投資信託運用会社のSFDR開示に改善の余地指摘
2025年6月30日、欧州証券市場監督局(ESMA)は「2023–2024年 サステナビリティリスクおよび開示に関する共通監督行動(CSA)」の最終報告書を発表しました。本調査は、欧州全域の投資信託運用会社(UCITSおよびAIFM)を対象に、サステナビリティリスクの統合状況や持続可能な金融情報開示規則(SFDR)に基づく情報開示の適正性を評価したものです。
全27カ国の監督当局(NCA)が参加し、企業レベルおよび商品レベルでの開示状況、ならびにグリーンウォッシング対策について多面的に検証が行われました。
主な調査結果
- 多くの運用会社で基本的な法令遵守は確認されたものの、SFDR関連の開示内容には改善が必要。
- 開示文書の表現が抽象的で、環境・社会的特性の測定方法が明確でないケースが多数。
- 事前契約資料、定期報告書、ウェブサイト、広告資料間で内容に矛盾が散見された。
- 主な悪影響指標(PAI)の説明が不足し、非開示の理由も不明確な場合があった。
- ESGデータの精度や検証体制が不十分で、第三者データを過信する傾向が見られた。
- サステナビリティリスクを踏まえた報酬方針が具体性に欠け、ESG評価との連動も不透明。
- 特にArticle 8ファンドでは誤認表示が多く、13当局は「誤解を招く開示はゼロ」とした一方、10当局は「20%以上のファンドで問題あり」と報告。
- 一部ファンドはSDGsやネットゼロ目標を掲げるものの、その達成手段やデータ、プロセスが曖昧で、ESMAはこれをグリーンウォッシングの温床と懸念している。
ESMAの提言と今後の展開
ESMAは各国監督当局に対し、以下の対応を推奨しています。
- 監督手続きの高度化と早期の是正措置実施
- ウェブ上の開示情報の可視性向上
- ESG関連用語の適正な使用徹底
- PAI開示の具体化と詳細化
- 商品レベルでのDNSH(重大な悪影響の回避)テストにPAI指標の活用徹底
一部の当局は既に監督命令や警告を発出し、違反事例に対する対応強化を検討中です。ESMAは監督手法の一貫性および透明性の向上を重視し、今後も各国監督当局(NCA)との連携を強化していく方針を示しています。