近年、世界的な環境問題への意識の高まりを受け、日本企業においても「GX（グリーントランスフォーメーション）」への取り組みが加速しています。2050年カーボンニュートラル目標の達成へ向けて、企業はGX人材の確保・育成に力を入れており、GX人材への転職は今、大きなチャンスとなっています。本記事では、GX人材の年収相場や未経験からの転職成功事例、業界動向などを解説します。
GX人材とは？ 注目される背景と市場動向
2020年10月に菅義偉首相（当時）が「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明して以来、日本企業のGXへの取り組みは急速に進展しています。政府は2023年に「GX推進法」を成立させ、今後10年間で150兆円規模の官民投資を見込んでいます。このような背景から、GXビジネスをけん引する「GX人材」の需要が高まっているのです。
GX人材の定義と求められるスキル
GX人材とは、環境・脱炭素の知識を持ちながら、企業のビジネス変革を推進できる人材を指します。単なる環境専門家ではなく、ビジネス視点で脱炭素化と経済成長の両立を実現できることが求められます。
GX人材に求められる主なスキルは以下の通りです：
- 環境・脱炭素に関する専門知識
- ビジネスセンス
- データ分析力
- コミュニケーション力
- マネジメント力
とくに「環境知識×ビジネス視点」の両方を持つ人材が企業から高く評価される傾向にあります（弊社調べ）。
市場規模と今後の成長予測
デロイトトーマツの2024年10月発表の調査によると、日本のGX人材は約254万人で、2035年には約266万人のGX人材が必要とされる予測があります。現在、約200万人の人材が不足している状況です。
GX人材の需要は急増しており、GX関連求人数は2016年比で約6倍に増加しています。今後もこの傾向は続くと予測されます。
GX人材の年収相場データと特徴
主要な調査結果
デロイトトーマツの2024年10月発表の調査によると、GX人材の年収は非GX人材と比較して高い水準にあります：
- GX人材全体平均：703万円（非GX人材より13%高い）
- 管理職GX人材：952万円（非GX人材903万円より49万円高い）
- 非管理職GX人材：600万円（非GX人材531万円より69万円高い）
人材争奪戦により年収1000万円超の提示事例も増加しており、とくに専門性の高いポジションでは高額な報酬が提示されている傾向があります。
GX人材の特徴
年代別分布
- 若い年代ほどGX人材の割合が高い傾向
- 半数以上が従業員1001人以上の大企業に勤務
- 6割以上が転職経験者
業界別分布
- 電気自動車（EV）・蓄電池等の領域：26.8%（最多）
- 風力・太陽光・地熱：次に多い領域
- 研究開発フェーズでは理系職種、事業開発フェーズでは文系職種が多い
就業意向
- 今後もGX関連業務に関わりたいと考える人材は56.7%と半数程度
- ワークライフバランスや柔軟な働き方を重視する傾向
未経験からGX人材への転職成功事例
GX人材は専門性が高いイメージがありますが、異業種からの転職成功事例も多数あります。転職成功者の事例をご紹介します。
事例1：IT業界 → GXコンサルタント（年収650万→850万）
プロフィール：
- Sさん（仮名）、36歳、女性
- 前職：IT企業のプロジェクトマネージャー（経験10年）
- 転職先：外資系コンサルティングファームのサステナビリティ部門
- 年収変化：650万円→850万円（約30%アップ）
転職準備：
- TCFDの提言内容を詳しく研究
- データ分析スキルを活かし、排出量算定の専門知識を習得
- 友人の飲食店の排出量算定と削減提案を実施
成功の決め手：
Sさん（仮名）はITプロジェクト管理経験とデータ分析スキルが評価されました。「システム導入を通じた業務効率化」の経験が、「GXを通じた企業変革」に応用できると判断されました。
GX業界の主要転職先企業と求人動向
GX分野の転職先は多岐にわたります。おもな転職先企業と最新の求人動向について解説します。
大手商社・金融機関のGX部門
おもな企業例：
- 三菱商事（サステナビリティ・エネルギー本部）
- 三井物産（エネルギーソリューション本部）
- みずほフィナンシャルグループ（サステナブルビジネス推進部）
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ（サステナブルビジネス部）
求人動向：
大手商社や金融機関では、GX戦略の推進とビジネス化に向けた組織拡大が進んでいます。
脱炭素ベンチャー企業
おもな企業例：
- みんな電力（再エネ特化型電力小売）
- 自然電力（再エネ発電事業）
- TBM（環境配慮型素材開発）
- ウェザーニューズ（気候変動対応サービス）
求人動向：
環境テック系スタートアップは、気候変動や環境問題という世界的課題に直接取り組める社会的意義の高さやグリーンテック市場の拡大に伴い、急成長しています。
コンサルティングファーム
おもな企業例：
- デロイト トーマツ コンサルティング（サステナビリティ戦略部門）
- PwCコンサルティング（ESGトランスフォーメーション部門）
- アクセンチュア（サステナビリティサービス）
- ボストン コンサルティング グループ（気候変動・サステナビリティ）
求人動向：
コンサルティングファームではGX関連部門の強化が顕著です。2022年度は2016年度比約8倍とも言われています。
未経験者がGX人材になるためのロードマップ
必要な知識・スキルの習得方法
1. 基礎知識の習得（3〜6ヶ月）
- 書籍：『カーボンニュートラル燃料のすべて 電動化、水素に続く第3の選択肢』（日経BP）
2. 実践的スキルの習得（3〜12ヶ月）
- データ分析スキル：温室効果ガス排出量の算定方法、LCAの基本
- ビジネス活用力：ESG情報開示の実務、環境配慮型ビジネスモデルの構築
有効な資格・認定制度
- 国内資格：国内資格：脱炭素アドバイザー、カーボンニュートラルマネジメント検定（CNM検定）、炭素会計アドバイザー
- 国際的な研修・認定制度：GRI基準研修、CDP回答支援研修、TCFD対応研修
関連資格を保有することで、転職活動における選考通過の可能性が高まると考えられています。ただし、資格よりも実務経験の方が重視されるケースも多いため、「資格取得と並行して実践経験を積む」アプローチが効果的です。
転職活動のタイミングと準備
転職活動の適切なタイミング
- 4〜6月：新年度の組織体制・予算確定後
- 9〜11月：下半期の採用枠活用期
- 1〜2月：次年度の採用前倒し期
効果的な転職準備
- 自己分析と市場理解
- ポートフォリオ作成
- ネットワーキング
GX転職で失敗しないための注意点
- 「環境への関心」だけで転職を決めない
実際の業務は高度な専門性や厳しい数値目標が求められることも多いため、「環境貢献×ビジネス成果」の両立を意識することが重要です。 - スキルギャップを過小評価しない
GX分野は専門性が高く、特に未経験からの転職では必要なスキル習得に時間がかかることを認識しておく必要があります。 - 年収への過度な期待は禁物
未経験からの転職では、いきなり高年収を期待するのではなく、キャリアパスを長期的に考えることが大切です。
まとめ：GX人材への転職は今がチャンス
1. GX市場の急速な拡大と人材不足
デロイトトーマツの調査によると、現在約200万人のGX人材が不足している状況です。政府が打ち出した「GX推進法」による今後10年間で150兆円規模の官民投資は、GX関連市場の大幅な拡大を示唆しています。弊社の転職支援実績データによると、GX関連求人は2016年比で約6倍に増加しており、早期参入者ほど有利なポジションを確保できるチャンスがあります。
2. 未経験からでも参入可能な時期
現在はGX市場が急拡大しているため、完全な専門家でなくても、基礎知識と意欲があれば参入できるフェーズにあります。GX人材の6割以上が転職経験者という調査結果も、キャリアチェンジの可能性を示しています。
3. 非GX人材より高い年収水準
デロイトトーマツの調査では、GX人材の平均年収は703万円と非GX人材より13%高い水準にあります。特に非管理職では69万円の差があり、若手でもキャリアアップの可能性が高いことがわかります。
GX分野に精通した専門コンサルタントが、あなたの転職をサポートいたします。具体的なキャリアプランや求人紹介についてのご相談は、ぜひ下記よりお問い合わせください。
