戸田建設、浮体式洋上風力発電で五島市に再生可能エネルギー拠点を構築

持続可能な社会の実現に向け、再生可能エネルギーの活用が注目されている。日本は世界6位の海洋面積(約447万㎢)を有し、海上に設置した風車で発電する洋上風力発電が、主力電源の一つとして期待されている。こうした中、戸田建設株式会社(社長:大谷清介)は、浮体式洋上風力発電事業に取り組んでいる。

世界が注目する浮体式洋上風力発電

従来の「着床式」洋上風力発電は水深60m以下の浅海域にしか設置できない。一方、日本の沿岸は深く、台風や地震の多発地域であるため、海上に浮かべる「浮体式」が適している。浮体式は深海にも設置可能で、沖合では安定した強風を利用できる点もメリットだ。

戸田建設は京都大学(当時)と共同で「ハイブリッドスパー型」と呼ばれる浮体式風力発電設備を開発。コンクリートと鋼で構成した巨大円筒を海に垂直に浮かべ、上部に風車とタワーを設置する。浮体は3本の鎖で海底に固定され、シンプル構造により標準化・量産化・低コスト化が可能で、台風や地震にも強い。

五島洋上ウィンドファームの概要

2018年の「再エネ海域利用法」に基づき、長崎県五島市沖で国内初のチャレンジとして「五島市沖洋上風力発電事業」を進めている。ENEOSリニューアブル・エナジー、大阪ガス、INPEX、関西電力、中部電力と共同で五島フローティングウィンドファーム合同会社を設立し、2022年8月から海上工事を開始。福江島沖約7kmの海域に、ハイブリッドスパー型の設備8基を4kmにわたり設置した。

2026年1月の運転開始を目標に、試運転や各種試験を実施。発電された電力は九州電力の送電網を通じて五島市に供給される予定である。

地元との連携で地域活性化

事業は、地元漁業協同組合や関係者の意見を反映し、段階的に実証・検証を行い進められている。浮体の多くは地元調達され、建造や運転管理にも地域企業が参画。地域経済活性化や雇用創出に寄与している。さらに、風車8基の名称は五島市と新上五島町の小中学生が公募で命名し、地域との結びつきを強化している。

シンプル構造で低コスト化を実現

直径7.8mのコンクリートリングを接合した浮体に鋼製浮体部やタワーを結合、全長約130mの浮体構造を完成させる。海上での組立作業を最小限に抑えるため、半潜水型台船「FLOAT RAISER」を用い、浮体を海に浮かべる工法を採用。浮体は自然に立ち上がる構造で、強風や高波でも安定し、係留用鎖で海底に固定される。

これらの工夫により、安全性や施工精度を維持しつつ、低コスト・量産化が期待できる工法が確立された。

今後の展望

1基あたり出力2.1MWの五島洋上ウィンドファームだが、世界の洋上風力は15MW以上が主流に。戸田建設は日本の海洋環境に適した技術開発を進めつつ、将来的な大型化にも対応できる方針で、再生可能エネルギーの国内拡大を牽引する。

引用元記事:https://prtimes.jp/story/detail/6BkNWohM5Vb