コクヨ株式会社は、カナダ発の循環型製造企業ChopValue Manufacturing Japan(川崎市)と連携し、使用済み割り箸をアップサイクルしてオフィス家具へと生まれ変わらせる新たなプロジェクトを、2025年4月より本格始動しました。
ChopValue社は世界各地で、割り箸などの都市型廃材を再資源化し家具などに加工するマイクロファクトリーを展開しており、日本市場への進出にあたってコクヨとの協業が実現。国内における割り箸の使用量の多さに着目し、「都市に眠る資源」を活用した新たなサステナビリティのかたちを目指しています。
実際、コクヨの東京品川オフィス「THE CAMPUS」では、1日あたり約130膳(約260本)の割り箸が廃棄されていることが判明。カフェテーブルの天板などに活用すれば、比較的短期間で資源循環が可能となる見込みです。
法的ハードルと仕組みづくりの挑戦
この取り組みには、廃棄物処理法をはじめとした制度的課題も存在します。使用済み割り箸は「一般廃棄物」に該当し、収集や運搬には自治体の許可が必要です。こうした課題に対し、コクヨとChopValueは一部自治体と連携し、割り箸を「有価物」として扱う合法的な回収スキームの構築を進めています。
あわせて、社内にはおみくじ型の回収ボックスを設置するなど、回収行動自体が体験として楽しく、サステナブルな行動を促すデザインの工夫も取り入れています。
試作品に高い関心、「9667本の割り箸」でCO₂削減を可視化
2025年4月には試作品のオフィス家具が完成し、イベントにて披露。天板部分には回収された割り箸を使用し、「9667本の割り箸でできています」といった刻印表示が、来場者に強い印象を与えました。使用された割り箸の本数やCO₂削減量の“見える化”により、利用者の理解や関心を高める効果が期待されています。
サステナビリティを「我がこと」に
本プロジェクトの特徴は、社員や利用者が直接“資源の循環”に関われることにあります。割り箸を回収・分別し、実際に自分たちの使う家具へと生まれ変わることで、個人の行動が企業全体のサステナビリティへつながる実感が得られます。清掃業務に従事する社内グループ会社からも「分別作業の負担軽減につながる」と歓迎されています。
今後の展望
将来的には、飲食店やビルの工事現場など、使用済み割り箸が発生する場所での回収と、それを活用した空間づくりの展開を見据えています。たとえば、工事に関わった作業員の使用済み割り箸で、完成した建物の受付カウンターを作るといった、ストーリー性のある循環も検討中です。
現在は、制度整備や回収スキームの確立というチャレンジの最中にありますが、「まずやってみる」というコクヨの実験・挑戦文化がこの取り組みを支えています。今後もステークホルダー全体に価値をもたらすプロジェクトとして、持続可能な循環システムの構築を目指していきます。