株式会社クーバルは、日本の農業が抱える担い手不足や耕作放棄地増加などの課題に対応するため、企業が農業に参入する新たな仕組み「兼業農社」構想を発表した。同構想では、提携農家で生産した米を購入し、2025年夏より全従業員へ毎月2kg配布するなど、農業支援と従業員の食の安心を両立する取り組みを進める。
農業の深刻な現状に企業が関与する新モデル
食料自給率の低下(2023年度:38%)、農業従事者の高齢化(平均69.3歳)、耕作放棄地の増加など、日本の農業は構造的な課題を抱えている。クーバルは、企業のマンパワーと組織力を活かしてこれらの課題を補完する仕組みとして「兼業農社」を提唱。従来の「農業は農家だけが担うもの」という枠組みを越える新たな地域共創モデルを目指す。
兼業農社モデルの3つの特徴
1. 企業の人材が農作業・商品開発に参画
企業の従業員が提携農家の作業支援を行うほか、商品企画や改善提案といったビジネススキルを農業に還元する。
2. 生産された作物を福利厚生として社員へ還元
収穫された米は「クーバル米」として全従業員に配布。生産支援に参加していない社員にも還元され、働く人の日常に直接メリットが届く仕組みとなる。
3. 農業・福祉・企業が連携し、地域経済を循環
農産物の活用まで含めた循環モデルを構築。生産から販売までを一貫して支援し、地域に新たな雇用・収益の創出を図る。
規格外農産物を生かした循環型の地域モデル
提携農家「ひのでファーム」で生まれる規格外米は、米粉へ加工され、クーバル運営の就労支援施設「むく」でグルテンフリー焼き菓子へと生まれ変わる。これらの商品は系列店「muku菓子店」(大阪・京都)で販売され、ふるさと納税の返礼品にも採用されるなど高い評価を得ている。
この取り組みにより、
- 規格外品の有効活用
- 障がい福祉施設での就労機会創出
- 地域への経済還元(ふるさと納税)
といった“多方向に利益をもたらす循環”が実現している。
従業員の声から見える「取り組みの価値」
米を受け取った従業員からは、「お米の重みを通じて、食のありがたさや支えてくれる人々への感謝を再認識した」といった声が寄せられている。生産者と消費者の距離を縮め、働く人の意識変化を生む点も本構想の特徴だ。
持続可能な農業と社会に向けた第一歩
クーバルの「兼業農社」構想は、企業と農業の新たな関係性を創出する取り組みとして、地域経済の活性化や食の安心につながる可能性を秘めている。今後の取り組み拡大によって、持続可能な農業モデルが広く普及することが期待される。
引用元記事:https://voix.jp/sdgs/sdgs/73481/