乳幼児や高齢者の生活を支える紙おむつは、使用後に多くが焼却処分されている。高齢化の進展により使用量の増加が見込まれる中、日用品メーカーのユニ・チャームは、使用済み紙おむつを新たな紙おむつの原料として再生する「水平リサイクル」に取り組んでいる。
焼却負荷を減らす技術開発
紙おむつは、パルプ、高分子吸収材(SAP)、プラスチックなど複数素材で構成され、水分を多く含むため、焼却時に多くの燃料を必要とし、温室効果ガス排出の要因となってきた。一方、汚れが付着していることからリサイクルは難しいとされてきた。
環境省によると、一般廃棄物に占める紙おむつの割合は、2015年度の4%台から2030年度には7%前後まで増加する見通しだ。
オゾン処理で再生パルプを実現
ユニ・チャームは2010年から技術開発に着手し、2019年に「オゾン処理」による再生技術を確立。使用済み紙おむつを粉砕・洗浄して素材を分離し、汚れの残るパルプにオゾン処理を施すことで、殺菌・脱臭・漂白を行い、未使用パルプと同等品質まで回復させることに成功した。
同社によると、紙おむつの水平リサイクルを実用化したのは世界初という。
プラスチックや高分子吸収材についても、2025年3月までに再生技術を確立し、現在は紙おむつを構成するすべての素材をリサイクル可能としている。
製品化と実績
2022年には再生パルプを一部使用した大人用紙おむつ、2024年には幼児用紙おむつを一部地域で発売。再生素材は紙粘土、猫用トイレ砂、回収袋・回収ボックスなどにも活用されている。
リサイクルされた使用済み紙おむつは、2025年11月末時点で累計632万枚に達した。
自治体連携で拡大へ
RefFプロジェクトの特徴は、技術開発にとどまらず、自治体と連携した回収体制づくりにある。鹿児島県志布志市や大崎町では、専用回収ボックスや回収袋を導入し、住民参加型の分別回収を進めてきた。
さらに2025年12月には、富士クリーン(香川県)と連携し、水使用量を約50分の1に抑えられる「ドライ洗浄法」の開発にも着手。水資源の制約がある地域や海外展開も視野に入れる。
ユニ・チャームは2035年までに、紙おむつリサイクルに取り組む自治体数を20に拡大する目標を掲げる。「使用済み紙おむつを捨てない未来」の実現に向け、循環型社会づくりへの挑戦を続けている。
引用元記事:https://www.asahi.com/sdgs/article/16253313