【コンクリートコーリング特集インタビュー】

人的資本の情報開示を、継続的な社内改革行うための指針に

コンクリートコーリング株式会社

土木建築工事には欠かせないコンクリート切断穿孔において、社会環境に配慮した技術と施工で日本を代表する企業の1つであるコンクリートコーリング株式会社。
最新のコンクリート切断穿孔技術をベースに安定した成長を行ってきたが、創業から43年あまりが経過し組織にも硬直感が出始める中、社内改革を継続してゆくための手段として人的資本の情報開示に着手した。
技術力に定評のある同社が社内改革を行うために人的資本の情報開示を活用する理由を聞いた。

【会社概要】

会社名:コンクリートコーリング株式会社 URL :https://www.coring-osaka.co.jp/

所在地 :大阪府大阪市都島区毛馬町5-15-24 創業 :1978年

社員数:95名(2022年8月現在)

【インタビュー先】

コンクリートコーリング 代表取締役社長 藤尾 浩太様

コンクリートコーリング 経営統括室長 中元 美緒様

❏ なぜ人的資本の情報開示に取り組もうと考えたのでしょうか

(藤尾)
優秀な人材の獲得と、人材の定着率を高めることが目的です。人材獲得と人材定着率向上を行うために人事制度、評価制度を変える等を行ってきました。
人事に関しては、いろいろな情報を見聞きして、「あれもやらなければ、これもやらなければ」と思いつくことがたくさんあり、いったい何をどこまでやれば正解なのかわからず、目立った問題にだけ対処している今の状況が、対策として穴だらけで、しかも後手に回っているようで気がかりでした。

近年、人事制度、人事考課表を新しくしました。
6等級から1等級までの専門職のコースと、M3等級からM1等級の管理職のコースがあります。
各等級に求められる仕事の質や人間性を明示し、昇級昇格のルールを明確にしました。
以前は、昇級昇格の仕方が不明瞭だという社員の不満の声がありましたが、明確にした上、等級に紐づいて給与の額も決まっているため、将来のキャリアプランが描きやすくなったのではないかと思います。

この制度のおかげでやる気になった若手が、驚異的なスピードで独り立ちしたり、上を目指そうと努力する人が増えたりしていると感じます。
一方で、全員が実力主義の制度を歓迎しているわけではないのだと気づきました。
現状維持で良いと思っている人が「もっと頑張れよ」といわれるのはストレスだろうと思いました。
これについては何か対策を考えなければならないと感じています。

また、昇級昇格のルールが明確になったことから、そこから逆算して考課をつけているのではないかと思われるようなケースがありました。
考課調整会議があるため、極端なものはそのまま通ることはないのですが、ルールを決めたらその管理はずっと必要なのだと感じました。
あとは、考課表に書かれてある文言が分かりにくいという意見がありました。
新しい制度に切り替わってから1年半しかたっていませんので、課題には適宜対処しています。

それから、同一労働同一賃金の義務化に基づいて再雇用制度を整備しました。
以前は再雇用されると現役時代の月収の7割にするという慣習がありましたが、働く時間や能力、体力、担当する職務が現役時代と変わらないのであれば、同じ月収で再雇用するというルールになりました。
これは従業員満足度UPになったと思います。

一部分ですがこのように人事制度、人事考課表の整備等、進みましたが、わが社では人事部がなく、それぞれ本業を抱えた社員が兼業で採用、育成、労務管理、人事制度の整備などを行っています。
経営戦略に沿った人事などはできておらず課題だと感じています。

そこに人的資本の情報開示、また情報開示の国際規格であるISO30414を知り、ISO30414に取り組めば、人的資本にかかわることの大まかな枠を押えられて、自社の強み弱みが分かり、弱みに対して適切に対処できると思いました。
人的資本の情報開示の国際規格であるISO30414は11領域58項目と決まっており、すべて数値で報告するため、財務諸表の人事版かなと考えています。
財務諸表は経営成績や財政状態がわかるため、対策が立てられ過度に不安に陥ることを防いでくれます。
それが人事の領域でできたら、頭の中が整理されて、今やらなければならないことが見えてくるだろうなと思いました。

❏ 人的資本の情報開示に取り組む際に想定される課題と期待する効果

(中元)
開示するのに勇気がいるような不都合な事実が出てきたらどうしようと思っています。
数値で表すのに結構な時間と業務量がかかりそうということと、数値化された後、対処しなければならない課題がたくさん出てくるだろうと想像しています。

ただ社内に対しては、今まで数字でまとめたことはなかったので、共通の問題意識を持つことができると思いますし、改善の方向の正確性もスピードも上がるのではないかと期待しています。

最近は新卒採用が順調な反面、離職率が目立つようになってきました。
また、やめてほしくなかったキャリア採用の方が数年で退職してしまった苦い経験もあります。

能力のあるキャリアなら、どんな環境の中であっても雑草のような力強さでのし上がっていってくれないかと淡い期待を抱いていたのですが、サラリーマン金太郎みたいな人を期待するのは現実逃避だったなと思います。
優秀なキャリアを持っている方は、ポジションを用意して整った環境で迎えなければならないと猛省しました。

従業員が辞めたいという意向を本社に伝えてきたころにはもう手遅れであることが多いです。
離職理由を聞きだしたところで本音が聞けているとは限りません。
また、その離職理由をもとに対策をして次に活かすという姿勢では、あまりにゆっくりしていますし、現在不満を抱えている従業員は救えません。
もし、整った環境を提供しているという自負があれば、たとえ離職率が高くても、原因は別にあると考え悔やむことなく送り出すことができます。

優秀な人に入ってほしいことと、その人が幸せに働ける環境を作りたいと心から思っています。
社外に対して期待する効果としては採用後のギャップがないように、良いところも悪いところも「今、環境改善頑張っている最中です」というのが数字で分かればいいかなと思います。

❏ 特に、採用に対する効果への期待はどのようなものか

(中元)
ISO30414の項目の中では大企業と中小企業で難易度が異なります。ISO30414に限らず、大企業では義務化されていることが、中小企業では免除されていることが多いです。
でも採用の場では、大企業と同じ土俵で戦わなければなりません。学生から見ると社内は見えませんし、どんな雰囲気なのか採用担当者を見て推測するしかありません。

わが社はB to Bですし、メジャーではない分野ですし、大企業でもないですし、不利な条件がそろっています。
中小企業で義務化されていないことでも積極的に取り組み、働きやすい環境を作ろうと頑張っているんだと情報開示を通じて伝わってほしいと思っています。
限られた経営資源の中でもやれるだけのことをしたいと思っています。

若手の退職理由の第一位は「人間関係が悪い」だそうです。
私自身もそういう経験があるので気持ちはとてもよくわかります。
でも「人間関係の良い会社」というのは、その会社の中の誰かがその環境を作ろうと頑張って、それを維持しているから存在するのだと思うのです。
それなら自分が環境を作る立場になるという選択をするのも「人間関係の良い会社」で働けるチャンスじゃないかと思うのです。
困難に立ち向かって奮闘する人は、その中で磨かれて気づいたらダイヤモンドになっているかもしれません。
「人間関係の良い職場」で働ける上に、人間性も磨かれて、転職というギャンブルでキャリアを無駄にするリスクも避けられます。
そんな気持ちで入社してくれる仲間が増えたらいいなと期待しています。

❏ コトラのISO30414企業認定プログラムで認定されたご感想

(藤尾)
ISOは敷居が高いという先入観がありましたが、自社でどういう取り組みをすればISO30414の主旨に沿うのか、わかりやすく教えていただきました。コトラさんに認定をいただいたおかげで、ガイドラインに従った情報を約束した期限までに開示しなければならないと強く意識づけられました。職場改善に取り組んでいるということが求職者のみなさまに伝わることを期待しています。

ーお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。

【コンクリートコーリング株式会社採用情報】

【コトラ人的資本開示コンサルティングサービス(『ISO30414』コンサルティングサービス)】

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