昨今、環境問題などESGに配慮した事業を行う企業に対する「ESG投資」が話題となっている。一方で実態は異なるのに、投資家らを意識して企業が環境に配慮していることを装う「グリーンウォッシュ」の課題も指摘される。そうした中、存在感を放つのが、中立の立場で企業の経営体制を評価する「格付け機関」だ。その格付け機関の中でも、「Sustainalytics」は国連が持続可能な開発目標 (SDGs)を発表した2015年よりもずっと前から、環境影響によるリスク情報や評価を提供し続けてきた。1992年に創設されて以来、ESGのコーポレート・ガバナンスのための調査、レーティング、分析などを手掛ける大手 ESG 評価機関として、世界中の投資家の投資戦略をサポートしてきた、いわばESGレーティングの「老舗」機関。更に、現在ではグリーン、ソーシャル、トランジションボンド等のサステナブル・ファイナンスに対する外部評価を行うサービスも展開している。欧米・北米を中心に世界で17の拠点を有し、1200人以上のスタッフを抱え、依然、その規模を拡大し続けている。2016年10月に開設された日本法人で働くお二人に、その組織のミッションや風土を伺った。

ゲストのご経歴

朝妻 弥生様

(サステイナリティクス クライアントリレーションズ/ディレクター)

ジャーディン・フレミング証券東京支店(現JP モルガン証券)を経て、野村證券シンガポール/香港/ロンドン現地法人でアジア株式リサーチセールスとして、グローバルの機関投資家向けのアジア株式業務に長期に渡り携わる。サステイナリティクス・ジャパンには2019年に入社。クライアントリレーションズとして、ESGリサーチの機関投資家向けセールスを担当。現在、日本国内外の多くの投資家や金融機関のESG投資のサポートに従事。

兼松 浩介様

(サステイナリティクス  コーポレート ソリューションズ/アソシエイト・ディレクター)

2021年に入社し、コーポレートソリューションズ・チームの日本リーダーを務める。サステイナリティクス入社以前は、ボストン コンサルティング グループ及びA.T. カーニーにて金融・保険業界を中心に全社改革、新規事業、営業・マーケティング、サステナビリティ戦略などの多数プロジェクトを遂行。また、ワシントンD.C.の世界銀行本部及び気候投資基金(Climate Investment Funds)にて、途上国・新興国向けのマクロ経済分析・政策提言や気候変動対策への資金供与(グリーンボンドなど)に関する業務に従事。東京大学教養学部(国際関係論)卒業、コロンビア大学修士(公共経営)。

ーどんなサービス・プロダクトを提供されていらっしゃいますか。

朝妻様)

クライアントリレーションズという部門で、機関投資家に向けたESGリスクに関する様々なソリューション提供しています。一番の主力商品は「ESGリスクレーティング」で、企業に対しESGのリスク評価を行うプロダクトです。投資家が投資先の企業の財務リスクを理解できるよう設計されています。ほかにも国のリスクや、企業のカーボン削減への取り組みを評価するプロダクト、また、企業が人権に反していないか、武器製造に関わっていないかなどのスクリーニング評価をするプロダクト、企業の不祥事を追うプロダクトもあります。他には、投資家が投資先の企業とのエンゲージメントをお手伝いをするスチュワードシップサービスも行っています。

兼松様)

私は、事業会社や金融機関をお客様とするコーポレートソリューションズという部署で、企業がグリーンボンドや社会貢献に寄与することを目的としたソーシャルボンドを発行するときに、そのボンドが「国際的な基準や市場慣行を満たしている形で発行されるボンドである」という意見を示す「セカンドパーティーオピニオン」=SPOを提供しています。企業がサステナビリティに寄与する事業活動に使うお金を調達したいときに、国際的に見て投資家の期待する効果につながるプロジェクトであるか否かをチェックし、オピニオンを書く仕事です。対象となる金融商品はボンドが中心ですが、ローンもあります。たとえば最近ですと、ESGやサステナビリティに関する野心的な目標の達成に応じて、企業が通常よりも有利な金利で資金調達できる「サスティナビリティ・リンク・ローン」という商品も出てきており、そのローンが環境や社会にとって良い形で使われる得るのかについてのオピニオンも書いています。

ーSPOとはどんなものでしょうか。

兼松様)

サステイナリティクスのSPOは、資金調達者である企業が策定するフレームワーク、特にボンドもしくはローンからの調達資金の活用や管理方法が広く一般に認められた市場原則(グリーンボンド原則やグリーンローン原則など)及び市場慣行や投資家からの期待に沿っていることを確認し、投資家に対して示す意見書です。あくまでも中立的な立場でのオピニオンであり、助言やコンサルティングではありません。あくまで、企業ではなく投資家に対し、我々の意見と正しい情報を提供することが目的です。弊社ではインベストサイドもコーポレートサイドも投資家との関係を最も重視しており、その関係の中でサステナブル・ファイナンスの市場を創ることを目指しています。

ー2016年に日本法人を立ち上げられた経緯はなんでしょうか。

朝妻様)

世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が各投資機関にESG投資を義務付け始めたことにより、投資家がESGの概念を投資に組み入れ始めたのがその時期で、そこからESGのブームが起き始め、弊社のような機関も投資家から頼られるようになり日本に拠点を構えました。

ー最近のセールスの伸びはどのくらいですか。

朝妻様)

伸びは著しく、私が入社した2019年からの2年間でも、新規セールスが約3倍になっています。投資機関も、日系で20社ほどだったのが、30社以上になっており、それがここ1年半くらいで起きています。

会社自体も、人員が私の入社時点の650人から1200人以上に増えており、2年間で2倍くらいになっています。

兼松様)

市場が伸びているので、早急に優秀な人に入ってもらうという「供給サイド」を埋めていく必要があります。

ーグローバルの市場と比べると日本はどうでしょうか。

朝妻様)

ESGの考え方自体が欧州から来ているので、欧州発で色々なものが始まり日本がキャッチアップしている状況ですが、そのラグがどんどん埋まっている気がします。必ず欧州で起こったものと同じ波が日本にも来るので、アンテナの高いお客様は欧州を常に見ています。

兼松様)

弊社のビジネスの拡大をお伝えする前提として、市場自体のトレンドを共有させてください。グリーンボンド発行のグローバル市場の規模は、対前年比60〜80%の伸びと言われています。日本も同じくらいの伸びです。菅前首相がカーボンニュートラル実現を表明して以来、グリーンボンドを必要とする事業がどんどん立ち上がっています。たとえば2021年で発行額が一番大きかったNTT様のグリーンボンドですが、本業である通信事業のエネルギー効率を高める技術を開発・普及を中心とした資金使途で総計約5000億円規模の調達をされました。本案件のSPOも弊社が作成・提供させて頂いております。また、債券発行市場全体に占めるグリーンボンドの割合は、まだ10%以下ですが、今後更に増える余地があると考えられ、企業の活動自体も環境保護や気候変動対策につながるビジネスへの変革や新規事業立ち上げのために行う債券調達はグリーンボンドでおこなう、という形になるのがより普通になるのではないでしょうか。理論上、債券発行体がグリーンボンドを“Self-label”の形で発行することもできますが、投資家が安心してグリーンボンドを購入するためにはセカンドパーティーなど外部評価が欠かせませんので、グリーンボンドの発行と同時にSPOが必要とされる状況は続いていくと思います。サステナブル・ファイナンスとしては、グリーン、ソーシャルに加えて、まだ黎明期ではありますが日本政府が推進をしているトランジションファイナンスも広がってくると思われますので、我々のサービスについて引き続き大きな成長・拡大を見込んでいます。

ー御社の活動の実績はどういったものがありますか。

朝妻様)

弊社はESG評価機関として、約30年の実績があります。私たちはESGのリーダーであるという自負を持っており、業界内でもそういった評価をされています。サステイナリティクスという名前はブランド力があると思います。世界有数の機関投資家クライアントがいらっしゃり、そうしたお客様のESG投資のお手伝いのため、ESGリサーチやデータを提供し、我々としても持続可能な世界に貢献するというのがミッションです。

兼松様)

ESG評価機関としては30年の歴史があって、投資家やキャピタルマーケット、政府の関係者からの信頼やブランドはすごくあると感じます。グリーンボンドは約10年前に新しく出た金融商品ですが、弊社は2014年にはSPOのビジネスをスタートさせており、ESG債が生まれたのとほぼ同じタイミングで参入しています。7年間事業を行い、既にグローバルの累積で800件のSPOを提供し、トップシェアを維持しています。世界の様々な国の各産業のトップ企業のESG債発行のお手伝いさせていただいていることは社員として大変誇らしく思います。創業者であるMichael Jantziは30年前にESGにフォーカスした会社を立ち上げて、非常に先見性があるなと思います。

朝妻様)

世界に17のオフィスがありますが、社員は常に増えています。採用ペースが大変速く、世界的に人材を見つけるのがチャレンジングな状況です。ESGは新しいコンセプトがどんどん登場していて、プロダクトの数もどんどん増えています。リサーチの質を保つためにも人員を増強していく必要があると感じます。

ーどんな人材が御社で活躍できそうですか。

兼松様)

当社は、より公正で公平な世界経済に貢献するという同じ情熱を持った人々のコミュニティであることを誇りにしています。そのため、より持続可能な未来に向けた私たちの価値観やビジョンを共有できる方を常に求めています。さらに、知的好奇心が旺盛で、対人関係や協調性に優れた人材を求めています。また、ESG分野の急速な成長と当社の急成長を踏まえた時に、適応力の高いチームメンバーも求めています。
入社後のトレーニングプログラムや、OJTもありますが、変化の激しい市場で展開している会社なので、そういう変化を楽しめる人がいいと思います。新たなソリューション、プロダクトも日々出てきますので、学んでいく意欲があるかどうか。これからグリーン、ソーシャルという基準も不変なものではなく、投資家が求めることや企業が新たに生み出す事業の内容に応じて変わってくるので当社が参照する自社独自の基準(タクソノミー)も進化していきます。そうした変化についていき、プロダクト・サービスをデリバリーできる人材はウェルカムです。コンサル、金融業界に限らず様々なバックグラウンドをお持ちで、ESGを積極的に学んでいく意欲を持って仕事を進めていくエネルギッシュな方が向いていると思います。

朝妻様)

適応力が高く、変化に耐えられるが重要です。ESGに興味がないと辛いでしょう。逆にESGに興味があれば、とことん学べるので非常に面白いです。自分で考えて行動できる、むしろ無いものを作り上げるくらいの気概を持ったアントレプレナーシップがある人材は活躍できると思います。

兼松様)

当社は30年以上の歴史のあるエスタブリッシュな企業という側面もありますが、ベンチャー企業で事業を作っているようなスピード感があります。私自身も、伸びていく市場に自ら関与してその成長に貢献しているということにやりがいを感じているので、近いマインドセットの方々には楽しめる環境ではないかと思います。また、国内市場も伸びていますが、海外の各地域でも市場は伸びていますし、新たな市場のルール形成の動きもありますので、その流れにも関わっていきたいというグローバルマインドのある人なら、なお面白いと思います。“この大学のこの学位が必要”という類いのビジネスでもないので、ESGやサステナブル・ファイナンスに対する思い入れのある人が第一人者になることを目指すような場だと感じています。

ー語学力は重要ですか。

兼松様)

私は日常的にオーストラリア人やカナダ人などの上司と作戦会議をしたりプロジェクトの進捗をチェックしてもらったりするので、スムーズにやり取りをするなら、英語がしっかりできることが望ましいです。

ただ、日本チームのお客様は日本企業が中心なので、英語だけでなく、大手の機関投資家や、大企業を相手に仕事を行う最低限のビジネスコミュニケーションが必要だと思います。

ーお二人はどんなキャリアを歩んでこられましたか。

朝妻様)

私はずっと証券会社でアジア株式を20年以上取り扱ってきました。シンガポール、香港、ロンドンで営業をやり、2年半前に会社を辞めました。ここから先に投資に関わるために何を仕事にしようか考え、ESGを学ぶべきだと思いました。ESGについて学べる場所は限られており、親しかった機関投資家のお客様にご紹介いただいて、ご縁があって入社しました。機関投資家向けの営業に関わっているという点では首尾一貫したキャリアです。自分としてもESGに関わるお仕事であれば社会に貢献できると思いました。

兼松様)

これまではコンサル、国際機関で働いてきました。振り返ってみると、結果として、比較的長らくサステナビリティやESGの分野に携わってきましたが、新卒で就職活動を行っていた2000年前後には、今やっているような仕事はありませんでした。そういう意味で、今20〜30代の人は若い頃からサステナビリティをお仕事にできて羨ましいと思います。

私が今の仕事を志向する原点について、少し長くなりますが経緯をご説明します。25年前のことですが、大学の900番教室の前で何気ない会話をしている中で経済学部の友人が「今後は環境影響への取り組みが評価されて企業の株が売買される世界になる」という話をしていたのを今でも鮮明に覚えています。その時、環境とビジネスがつながるという面白い世界観だなと思いました。また、同じ年にアジア通貨危機があってアジアの発展途上国で社会的混乱が起き、「必要なところに必要なお金が回らなくなることはすごく不幸なことだ」と強く感じ、将来起こる金融危機を防ぐような仕事に関わりたいと思っていました。このような思いを持ちつつ、2015年前後に世界銀行で気候変動関連の仕事をしていた時に、グリーンボンドという金融商品に触れ、民間の資金や企業の事業活動を活用して、気候変動という地球規模の課題解決に貢献すること、本来必要なところに必要なお金が回る仕組みを作ることは、25年前に抱いた思いを実現する仕事になり得ると感じました。それらの体験が、今の仕事に携わることになった主な2つが原点です。

一方で、最初に申した通り、20年の社会人経験の中で常時サステナビリティやESGに関われたわけでなく、今持っているようなキャリアの方向性を得ることに至るまでは、様々もがいていた気がします。昔から各勤め先で、少しでもサステナビリティ、ESG、気候変動などに関わることは僅かな機会でもやりたいという思いを持ち、その時、その持ち場で最大限ベストを尽くしていたことで、今やっと“connect the dots”の状態になっているのかなと思います。

新卒で勤務した外資系コンサルティングファームのA.T. カーニーでは、社会人としての基礎体力を身に付けるような期間だったと思いますが、同時にサステナビリティ経営というテーマに初めて触れる機会を得た場でもあったと思います。2007年頃に当時のグローバルCEOが「サステナビリティ戦略」というテーマで講演などをしているのを見て、面白いと思いました。彼はアメリカ民主党に近く、若き日にJoe Bidenのアドバイザーもしていたような人なので、特にこのようなトレンドへの感度が高かったのだと想像します。私は、当時の日本代表に「いくつかのクライアントにサステナビリティ戦略のプロジェクトを提案したい」と訴え、サポートを頂きました。しかし、当時のビジネスコミュニティでは、まだ機が熟しておらず、芳しい反応は得られませんでした。

その後世界金融危機が起こり、それまでの強欲な資本主義ではない新しい金融の仕組みができるのではないかと仮説を持ち、そういうことが決められるのはワシントンDCだろうと思い世界銀行に転職しました。世銀内では様々な部署で働いたのですが、2015年より気候投資基金(Climate Investment Funds)に勤務することになり、そこでグリーンボンドを発行するスキームを考えるファイナンシャルモデリングを行う仕事をやっていました。2015-16年にパリ協定が締結及び批准されという追い風の中、世界銀行の気候変動グループも我が世の春を謳歌するような雰囲気で、携わっていた総額5,000億円規模のグリーンボンドの案件もスムーズに前に進む感じでした。しかし、いざプロジェクトのGOサインを出す理事会の1か月前に関係国での政治状況が大きく変化したことで、一気に風向きが変わりプロジェクトが止まってしまいました。本案件は、2016年から5年後のCOP26でやっと案件発表に至りました。私は、当時気候投資基金内でこの案件を前に進めるよう様々動いていましたが2018年頃にはかなり難しいと悟り、40代に差し掛かるキャリアをより前向きに築ける場を模索し始めました。

世銀の気候投資基金で気候変動の世界の”天国と地獄”を味わった経験から、「時の政権・政治に左右されることなく、民間主導で気候変動への取り組みが進められることが重要」という思いがあり、そのような影響力を発揮できる会社として、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に転職することにしました。BCGではソーシャル・インパクトチームの日本での立ち上げに関わったり、金融機関のお客様を相手にサステナビリティ経営やカーボンニュートラルに関わるプロジェクトを行ったりして、充実した時期を過ごしていました。一方で、気候投資基金でグリーンボンドを発行まで持っていけないかったことが自身のキャリア上の”unfinished business”としてひっかかっていたのと、広い気候変動という分野の中でもファイナンスを軸にした経験を積みたいという思いに駆られ、国内外でサステナブル・ファイナンス市場の急成長が予見された2021年初頭にサステイナリティクスに転職することを決めました。投資家や証券会社、事業会社の間に立つ中立的な評価会社でグローバルナンバーワンの会社に行くことは自分のキャリアに大きくプラスになると思うと同時に、年齢的にも市場の成長フェーズ的にも、これを逃したら次のタイミングないという気持ちで、思い切ってリスクテイクした感じだったと当時の心境を回想しています。

ー当初から環境ビジネスでご経験を長らく積んでこられたんですね。

兼松様)繰り返しになりますが、結果としてはそうですね。せっかくキャリアの様々な経験が繋がってきたので、これから新しい金融のメインストリームになる可能性を秘めたサステナブル・ファイナンスを健全な形で普及させたいと思っています。この数年の間に民間主導の自律的な市場のメカニズムとして確立されていくと、どんなに政治対立があったとしても、サステナブル・ファイナンスが回っていく環境を作るのに貢献できたらと思います。気候変動の世界は、パリ協定締結・批准当時の盛り上がりから様々アップダウンがありましたが、サステナブル・ファイナンスに関わる者として今がまさに勝負どころだという思いでいます。いずれにしても、俯瞰的に見ると、気候変動等の地球規模の課題に対して公的な財政施策ではは限界があり、機関投資家等、民間のお金がサステナビリティ領域に回っていくことの必要性は変わりません。主要先進国が財政赤字である一方、機関投資家のアセット規模はどんどん大きくなっている状況がそれを示しています。いかにキャピタルマーケット、機関投資家に貢献してもらうか、その橋渡しが我々の仕事だと考えています

ー御社を一言で言うならどんな会社でしょうか。

兼松様)

ビジネスの大学・学位がMBAなら、当社はESGの“学位”が取れる大学のような側面があると思っています。実際の大学でESGを包括的に学べるところはハーバードにも東大にも今のところありません。30年の蓄積があって、グローバルのマーケットリーダーであるサステイナリティクスでは、ビジネスを回していくことと同時に、ESGやサステナブル・ファイナンスを体系的に学べる環境でもあるため、3〜5年働けば、その経験・実績が一種のMBAのようになるのではないかと思っています。ESGのMBAを取るような感じです。

朝妻様)

入社する時フランス人の上司に、ESGの勉強ができるかどうかで会社を決めたいと相談したら「サステイナリティクスでは死ぬほど勉強できるよ」と言われました。逆に勉強しないとキャッチアップできない世界です。

兼松様)

同僚との会話一つとってもESG分野の最先端の知識を学び吸収できていると感じます。ヨーロッパとアジアと北米の同僚と各国政府のタクソノミー策定の動向について意見交換しました。それらの動きを踏まえつつ、当社のタクソノミーは現在どうなっていて、今後どう変わっていくのか思考を巡らせるのも知的な刺激があります。そういう日々の仕事を通して、ESGやサステナブル・ファイナンス分野での第一人者になれると最高ですね。

ー次のキャリアの展開はどう考えていますか。

兼松様)最大かつ先進的なマーケットを視野に入れて、次はヨーロッパの本社に行きたいと思っています。

朝妻様)サステイナリティクスは自由で、やる気があって行きたい国があればどこでも働けるチャンスはあります。アジアの市場も急速に成長をしており、日本はアジアの一部でしかありませんので、私も将来的にはAPAC市場で再び働きたいです。

ー業務をやってこられる中でどのような時にやりがいを感じますか。

朝妻様)機関投資家と20年以上話す中で、以前は機関投資家の考えていることはいかに株式市場でお金を儲けるかということだと思っていましたが、実はそうではなく、彼らもESG投資を通して世界にポジティブなインパクトを与えようとしている、そうした側面が見えたことは新たな発見でした。投資はただ儲けるだけではなく社会にインパクトを与えることだということが実感できる時が面白いです。

前は私も株式市場においては利益しか見ていませんでした。今は機関投資家もどんどんマインドセットが変わり、以前であればESG投資しても儲からないと言っていたのが、そうは言ってられない時代になってしまいました。ポジティブなインパクトを世界に与えていきたいという思いが皆にあり、さらに利益が出たら素晴らしいと、両面で見えるようになったというのが私にとってもプラスです。

兼松様)

サステナブル・ファイナンスの市場はグローバルでも日本でも盛り上がってきており我々の主力商品であるSPOの提供を通して、市場を作るという点にやりがいがあります。「この事業は、市場が求めるこの基準・閾値を満たしているのでグリーンだ」という事例を通して、だんだんスタンダートが世の中に伝わる形で健全な市場の形成に貢献できていることを実感します。

今後進めたいと考えているのは、政府の関係者との対話を増やしていくことです。サステナブル・ファイナンスには、環境省、金融庁、経産省、また日本銀行も関係していますので、我々のグローバルや日本国内での長年の知見・経験を還元する形で、対話を通して一緒に健全な形の市場を作っていけたらと思っています。

ーグリーンウォッシュについて問題視する声もありますが、御社の存在意義はどこにありますでしょうか。

兼松様)

「健全な形の市場の形成」という言葉を何度も使わせて頂きましたが、まさにグリーンウォッシュは防ぎたい問題です。投資家に信頼できる情報を提供し続けるところが我々の存在価値です。コーポレートソリューションズのビジネスでいえば、グリーン適格ととは言えないボンドに我々は意見書を付けられませんので、この段階で一定のグリーンウォッシュの可能性を排除していけます。また、我々がグリーン適格であるとその時点で認めれば、投資家も安心してボンドを購入し、企業側も事業を進めることができます。また、アニュアルレビューというサービスを提供することで、事前に約束したグリーン適格な事業と違う事業にお金を回していないことを確認することで、債券発行後もグリーンウォッシュがないことを担保できると考えます。正しいところに正しいお金を回すことが重要なミッションであり、信頼と実績が当社の強みです。

朝妻様)

我々の知見がESGにおけるスタンダードだと思ってくれる投資家は多いです。

兼松様)

この業界に関わっている重要な意思決定者である機関投資家、政府関係者、事業会社、証券会社の方々からもサステイナリティクスがこの分野のフロントランナーと認識していただいているので、ビジネスがやりやすいと感じます。同時にその信頼を維持・発展させていく責務を感じます。

朝妻様)

ESGという世界では我々はリーダー的な存在です。それを味わいたい人、やる気の若者に入ってきてほしいと思います。

兼松様)

サステイナリティクスのブランドに胡座をかくことなく、それをテコにして、ビジネスを作っていきたい人や、政府と政策対話をしたり、機関投資家や事業会社と信頼関係をつくりビジネスを大きくして、新サービスを提供していこうという気概のある人と一緒に働きたいです。

ーお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。

Sustainalytics Japan Inc.関連求人情報

今回特集しましたSustainalytics Japan Inc.様の求人をご紹介します。
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■求人:
外資系ESG 評価機関でのクライアントサービス Associate/Senior Associate

■年収イメージ:
経験と能力により考慮します。(年収イメージ600万円〜800万円)

■業務内容:
Working collaboratively to grow and strengthen client relationships across a portfolio of Japanese and global institutional and retail investor clients. Ensuring that our data and research content and delivery meets clients’ needs. Providing effective customer support, responding to queries and seeking feedback. Guiding clients through complex concepts in a succinct and clear way. Supporting clients’ ESG strategy development by providing advice and guidance on market best practices; Developing detailed understanding of Sustainalytics research and services, our clients and the financial and ESG market. Staying on top of client and market developments, identify and share opportunities with internal teams. Collaborating with colleagues across different teams including sales to ensure opportunities are managed efficiently effectively, and research and data delivery to enhance the client experience.

必要スキル:
QUALIFICATIONS
The ideal candidate needs to be a real team player with strong client service skills and a good understanding of the investor landscape and responsible investment trends. The ideal candidate will have the following qualifications:
2-5 years in a client relationship role in in the investment industry.
Demonstrated knowledge and understanding of financial services and ESG.
Strong client servicing and commercial skills.
Clear communication and presentation skills.
Ability to take the initiative and think creatively and proactively.
Experience and an aptitude in leading projects from start to finish with little oversight.
Ability to understand and present complex products.
Proficiency in English and Japanese.
Commitment to sustainability and alignment with the companys’ mission, vision and values.

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2021年度、日本全国にSDGsの活動を浸透させるべく、国の中小企業の振興政策実行の中核を担う(独)中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)がついに動き出した。国内中小企業・小規模事業者に対し、SDGsの基本理解の浸透からSDGsに則した経営計画の策定支援、実行サポートまで、SDGsを基盤にした経営が当たり前な社会をつくるべく、これまで以上の経営支援体制を構築した。その全貌を中小機構理事の高橋浩樹氏に伺った。           

【会社概要】
・独立行政法人中小企業基盤整備機構
・東京都港区虎ノ門3-5-1虎ノ門37森ビル
・設立2004年7月
・資本金:1兆1154億393万469円(2021年11月26日現在)
・人数:常勤職員773人(2021年4月現在)

中小企業基盤整備機構は、事業の自律的発展や継続を目指す中小・小規模事業者・ベンチャー企業のイノベーションや地域経済の活性化を促進し、我が国の経済の発展に貢献することを目的とする政策実施機関。経営環境の変化に対応し持続的成長を目指す中小企業等の経営課題の解決に向け、直接的な伴走型支援、人材の育成、共済制度の運営、資金面での各種支援やビジネスチャンスの提供を行うとともに、関係する中小企業支援機関の支援力の向上に協力する。

ゲスト

高橋 浩樹 様
独立行政法人中小企業基盤整備機構
理事

【経歴】
昭和58年4月 地域振興整備公団入団
平成31年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構北陸本部長
令和2年4月 独立行政法人中小企業基盤整備機構事業推進役[兼]北陸本部長
令和3年1月 独立行政法人中小企業基盤整備機構理事

中小機構のSDGs支援始動

中小機構は、2021年より本格的なSDGs支援活動を開始した。

まずは2021年3月末に「中小企業SDGs応援宣言」を行い、3つの柱を宣言した。

1.中小企業・小規模事業者へのSDGsの普及・啓発に取り組みます。

2.SDGsの考えに沿った中小企業・小規模事業者の活動を支援します。

3.中小機構自らもSDGsの考え方に沿った組織運営を行います。

この宣言に基づきSDGsの相談窓口を開設。東京・大阪の2か所から始まり、自治体や商工会、商工会議所といった地域の支援機関とも連携し現在では全国20箇所で相談窓口を拡充。さらにオンラインでの相談も可能となり(EーSODAN:https://bizsapo.smrj.go.jp/)いつでもどこでもSDGsに係る経営相談を受けることが可能な体制を整えた。

また、特に関心の高いカーボンニュートラルの対応に関しては別途東京で専門窓口を設置。加えて中小企業・小規模事業者が自らの取り組みを確認できる「カーボンニュートラルチェックシート」(https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/carbonneutral/checksheet.html)を公開。

個別の相談対応だけでなく、多くの方に周知を行うべく、SDGsに係るセミナーも積極的に開催。これまでに全国で20回以上実施した。また事業者が取り組んだSDGsの事例をまとめた冊子も作成、取り組み方に悩む事業者にとって指南書となる一冊が出来上がった。          

相談対応やセミナーだけでなく、SDGsを意識したビジネスチャンスの創出にも取り組んでいる。中小機構の運営するビジネスマッチングサイトJ-GoodTech(https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/)を活用し、カーボンニュートラル、脱炭素をテーマとしたオンライン商談会を開設し160件のオンライン商談が実現した。

これらの取り組みは中小機構が運営する経営支援情報サイトJ-NET21の特設ページ(https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/index.html)にて日々更新している。

SDGsの相談傾向

相談企業は業種業態、企業規模を問わず様々で、2021年4月から11月までに700件の相談、月に約100件の相談が寄せられている。

相談内容は当初、そもそもSDGsとは?といった基本的な情報収集が多かったが、徐々にSDGsを経営計画に取り入れていきたいという具体的な相談も直近では多く寄せられるようになった。

SDGsの取り組みを行うことはコストがかかると思われがちだが、これまで行ってきた企業活動を振り返った時に、実はSDGsの目標に合致する活動をすでに行っていたことに気づいてもらうことも、SDGsを理解していただく第一歩だと思う。

また今後は、SDGsを理解していただくための啓発活動は継続しつつ、中小機構の強みである企業に直接入り込んだハンズオン支援により、SDGsを経営の根幹に据えた経営計画の策定支援や計画に基づいた新商品・新サービスの開発といった実行面の支援を同時に推し進めていきたい。

中小機構自身のSDGsへの取り組み

企業支援を行う側としては、自らもSDGsの取り組みを更に強固なものにしていく必要があると感じている。機構内でSDGsへの関心が高い人材を「SDGsパートナー」に立候補してもらい、現在約130名のSDGsパートナーが中心となって、セミナー講師としての登壇や、経営支援の現場への積極的な参画を行うなど、日々研鑽を積んでいる。

また、2019年より開始した中小企業応援士を通じた取り組みもその一つである。「中小企業応援士」とは、顕著な功労があり、地域への影響力もある経営者や中小企業支援者に対して委嘱している制度で、当機構とともに中小企業の成長、発展を支援していただくことが主な役割である。現在約200名登録され、定期的に意見交換の場も設けているが、その中でもやはりSDGsに係る関心は尽きない。このため、応援士自身のSDGsに係る取り組みの共有や応援士を通じた機構のSDGs支援施策の情報提供も進めていきたい。こうした取り組みを足掛かりとし、更にSDGs経営の機運を醸成していく。

SDGsが当たり前の経営へ

SDGsの取り組みは企業規模に関わらずどの企業にとっても無視できない状況になってきている。サプライチェーンを維持するために取引先企業の要請から仕方なく取り組むとか、自治体のSDGs認証等を取得するために取り組むというようなものだけでなく、まさに企業活動を行う基本姿勢として自発的に取り組むものであるべきである。

SDGsに取り組むことが当たり前のビジネス環境をつくることこそ、中小機構に課せられた使命である。

国の中小企業施策を担う中小機構がSDGsの実現に向けて、様々な施策を講じていることに驚くとともに、他の施策も含めてまだまだ活用の余地があると思われる。こうした施策を日本全国の9割以上を占める中小企業が十分に活用できていないのは大きな機会損失ではないだろうか。SDGsだけでなく、専門家によるハンズオンでの経営支援や各種補助金制度も豊富に用意されており、中小機構からますます目が離せない。

【JNET21  SDGs特設サイト】
https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/index.html

J-Net21 経営課題を解決する羅針盤

【中小機構オンライン相談窓口:EーSODAN】
https://bizsapo.smrj.go.jp/

E-SODAN ~いつでも経営相談室~

【カーボンニュートラルチェックシート】
https://j-net21.smrj.go.jp/special/chusho_sdgs/carbonneutral/checksheet.html

【中小機構の運営するビジネスマッチングサイトJ-GoodTech】
https://jgoodtech.smrj.go.jp/pub/ja/

J-GoodTech ジェグテック

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ゲストのご経歴

野田 敦 様
執行役、COO
ESG & Climate Office(ECO) 統括
パートナー

サイモン メイザー 様(Simon J.Mather)
バリュエーション・モデリング・エコノミクスサービス統括
パートナー

長山 聡祐 様
産業機械・建設/エネルギー統括
ESG & Climate Office(ECO)
パートナー

山西 顕裕 様
リストラクチャリングサービス
パートナー

手計 徹也 様
インフラ・公共セクターアドバイザリー統括
マネージングディレクター

-御社はM&Aなどのフイナンシャルサービスを展開されております。一見、ESGとは無関係のようにも見えますが、どういったところに接点がありますでしょうか。

野田
我々のメイン業務の大きな2本柱は、M&Aとクライシスマネジメントです。

どちらにも共通しているのは、企業の買収、再編、危機対応といった、企業の存続や将来に大きな影響を及ぼすイベント、言い換えれば「変化点」にある企業の意思決定で、我々のファイナンスやビジネスの専門性、知見を持って支援するところに弊社の強みがあります。

その企業の変化点において、今後、最も重要な意思決定の判断材料の一つになってくるのがESGであり気候変動だと言えます。これから加速度的に厳しくなっていくであろう規制や、物理的な環境変化、それに伴い変化する様々なステイクホルダーからの期待に対し、企業がスピード感を持ってビジネスモデルを変革していくためには、M&Aや再編といった手段がますます重要になってきます。

その際に、ESGや気候変動に関するリスクを定量的に評価し、意思決定に繋げていくことが企業に求められていくと考えており、今後まさにフォーカスしていく部分になっていきます。

サイモン
私の領域であるバリュエーション・モデリング・エコノミクスサービスにおいては、これまでは財務的な情報に基づいた価値評価により意思決定の支援をしてきましたが、今後も継続可能なデューデリジェンスを実現するためには、必ずしも財務的な情報だけではなく、ESGに関する非財務的な情報によりどれだけバリューが生み出されているのかに注目していくことが必要になります。

これらの情報を両立させながら、エコノミクスやファイナンスの知見に基づいてクライアントを支援していくことが重要になってきています。複雑化するクライアントの意思決定に際して、多面的なサービスを展開するためにも、様々なバッググラウンドを持つ人材を集めて、より一層難しいオーダーに対しても支援していければと思います。

-御社でESGに関わる業務を行う魅力はどういったところにありますでしょうか。

野田:

M&Aの領域では規模・サービスの幅ともに業界トップクラスにいると自負しています。常にリスクを恐れずに我々自身も積極的にM&Aを実施し、サービスを広げてきました。一見するとM&Aとは結びついていなさそうですが、足元ではブランドコンサルティングやシナリオプランニングもやっています。

M&Aであれば、買収前の戦略策定から買収後のPMI、つまりエンド・トゥ・エンドでサポートするために既存のサービスに新しいサービスを取り入れ、掛け算で新しいソリューションを導き出しています。

ESG関連の業務は、まだまだ進化していく領域だと思っています。われわれの既にもっている幅広い業務領域をレバレッジしながら、ESGの領域を組み合わせ、業界をリードできるような新サービスを生み出していきます。そのための環境と企業文化があるのが、我々の組織で働くことの魅力です。

-御社の企業文化とはどういったものでしょうか。

野田:
失敗やチャレンジを恐れない文化です。失敗を責めるよりもチャレンジするほうが認められる。新しいことを広げていきたいという人にとってはマッチする風土だと思います。

山西:
新しいものを作り上げていくやりがいと同時に、サービスを提供したときにクライアントに与えるインパクトの大きさを感じます。

市場環境がESG、気候変動により大きく変わり、クライアントが今までの戦い方だと生き残っていけない中で、我々が戦い方をアドバイスし、将来の戦略を練り直したり中期経営計画を一緒に作っていく際に、ESGの観点を入れていくということは、クライアントだけではなく社会へのインパクトを与える意味でも重要な仕事だと思います。

ESGに関しては、クライアントの問題意識が高まっており、経営陣と話をしていても、このテーマは非常によく話が出てくるようになりました。我々のサービスを日々進化させていく必要があります。

-ESGの分野において、日本、そして世界に対し、どういったプレゼンスを発揮していこうとお考えでしょうか。

野田:
「日本のビジネスを強く、世界へ。」、という我々のスローガンのもと、様々な企業を支援してきました。

欧米に比べると、そもそも国全体としてもルールメイキングが出遅れているなど、ESGに関する日本の課題は多くありますが、まさにコーポレートスローガンに従って、巻き返しを図り、日本の企業変革を支援していくという点で我々のプレゼンスを発揮していきたいという思いを持っています。

そのためには、デロイト トーマツが持つグローバルネットワークが重要になってきますし、これまで以上に連携していく必要があります。また、アジアパシフィック(APAC)全体でも今は欧米に対して少し遅れをとっていますが、日本がAPACにおいてESG関連サービスや議論をリードできる存在になっていきたい、その先導役になりたいと考えています。

長山:
M&Aの議論の前段階として、企業の多くは、そもそも自分たちの会社はどうESGに対してアプローチしていけばいいのかと逡巡されています。

その解決策の一つとしてM&Aがあり、組織の変化によって解決できる場面は必ずあるはずです。その時に我々がアドバイスできるなら価値あることですし、日本だけでこのビジネスをどうするかという小さい世界の中で議論していては解決の選択肢が狭くなってしまいます。

お客様は、海外でどう活路を見出していくのかというところも求められています。デロイトトーマツのグローバルネットワークを生かしながら、海外も視野に入れたソリューションをご提供できるようになることこそが我々の目指すところです。

-グローバルネットワークが御社の強みですね。

長山:
そうですね、ESG・気候変動の議論は、既にUK、アジアならオーストラリア、シンガポールでも盛んになってきていますし、アメリカも力を入れるようになってきました。そういった各国のリソースに敷居なくアクセスできる環境はすごく重要だと思います。

-ESGを定量的に分析する上での指標はどう作っていかれているのでしょうか。

長山:
ESGにはE(Environment)とS(Social)とG(Governance)の側面がありますが、Gは定量的に分析するのは難しいです。Sについても、たとえば人権問題を数字で示すのは難しく、今のところは定性的な説明がメインとなります。重要なのはEにどれだけアプローチできるかです。

たとえば「株価にどれだけ影響与えるのか」などの視点で定量化ができるでしょうが、過去の経験則から示すことは出来ても、M&Aの場合は「将来のバリュー」をどう数字として表すかが重要になってくるため、サイモンさんが頭を悩ませているところです。

野田:
決まった型がなく、マーケットプラクティスとして誰が見ても納得する指標はまだ確立していません。今後10年をかけて、マーケットの指標として作っていかないといけない。そこでも我々がどこまで先頭に立てるのかという思いがあります。

カーボンプライシングにしても、炭素1単位あたりどれくらいのコストが掛かり、どれくらいプライスが作れるのか、という話を色々な研究機関がしていますが、10〜30年後にどのくらいになっているかは誰もわかりません。お客様が求めているのは、まさにそうした定量的なデータでもあるので、一緒に考えてくれる人がいればぜひ弊社に来てもらいたいと思います。

サイモン:
最近の傾向では短期のインパクトを定量化してほしいというお客様のニーズが高まっています。長期的にも、SやGを良くすることによって株価がどれだけ高まるか、我々で研究をしていますが、その因果関係はまだまだ未知の世界です。

一方、経済的な効果だけではなく、環境に配慮し社会にも貢献する行動によって持続可能なビジネスを行っていくという考え方で意思決定する会社が増えています。従来どおりのファイナンス理論、体系に基づいた分析・評価だけではなく、たとえば投資することで周りのコミュニティや社会へのインパクトがどれだけあるのかなどを、定性だけではなく定量的にお示ししていく必要があります。

この分析手法を考えていくのは、新たな指標を作っていくことであり面白いことだと思います。

-御社のESG関連部署=ESG&Climate Office(ECO)の立ち上げに至った経緯をお聞かせください。

長山:
ECOを立ち上げたのは2021年12月です。実は、すでに2020年秋に事務局を立ち上げており、ESGや気候変動の関連業務を開発、推進していく後押しをする活動はしていたのですが、改めて組織化しました。多くのお客様からご要望を受けたときに、ESGの文脈でのアドバイスや業務をご提供する機会が多くなり、その情報を一つの部署に集約することで社内の連携をしやすくすることが一つの大きな狙いです。

また、ナレッジを集約し、それを皆にきちんと発信し、社内のリテラシーを高めるためでもあり、お客様とお話をする際にデロイト トーマツは総合力でこういう事ができるとご提案できるようにバックアップすることもできます。DTFA内だけではなく、リスクアドバイザリーやコンサルティングともコネクションを密にしています。

組織化したことで、アジアにはDTFAのこうした組織があるということも発信できるようになりますし、日本のM&AにおけるESGに関することはECOに聞けばいいと思ってもらえるようになりたいと考えています。

山西:
きちんとした部署があり、旗が立っているのは意義が大きいと思います。詳しい専門家がいてナレッジがたまっており、色々な情報が聞けるため、お客様の種々のニーズに答えられるようになりました。様々な部門の人間がお客様と対峙する際にESGに関することでサポートがもらえるのは、総合力という意味で強みになっています。

-どんな方がいらっしゃいますか。

長山:
今ECOのコアメンバーは4人で、M&A、キャピタルインベストメント、公共投資をそれぞれ専門に持つメンバーです。うち1人は金融機関出身の方で、マーケット目線でESGを考えています。我々としてもお客様の考え方について、様々な角度から見ることができることが大事です。

M&Aを生業としつつ、どうお客様のニーズをその中に組み込むか。社外でESG関連業務の経験を持った方を入れていくことにより、近視眼的にならずに、多様な見方で考えていきたいと思います。

-昨年からESGに関するお客様からお問い合わせは、どのくらい増えていますか。

野田:
M&AにおけるESG業務ということであれば、2020年は0に近い状態でしたが、2021年に入ってから話が急激に増えてきました。また、お話しいただくお客様の裾野が広がってきていて、以前は誰もが知っているような上場企業のお客様からお話を頂くだけでしたが、21年春以降から、お客様が多様化しています。

同時に、何をやれば良いのかわからないというようなご相談から、こういうことをやるにはどうしたらいいのかというご相談まで、その幅は確実に広がってきています。

山西:
お客様は必ずしも上場企業だけではなくなってきています。今担当している案件の中にも非上場で規模も大きくない会社があります。世の中の目が厳しくなっている中で、どこまでやればいいのかと悩まれています。

また、ESGへの取り組みを対外的にアピールすると、取引先との関係も改善されますし、採用活動における若い世代への波及効果が大きいということも、皆さん認識してきています。情報開示への対応で必要にかられて、というだけではなく、問題意識の裾野が広がっています。

今後注力していきたいと考えている領域はございますか。

サイモン:
バリュエーションにおいては、企業を買収するときの株式価値などを財務情報に基づきアドバイスする一方、ESGの取り組みは非財務情報になります。ESGは評価の際視点が少し異なり、従来どおりのファイナンスの知識にとどまらない専門的な知識が必要となります。

例えば、社会的なインパクトや全体的な経済の波及効果がいくらになりそうかという分析や、今後の気候変動がどこまで経済的な面で影響を及ぼすのかといったシナリオ分析の部分にも注力していきたいです。経済的、学術的に、よりシンプルに数字を導き出していくことが重要になり、実務的な部分でサポートできるかが大事になってくると考えています。

手計:
私の担当は、インフラ関連とキャピタルプロジェクトを支援する部署です。特にESGのEの部分なのですが、世界の潮流に合わせ、政府が洋上風力発電を始めとする再生可能エネルギーの一層の導入を進めていく中で、これに関連するアドバイザリーニーズが大きくなっています。

こうしたプロジェクトは、投資期間が長期にわたりかつ大規模な資金を必要とするので、どこか一社が単独で実行するのは難しく、電力会社、商社、建設会社といった様々なプレイヤーがコンソーシアムを組んで事業を検討し、参画している領域です。

また、水素など技術面のみならず色々なアイディアからイノベーションを生みだすことが必要になるため、コンソーシアムに対してアドバイスを提供する仕事が今後は特に求められていくと考えています。

長山:
M&AトランザクションのなかでもESGデューデリジェンスというところに力をいれていかないといけません。ESGデューデリジェンスは、これまでは基準をクリア出来ているかいないかというチェックがメインでしたが、定量化できる分析を通じて、どれくらい企業に金額的インパクトを与えていくかにまでカバーしていく必要があります。その買収がESGの観点からマーケットにどう見られるかを一緒に考えていくところをやっていきたいです。

そのようなM&Aの実行前のアドバイスもそうですが、M&A実行後についても、今までのPMI同様に、買収した会社のESGレベルをどのように自社グループのESGレベルまで引き上げていくか、といったような視点が今後も重要になっていきます。

また、今、日本ではビジネスを外に売っていく動きも多いので、自社が売ろうとしているビジネスがどれくらいESGに対応できているのかを買う側にアピールしなければならず、そこをきちんと評価、あるいは説明できるのかという点も我々が積極的に支援していきたい領域です。企業の組織的な変化点で必ず出てくるそうした課題に、ESGという複雑な要素が加わった中で、解決の道筋を一緒に考えていきます。

山西:
私はリストラクチャリングとクライシスマネジメントを担当しています。リストラクチャリングとはビジネスモデルの再構築を行うことです。市場環境が変わっていく中でどう生き残っていくか、ESGを絡めた会社の戦略や、中期経営計画を策定する業務です。

もう一つ、これからトライしたいテーマとしては、新規事業があります。子会社でデロイト トーマツ ベンチャーサポートという会社があり、色々なスタートアップとリレーションを作っています。昨今、ESGのスタートアップは多く生まれていて、サプライチェーンのGHG排出量を算定する技術を持っていたり、CCUSなど環境関連の技術やソリューションを持っているスタートアップが多いので、大企業とコラボレーションすることでもっと面白いことが生まれるのではと思っています。

弊社のビジネス領域は多岐にわたります。まさにESGの観点でも、デューデリジェンスにおいてエンド・トゥ・エンド、最初から最後まできちんとカバーしていく必要があります。

野田:
会社全体としては、我々自身のサービスのデジタル化も推進していく必要があります。既存サービスを自動化してクラウドで提供したり、バリューションでも現在サービスの開発を進めています。ESGのテーマがそこに乗る形で、DXとESGという両方のビジネスを他に先行して機会をとっていきたいと思っています。ですから、DXとESGの2本柱で、それぞれのスキルをお持ちの人材を探しています。

-最後のご質問ですが、どういった人材と一緒に働きたいですか。

長山:
総合的には、気候変動の話も20年くらい前からある話で、ずっとやってきた経験のある方々にももちろん来てほしいですが、今後どうマーケットを作っていくのか、我々としてどういったアプローチでお客様のお役に立てるのかを一緒に考えていける人を望んでいます。

知識があることはすごく重要でアドバンテージでもありますが、それだけだと我々のようなFAという業務は難しく、ESGと我々のビジネスをどう繋いでいくのかといった複雑な部分も一緒に考えていける人材を求めています。

山西:
チームワークが根本的なコアの部分です。一人のスーパースターがいればいいという世界ではありません。我々の強みは、いろいろなタレント・専門性を持った人でチームを作り、より大きな経営課題に対峙していくことなので、他者をリスペクトできて、一緒にチームを組めるということが大事です。

スキル面では、私のいるリストラクチャリング部門ですと、企業再生に関わった経験をお持ちでESGにも興味を持っている方はもちろんですが、ESGに関する業務の経験はあるけどリストラクチャリング業務の経験はない、でも興味は持っているといった方も歓迎です。加えて、チャレンジ精神を持っていることが重要ですね。

手計:
インフラ業界では、例えば建設や運営等に関与した発電所が周辺環境や住民生活に悪影響を及ぼしていないかといった、環境や社会に配慮する視点が、ESG投資が話題になる以前からあります。また、先の例に挙げた再生可能エネルギーの分野では、オープンイノベーションやコンソーシアムによって色々な会社・人が連携していく必要があります。

こうした業務に携わる上で、社内外とのチームワークを楽しめることが重要です。専門性の違うプロフェッショナルや会社同士の議論は時にかみ合わないこともありますが、そういった場面でもお互いにリスペクトしあう、協力しあっていけることが素養として大事だと考えています。

サイモン:
我々のいるプロフェッショナルサービスの業界では、プロフェッショナルとして専門性と好奇心を持つことはもちろん大切ですが、お客様を助けることに対し楽しさややりがいを感じられるかどうかがとても大事です。短期的な視点だけではなく、中長期的にもお客様をサポートしたいというマインドがある人に来てほしいですね。

-お話をお聞かせくださり、ありがとうございました。

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