バイオの力で「食と環境」の未来を創る

――アサヒバイオサイクル、ビール副産物を活かした新たな農業モデルに挑む

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――。
そのような思いのもと、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年で3年目を迎えた。
私たちは今年も、日本企業による持続可能な未来への挑戦を積極的に発信していく。


ビール製造の副産物を、農業資材へ転換

近年、世界的に深刻化する食料問題。アサヒグループの一員であるアサヒバイオサイクル株式会社は、ビール製造過程で生まれる副産物を活用し、栽培コストの削減と環境負荷の低減を同時に実現しようとしている。
同社の経営ビジョンは「バイオのチカラで未来を創る。」。アグリ事業、アニマルニュートリション事業、環境事業を展開し、資源循環型社会の実現を目指している。

注目を集めているのが、ビール酵母細胞壁由来の農業資材だ。長年の研究を通じて開発されたこの資材は、種子の発芽や根の発達を促進し、植物のストレス耐性を高める効果を持つ。


節水と省力化を両立――コメ不足にも一石

特に、水田管理の労力とコストを大幅に削減できる「節水型乾田直播栽培」において、高い効果が実証されている。
通常の水田栽培では、苗を育ててから移植する必要があるが、乾田直播では稲の種を直接まくことで水張りや田植えの工程を省略できる。一方で、収量が安定しにくいという課題もあった。

同社がヤマザキライスと共同で実施した実証実験では、この課題を克服。
ビール酵母資材を用いた節水型乾田直播栽培で、従来の水田栽培と同等の収量を確保することに成功しただけでなく、温室効果ガス(GHG)を約65%削減する成果も得られた。
これは、食料供給の安定化と脱炭素化の両立を示す好例だ。


バイオの力で社会課題に挑む

「私たちは、ビール製造副産物という“未利用資源”に新たな価値を見いだすことで、食と環境の課題解決に貢献していきたい」と、同社は語る。
小さな副産物から生まれた革新が、やがて日本の農業の未来を支える力になる――。
アサヒバイオサイクルの挑戦は、まさにSDGsの理念を体現している。

引用元記事:https://www.newsweekjapan.jp/stories/sdgs/2025/11/574398.php