6月17日、スイスの有力ビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)は64カ国・地域を対象にした「2021年版世界競争力ランキング」[1]を発表した。スイスが首位となり、2位はスウェーデン、3位はデンマークとなった。他方、日本は前年から3つ順位を上げたものの31位にとどまっている。
当ランキングは、『インフラ』『経済パフォーマンス』『政府の効率性』『ビジネスの効率性』の4つの分野に関する統計データおよび企業の経営層を対象とするアンケートから算出される。2021年の発表における日本の順位は、マクロ経済の評価を巡る『経済パフォーマンス』分野が12位と前年に引き続き高い評価を得た。一方で、『政府の効率性』は41位と前年から横ばい、『ビジネスの効率性』は前年から7つ順位を上げたものの48位にとどまり、政府とビジネスの効率面が足かせとなっている状況だといえる。特に『ビジネスの効率性』の順位は2019年以降、40~50位台に落ち込んだままの状態が続いている。
日本のビジネス効率性はなぜ低く評価されているのだろうか?
当ランキングにおける『ビジネスの効率性』の内訳をさらに細かくみると、とりわけ企業の機敏性(アジリティ)やビッグデータの活用・分析などといった企業の意思決定に関する指標を含む「経営プラクティス」(62位)が低位で推移している。また、一人当たりの購買力平価GDPで測った労働生産性や企業のデジタル技術の活用などが含まれる「生産性・効率性」(57位)のほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)や変化に対する柔軟性・適応性などが含まれる「姿勢・価値観」(55位)の順位も厳しい状況が続いている。つまり、近年叫ばれている労働生産性のみならず、企業のビジネス環境変化への対応が『ビジネス効率性』に関する評価の足かせとなっている。
ただし、当分野での指標の約3分の2は経営者層向けアンケート調査が反映されているため、他国と比較して明らかになった”競争力”というより、経営者が持っている”危機感”を表している部分も含まれているといえる。そうはいっても近年日本企業は海外企業と比べて成長の勢いに弱さがみられていることは確かではないだろうか。例えば、「経営プラクティス」に関して、米国の順位は6位と上位になっているが、実際にGAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)など米国のプラットフォーム企業は顕著な成長ぶりをみせているのだ。
技術革新やグローバル化などにより世界は常に変化しているなか、企業の変化対応力および効率性の向上が日本の競争力向上のカギを握っている。その企業の対応をサポートする政府のあらゆる対策や支援にも期待したい。
この記事は帝国データバンク様の記事を転載したものです。
世界競争力31位。日本の弱みとは?