モーニングスターは、2025年1〜3月期における世界のESG(環境・社会・ガバナンス)ファンドからの資金流出額が86億ドル(約1兆2,000億円)に達し、四半期ベースで過去最大となったと発表しました。前年第4四半期における181億ドルの純流入から一転し、「鮮明な反転」と分析しています。
特に注目されるのは、世界最大のESG投資市場を持つ欧州でも12億ドルの資金流出が確認された点です。モーニングスターが2018年に分析を開始して以来、欧州のESGファンドが流出超となるのは初めてです。
背景には、地政学的リスクの高まりとESGに対する反発の拡大があります。米国ではトランプ前大統領の再登場を受け、気候変動対策やDEI(多様性・公平性・包摂性)に対する法的リスクが再燃。これを受け、運用会社の間ではESGへの言及を控える動きが広がっています。
モーニングスター・サステナリティクスのサステナブル投資調査責任者、ホーテンス・ビオイ氏は、「今回の資金流出は、資金フローの変化のみならず、サステナブル投資戦略の市場における立ち位置に変化の兆しが現れている」と指摘。特に米国では、ESGの再定義や統合的なブランド戦略、慎重な商品設計などの動きが進みつつあり、その影響が欧州市場にも及んでいるとしています。
一方で欧州では、グリーンウォッシング(見せかけのESG)の取り締まり強化が進んでおり、EUおよび英国において新たな規制や開示義務が導入されるなど、ESG投資の質的向上を促す動きも活発化しています。
ESG投資を巡る市場環境は、政策・規制・社会的認識の変化によって流動性が高まっており、今後の動向が注目されます。
引用元記事:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-04-30/SVEUN5T0G1KW00