index.html
今回特集しました「株式会社クボタ」様の求人をご紹介いたします。 ご興味がある方は下記ボタンよりご応募ください。
片桐 豪志 様 ガバメント&パブリックサービシーズ パートナー
[ 経歴 ] 総合シンクタンク、デロイト トーマツ コンサルティングを経て、有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部ガバメント&パブリックサービシーズにて現職。また、科学技術イノベーションの社会実装を支援するDeloitte Tohmatsu Science and Technologyを推進。
電力、海外インフラ輸出、ESG投資・SDGs、地方創生・産業振興等の幅広い分野で大規模プロジェクトの企画立案、戦略策定、実行支援といったコンサルティングサービスを提供する。企画の具体化と推進、プロジェクトマネジメントを得意とする。著書に「事業プロデューサーという呼び水(共著)」、「インパクト評価と社会イノベーション(共著)」がある。
中條 蕗子 様 ガバメント&パブリックサービシーズ マネジャー [ 経歴 ] シンクタンク、デロイト トーマツ コンサルティングを経て、有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部ガバメント&パブリックサービシーズにて現職。薬剤師。
おもに中央省庁のお客様向けに、技術動向などの調査分析、戦略立案支援、プロジェクトマネジメントといったリサーチ・コンサルティングサービスを提供している。
松野 由佳 様 ガバメント&パブリックサービシーズ マネジャー [ 経歴 ] ITベンダを経て、有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部ガバメント& パブリックサービシーズにて現職。
公共のお客様向けに、経理、人事といった内部事務系システムの調達支援を中心に、システ ムのライフサイクルに沿って幅広くITに関するアドバイザリーサービスを提供する。
ガバメント&パブリックサービシーズ(G&PS)とは? -社会変革に関するビジネス、およびキャリアにおいて中核的な機能を果たしているG&PSの活動についてご説明をいただきたいと思います。
片桐: まず、G&PSがどこに位置しているのかについてご説明します。デロイトトーマツグループは大きな組織で、全体で約1万5000名が在籍していますが、デロイトトーマツ合同会社のもと、大きく5つのにビジネスと1つのコーポレート機能に区切っています。
デロイトトーマツグループの組織構成とG&PSの位置づけ 片桐: 有限責任監査法人トーマツは、監査・保証業務とリスクアドバイザリーから構成されており、デロイト トーマツ グループの基盤となっており、我々はリスクアドバイザリー(RA)に所属しています(有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部)。そして、コンサルティング領域のデロイト トーマツ コンサルティング合同会社や、M&A・クライシス領域のデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、また、デロイト トーマツ税理士法人やDT弁護士法人、そして、グループ内の事業法人の主要なコーポレート機能を持つ、デロイト トーマツ コーポレートソリューション合同会社があります。
RA事業本部もいくつかのサービスラインに分かれていて、その中にG&PSがあるという位置づけです。
G&PSの概要 片桐: G&PSの中にもいくつかテーマがあり、行政経営・地域経営という地方自治体・総務省・内閣府・国交省と地域づくりの仕事をしているチーム、私が担当している産業振興という、経産省・特許庁等で経済政策に関与する方々とお仕事をするチーム、大学にコンサルをする教育チームや、JETRO・JICA・JBICと仕事をする海外コンサルチーム、最近増えてきている国や自治体にデジタルを導入するデジタルガバメント推進チームに分かれて活動をしています。ちなみにG&PSのクライアントは、官公庁のみではありません。社会を良くするという意図での名称であり、実際には民間企業とも多くお付き合いがあります。
G&PSのサービス提供先 片桐: チームに分かれていると言いましたが、よくあるチーム毎に縦割りにならないよう、一つのチームに属しているが他のチームの仕事もするというクロスアサインを実施しています。人によっては3つ以上のチームにまたがっている、あるいは、プロジェクトベースで担当する等の形で取り組んで、様々なソリューションを自分で持つことができる体制をとっています。
社会課題は1つのソリューションでは解決することができないため、自分の中に引き出しを多く持つことができるように、様々なチームで仕事をするということに取り組んでいます。
中條: 最近SDGsという言葉がメディアでも頻繁に使われていますが、G&PSでは、以前からSDGsで取り上げているような社会課題の解決を目標としてクライアントの課題解決に取り組んできました。G&PSは収益よりも社会的課題解決に繋がるか否かが、案件としての取り組みに意義を感じる部門です。
本領域でトーマツがNo.1になれるよう、社会課題にどのようにアプローチしようかというところを重視して取り組んでいます。
トーマツの国内事務所所在地 片桐: デロイト トーマツの強みとして全国に事務所があるということが挙げられます。地方創生の仕事を行う際は、地元にしっかり根付いた人々が我々の仲間にいるということは非常に重要です。地区事務所は地元企業様に対して、何十年も前から監査やコンサルティング等のサービスを提供し、リレーションを構築していますので、地域づくりの仕事をする上で良い土台となっています。
事業プロデューサー派遣事業の成功プロセスとその後 事業プロデューサー派遣事業が創出した社会インパクト -片桐さんは『事業プロデューサーという呼び水』という書籍も出版されていますが、この事業がG&PSの成功事例の一つと伺いました。
片桐: 事業プロデューサー派遣事業の事例ですね。
地域経済は地元の中小企業の売り上げの積み上げが支えています。それを一つ一つ良くしていくためには、時折地方に足を運んでコンサルをするだけではうまく行きません。「地域にコンサルを貼り付けて、支援をするというモデルを作れないか」ということで立ち上げたのが、事業プロデューサー派遣事業です。
「地域に、コンサルを3年間張り付けるとどうなるのか」という、ある意味では実証実験でもあったわけですが、このビジネスモデルを取り入れて、実際に地域の中小企業の売上が上がりました。それから、事業の海外進出・下請けから脱却など、目に見える成果を上げることができました。結果にこだわって仕事をして、まだ誰も取り組んだことのない領域で、結果の上がる仕事ができたことは良い成功事例だと思います。
最初は国の予算で進めていましたが、現在は徐々に自治体に広げていて、だんだんと根付いてくると良いと思っています。
地方の中小企業支援センターのセンター長に、東京の第一線で活躍してきたビジネスマンを募集する事例も増えましたが、任期や年収ダウンなどの障壁があり腰を据えて取り組めないという課題がありました。そこで、デロイト トーマツがその人材(事業プロデューサー)をかかえ、バックアップをするという体制を構築しました。
キャリアアップにつながり、デロイト トーマツがバックアップする、その結果として、地方創生を成功させる、成功事例を数多く作るというところまでをパッケージのような形で行うことで、良い成果を上げることができました。
松野: メンバーは元自治体職員の方や官公庁の方が比較的多いと感じています。G&PSは大阪や福岡にも拠点があるため、周辺自治体に勤務されていた方もいます。
片桐: 事業プロデューサー派遣事業では、3億円の予算をいただいて、最終的に少なく見積もって約6倍の経済効果がありました。売上がどれくらい増えたのかを教えていただける中小企業さんも、融資額を教えていただける金融機関さんもなかなかいるものでもないと思いますが、3年間信頼関係を構築した中で、教えていただけた部分での試算です。
やってどうだったか、何がだめだったか良かったかを理解して振り返り、次の経済政策に活かすという、この循環をひたすら地道にやっていくということが大事と思っています。
G&PSにおけるダイバーシティ・女性の活躍について -G&PSにおけるダイバーシティ・女性活躍の状況についてお話しいただきたいと思います。
中條: 私の大学時代の専攻は薬学、大学院は生命科学でした。前職でも官公庁案件に関わったことはありましたが、G&PSに所属するまで地域振興には触れたことはありませんでした。よって、そもそもパブリックセクターの経験がないと務まらないというわけではなく、イチ生活者の視点や民間企業との仕事の経験から、あるべき姿を発想して業務に取り組んでいけばよいと思います。G&PSでは専門的な知見よりも、クライアントと対話する際の柔軟性が求められると思います。
現在G&PSには3人の女性マネジャーがいますが、女性の活躍を推進するためにも、女性管理職の登用、女性採用を積極的にすすめています。
松野:
前職はシステムエンジニアで、官公庁向けのシステム開発に携わっておりました。
現在はデジタルガバメント推進をテーマとしたチームに所属し、主に公共のお客様向けのシステム導入に関するアドバイザリーを実施しています。BPRから、計画の策定、要件定義、業者選定、PMOとシステム導入の一連の工程に関わります。チームには複数の女性が所属しており、私のような元SEや、事業会社の経験者など様々な背景をもっていますが、それぞれの専門性を生かして活躍しています。
特にG&PSは、行政がDXを推進している中、政策に直結した案件の仕様書の策定等に関わることができることが魅力の一つです。
社会変革プロフェッショナルを志す方へのメッセージ -最後に、社会変革プロフェッショナルへのキャリアを考えられてる方へのメッセージをいただけますでしょうか。
片桐: 社会変革はなかなか一筋縄ではいかないことだらけですが、それでも折れずに社会に変革を起こしたいという想いを持ち、事業をリードできるような人材を我々は求めています。ただ、もちろん最初からできる人はいないので、問題意識と必要なことを吸収する素直さを持っていて、だんだんとそういったリーダーに成長していけばいいと思っています。
まずは社会を変革したいという想いを持ち、様々な社会問題をなんとか解決したいと考え、10年20年という長いスパンでその志を追い続けられる方、そのようなシンプルな志を持っている方に入社いただきたいと思います。
中條: ニュートラルな方がいいと思います。パブリック関係の知見はある程度は持っていたほうが良いと思いますが、持っていなければダメということではありません。経験や知識があっても頭が凝り固まっている方より、物事を柔軟に考えられる方のほうが良いので、経験ないとチャレンジできないというわけではありません。
松野: 私の所属するチームはITの知見は持っているに越したことはないですが必須ではありません。ITに限らず何らかの専門分野を持っている方がいいですね。アドバイザリーの対象となるシステム化業務の種類を限定しているわけではないので、案件の可能性は広範囲に及びます。専門分野をお持ちの方はどこかで専門性を活かせるかもしれません。また、それぞれの専門性を生かしながら協力して実施する案件が多いので、チームワークを大切にしていただける方がいいですね。
-本日はお時間いただきありがとうございました。
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格付カバー率NO.1の強みと、格付に関わる仕事で社会に貢献出来る点などが魅力である「株式会社日本格付研究所」。今回、サステナブル・ファイナンス評価本部長の梶原 敦子様 に日本格付研究所の魅力や組織風土、求める人材像などを伺ってきました。 ご関心のある方からのご応募お待ちしております。
※インタビュー内容、企業情報等はすべて配信当時のものです。
中立的な立場から、自己裁量をもって評価ができる環境 宮崎: 梶原様のこれまでのご経歴についてお話頂けますでしょうか。
梶原様: 新卒で海外経済協力基金(現国際協力機構=JICA)に入職し…
センサーに向かって微笑むと、除菌液がプシュッと手のひらに広がる。「エミーウォッシュ」と呼ばれる愛らしい仕掛けのマシーン を開発したのは、元ソニー株式会社のエンジニアで、マイネム株式会社の代表取締役、末吉隆彦さんだ。手指が除菌されるたびに笑顔が1カウントされ、感謝財=emmy(エミー)として貯まり、教育機関などに除菌液などが無償提供されるという、循環型エコノミーの仕組みを実現した。末吉さんに、開発の狙いと裏側を伺った。
[ 経歴 ] 1992年、ソニー株式会社入社。ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)リサーチャーを経て、2007年、ソニーCSL初のスピンアウト企業となるクウジット株式会社を設立、人工知能やデータ解析技術を活用した未来予測と因果分析を手掛ける(現任)。「笑顔」や「幸せ」といった長期的な社会インラフの追求から、2015年、慶應義塾大学大学院SDM研究所研究員となり、「人を幸せにするおカネ(エミーとゼニー)」など、笑顔とお金に関する共同研究を行っている。2018年から現職。
ーエミーウォッシュでどんなことができるのでしょうか。 笑顔づくりと感染症予防の社会装置であり、公共の社会の接点づくりです。この装置は1笑顔ごとに0・5円たまって、5万円になると学校に寄付されます。設置する会社さんがSDGs実践や健康経営の目的などで、設置代を払う場合もあれば、設置場所を応援したい人がギフトとしてお金を払う場合もあります。
社会実験でもあるのでプロトタイプで1年間実証実験をやって、商品化してすでに1年が経過しました。色々なところで取り上げてもらい、知る人ぞ知るくらいには浸透してきたので、次は、企業だけでなく、さまざまな地域課題と連携したアクションに繋がっていけばいいと思います。
たとえば、地域の人がこの装置との関わり方を自由にアレンジすることが出来て、いま標準のemmyWash除菌液は、竹害とされている課題に対して竹の成分であるモウソウチク抽出物を配合しているものを使っていたりしますが、岡山では林業がさかんですが未利用材の課題もあり、それをつかったアロマ蒸留水と組み合わせて地域活性化に使っている場所もでてきました。色々な人にコミュニティーとして、地域の課題を持ち寄って、掛け算になればいいなと思っています。
ーきっかけは何だったのでしょうか。 実はソニーでエンジニアをしていて、PCやアプリケーション、ゲームを作っていました。その際に、笑顔の計測技術も開発していました。しかし、プロダクトは一回一回ですぐに消費され終わってしまうので、より持続的な社会インフラ的なものが作れないだろうかと考えていました。
その後、東日本大震災の後に笑顔の力を可視化出来ないと考えていた頃に、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授と出会い、弟子入り。
共同研究者になって、笑顔という体験をテクノロジーを使ってうまくデザインする必要があると思い出したのです。計測技術によって、笑顔の力を可視化する、広がりを持った社会インフラが作りたいと考えるようになったのはそのころです。
ーなぜ笑顔が必要だとお考えになったのでしょうか。 現代は分断と社会不安の時代です。特に今は新型コロナウイルスの感染予防で日常的にマスクをつけており笑顔が見えにくい。だからこそ可視化する必要があると思いました。表情筋が鍛わると、健康にもなりますし。
WHOが提唱する健康の定義は、身体面、精神面、社会面がいずれも満たされている状態ですが、社会面は見落とされがちです。現代社会では、ストレスや仕事、経済的状況といった社会的要因で、心を壊してしまう人が多いように感じます。
一方で、社会そのものが不確実かつ複雑で将来の予測がつきにくい状況になっています。新型コロナウイルスの感染拡大は、そうした状況に拍車をかけており、先の見えない日々に疲れた人々から笑顔が失われつつあると思います。だからこそ人と人をつなぎ、互いを支え合う架け橋となる「笑顔」の力で、小さなところから少しずつ空気を変えていければいいと考えています。
ー末吉社長の、開発を志向する原動力は何でしょうか。 面白さで駆動しています。ワクワクしながら、これをやったら喜ぶんじゃないか、作ったものをどう使ってくれるか、などと想像してニヤニヤしながら企画するのが好きなんですよね。どのくらいお金がかかるんだろうというような細かいことよりも、とにかく新しいことが好きなんです。ベンチャー企業なので面白がってやっています。
たとえば、ほかに事業にしたいと思って作ったのが、センサーが笑顔を感知すると「おみくじ」がでてくる「幸せ発見木」。ほかにも貯金箱とか、いろいろなプロトタイプを作りましたが、いずれも反応が良かったです。
除菌装置を考えついたのはコロナが感染拡大してからで、除菌の習慣がなかった日本で啓発しないといけないと考え、エミーウォッシュの開発をはじめました。
ーエミーウォッシュを使って、社会にどうなってほしいと考えていますか。 SDGsを考えられるきっかけにしてほしいです。このマシーンはガジェットではなく、社会装置であり、社会との公共との接点をデザインするものです。それから、エミーウォッシュ本体に蓄積された笑顔の数は、感謝や恩送りのお金を表す通貨単位「エミー」として「エミーバンク」に貯金されます。
貯まったエミーは、教育機関や地域コミュニティなどにエミーウォッシュを無償で設置してもらったり、感染症対策プロジェクトへの支援といった活動に利用されたりします。エミー(=笑顔)とゼニー(=お金)の両方がうまく関連し合うことで、笑顔も循環していく。お金を挟んだのは、マネタイズしながらでないと継続性がないということも意識しているからです。
ー今、日本が社会課題に向き合う上でどういった点が不足しているでしょうか。 公共で共有する「コモンズ」の考え方です。われわれは持ちつ持たれつのお互い様であり、利己と利他の概念、つまりギブアンドテイクで共有財を作っていくという考え方がまだ不足しているように感じます。
一方、事業化となるとビジネスライクになってしまって、社内で睨み合ってしまうと現場は進みません。経済を回しながら、事業としてどう開発していくかを考えていく必要があります。
また、事業は1企業内で締め出すのではなく、他企業と取り組みを一緒にしながらやっていけるはずです。別の企業で何かに長けている人が、協力できることがあるだろうし、また別の企業の窓際で何もせずにいるいる人が実はすごくこっちの企業ではほしい人なのかもしれません。
社会資本がコストという扱いになっていますが、噛み合わせるとものすごい財産になり、社会課題も解決されやすくなると思います。これが、コストtoキャピタルという考え方です。これはコストだと思っているがコストではなく、経済・価値を回すための資本だという考え方で、お金がかかっていることをコストと見ずに、逆に財産であると考えて、モチベーションを組み合わせればすごいものができる可能性があります。
しかし今の日本ではアイディアや資金と言った資本が埋まってしまい、うまくかみあっていません。それを発掘して、自分でやってみて、社会に対する事業の呼び水にできたらいいと思います。みんなでアイディアや構想を共有して、改良していくことができたら尚良いです。
ーエミーウォッシュもそうした、社会内での広がりを意識されています。 エミーウォッシュも、先に事例を挙げた通り除菌液を入れる部分に別の液体(アルコール液タイプの除菌液や蒸留水など)を入れることも可能です。笑顔が感知されたら〇〇できる、という、この〇〇の部分を自由自在にアレンジしてもらうことができます。それを使う人の考え方とのかけざんで、全く違う社会装置になっていく潜在力があります。
SDGsの17種の目標で、色々なパートナーリングができていけばいいと思います。物体ではありますが、そこで言わんとしているところが感染症予防や笑顔の大切さといった話を広げるための社会としての接点です。
それがきっかけとなり、また新しい問いが生まれて繋がっていくと良いなと思う。社会装置をきっかけに、新しい問い、理念の共有ができる。エミーウォッシュの力で、面白がって背後にある何を問おうとしているかが嬉しいんです。
ー「笑顔」の力をどう認識されていますか。 笑顔の価値は、「スマイル=ゼロ円」ではありません。価値あるものです。この考え方に共感してもらって、この装置のファンになってもらい、共感の輪をつなげていきたいと思っています。もちろん笑顔だけで全部解決していくわけではありません。
落ち込むこともあるでしょう。でも笑顔のポジティブな力を私は信じています。紛争や格差といった、さまざまな世界的課題に世界中の人が日々取り組んでいますが、すぐには解決できません。衛生環境の改善も進んでいませんが、そうした多くの社会課題の解決に、誰もが持っている「笑顔」の力で貢献できるような装置を世に打ち出していければと考えています。
emmyWashサービス・機器についての問合せ窓口:「マイネム株式会社」
(メール)info@myname.tokyo (電話)050-3684-9912 (平日10:00~17:00)