国際通貨基金(IMF)が2021年1月28日に公表した財政報告[1]によると、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大に対応するための世界各国の経済対策は総額14兆ドル(約1,460兆円)に達した。なかでも、日本の支出額は米国に次ぐ2番目の規模にのぼっている。この財政支出が、国民生活や企業経営を維持するために家計・企業向け支援や医療体制の整備などに当てられている。
帝国データバンクの調査[2]によれば、新型コロナに対応するために企業が実施もしくは検討している施策において、「政府系金融機関による特別融資の利用」が40.6%とトップになり、次いで「雇用調整助成金の利用」(39.8%)が続き、企業が政府による各種支援策を積極的に利用する様子がうかがえた。
そこで、気になるのはこの巨額の財政措置の成果である。
雇用情勢についてみると、経済活動が大きく制約されたなか、2020年における平均の就業者数は過去最高だった前年より48万人減にとどまった[3]。この数字について、政府による雇用維持策などの実施との因果関係は明らかではないが、少なからず雇用調整助成金などが貢献しているのではないだろうか。
また、IMFによる試算[4]で、新型コロナ危機に対する支援をより大きく展開できた国では雇用の減少幅が小さかったということが明らかになった。IMFが公表した下図で見て取れるように、財政支援が対GDP比で約40%台と比較的に高い日本、イタリアおよびドイツにおける2020年の失われた雇用は前年比で2%以下にとどまっている。一方で、支出額の規模が世界最大である米国は、対GDP比でみると約20%にとどまり、失われた雇用はより大きかった。
他方、帝国データバンクが公表した企業倒産件数でみると、2020年の企業倒産は新型コロナの感染が拡大する前を大きく下回る7,800件台となり、記録的な低水準で推移した。また、度々話題となっている「休廃業・解散」を行った企業も2年ぶりの減少となった[5]。一方で、米国における2020年の国内破産申請件数[6]は約52万件と、減少傾向であるものの、連邦破産法第11条(民事再生法に相当)の適用申請件数は前年比で2割台の増加となった。それに対し、日本における2020年の民事再生の件数は同2割ほど減少しており、新型コロナによる倒産への影響は比較的少なく済んだのである。
このように政府のさまざまな政策に加えて、民間企業など各主体の賢明な対策により多方面で影響が抑制されている。しかし、新型コロナの感染者増や医療危機は今なお先行き不透明な状況が続いている。政府は引き続き対策を実施するとともに、新たなリスクに注意しながら被害を受けているすべての企業や個人に支援が行き渡るような政策の検討、改善を行うことが肝要である。
[1] IMF, Fiscal Monitor Update, January 2021
[2] 帝国データバンク「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2020年5月)」
[3] 総務省統計局「労働力調査(詳細集計) 2020年(令和2年)平均結果」
[4] IMF見解書・論評「『大分岐』を阻止する 分かれ道に立つ世界経済」(2021年2月24日)
[5] 帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2020年)」
[6] American Bankruptcy Institute, Bankruptcy Statistics
お役立ち動画 世界的に半導体の不足が叫ばれるようになって久しい。半導体の不足による影響はサプライチェーン全体に幅広く及んでいるが、特に影響が大きいのは自動車業界であろう。2021年に入り、トヨタやホンダなどの大手自動車メーカーで、車載用半導体の供給不足により減産の見込みとの報道が相次いでいる。そのようななか、政府は1月26日、台湾当局に対し半導体の増産に向けた働きかけを行っていることを明かした[1]。
また、日本だけでなく海外でも半導体の不足による影響は深刻化している。バイデン米大統領は2月24日、半導体や電池、レアアースなど重要部材のサプライチェーンを見直す大統領令に署名した。アメリカでは、2月中旬にテキサス州を襲った大寒波による停電の影響もあり、半導体だけでなくプラスチック部品の工場の稼働も止まり、サプライチェーンの混乱が深刻化している。ゼネラルモーターズやアメリカに工場を持つ日系の自動車メーカーでは、このような自動車部品の供給不足によって、生産ラインの稼働を停止する工場もみられる[2]。
半導体の供給不足の背景には、米中の対立が根本にある。昨今の半導体の生産は、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)といった自社で半導体の開発や設計は行わず他社で開発・設計した半導体の製造を請け負う、いわゆる「ファウンドリ」と呼ばれるメーカーのシェアが高い。
2020年12月18日、米国商務省産業安全保障局は、中国の半導体ファウンドリ最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)など77の外国事業者を輸出管理規則に基づくエンティティー・リスト(EL)に追加したと発表した[3]。ELに追加されたことで、SMICへの半導体製造装置などの米国製品の輸出は原則不許可となった。こうした要因も相まって半導体生産がTSMCへ集中した結果、供給がひっ迫することになったのである。
このようななか、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月19日に発生した火災の影響は、半導体の不足が続く現状をより一層深刻化させると懸念される。
帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020年)」[4]では、BCPを「策定している」「現在、策定中」「策定を検討している」企業において、事業が中断するリスクに備えてどのようなことを実施・検討しているかを尋ねている。『製造』では、「調達先・仕入先の分散」(50.3%)や「代替生産先・仕入先・業務委託先・販売場所の確保」(32.4%)といった、サプライチェーンの再編に関連した項目が、他の業界と比べて高くなっていた。しかし、半導体のように特定の企業の市場集中度が高い部品については、「調達先・仕入先の分散」や「代替生産先・仕入先・業務委託先・販売場所の確保」は容易ではない。
今後のサプライチェーン全体を見通すうえでは半導体だけでなく、原油や鉄スクラップなどの原材料価格の高騰、円安ドル高傾向がみられる為替レートの状況も注視しなくてはならないだろう。また、スエズ運河でのコンテナ船座礁の影響が懸念されるなか、海上コンテナの不足および輸送費の高騰も依然として続いており、その動向にも目を光らせる必要があろう。
[1] 梶山経済産業大臣の閣議後記者会見の概要(1月26日) (https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2020/20210126001.html )
[2] JETRO ビジネス短信 「北米での自動車生産が相次ぎ停止、半導体不足や寒波が影響(米国、カナダ)」
(https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/03/bc2b512f5f5e2025.html )
[3] JETRO ビジネス短信 「米商務省、中国半導体最大手SMICなど77の外国事業体を輸出管理対象に追加(米国、中国)」 (https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/12/3b5cf8cc5df25f3d.html )
[4] 帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」(2020年6月11日発表) (https://www.tdb-di.com/special-planning-survey/sp20200611.php )
お役立ち動画 「サステナブル」(直訳:持続可能)という言葉を目にする機会が増えた。
昨今取り組みが急増しているSDGs(持続可能な開発目標)は地球環境を破壊せずに誰一人取り残さず未来まで生活をし続けていける社会、いわゆる「サステナブルな社会」を実現させるためのツールである。
サステナブルな社会以外にも、環境負荷を減らしながら食品を生産、加工、流通する「サステナブルフード」など、あらゆる分野において持続可能性を追求する動きが広まっている。
旅行分野も例外ではない。旅行先の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光である「サステナブルツーリズム」(持続可能な観光)が近年注目されている。サステナブルツーリズムの例として、地域の伝統文化の維持・向上につながる伝統文化体験や地域の雇用につながる体験ツアー、地域の環境保護を誓った旅行者のみ入国が許される仕組みなどがあげられる。
そこで、日本におけるサステナブルツーリズムの動きはどの程度あるのだろうか?
国際的な市場調査会社ユーロモニターインターナショナルが2021年3月に発表した「持続可能な観光を推進する国」ランキング[1]で、日本は世界99カ国中53位にとどまっている。とりわけアジア各国のランキングが低く、アジア・太平洋地域のなかではラオス(51位)に続き、日本は2位であったが、G7のなかでは最下位である。他方、1位はスウェーデンで、フィンランドやオーストラリアが続き、欧州の国が上位を占めた。同社によると、特に北欧諸国の旅行業者の65%は既にサステナビリティ戦略を実行しており、世界全体(50%)を大きく上回っている。
同調査は、「環境の持続可能性」「社会の持続可能性」「経済の持続可能性」など7項目を測定して評価を行っている。日本は2020年において、緊急事態宣言が解除された後、国内旅行者による宿泊施設などへの支出の増加が寄与し、「経済の持続可能性」は99カ国中20位となり、同項目において世界で最も評価を上げた国とされた。他方、「環境の持続可能性」の順位は65位にとどまっている。実際、ブッキング・ドットコムが実施した2019年の「サステイナブル・トラベル」に関する調査[2]結果によると、「よりサステナブルな旅行を行う方法がわからない」と回答した世界の旅行者の割合は37%であるのに対し、日本人旅行者における割合は49%と比較的高い。ほかにも「宿がエコに配慮していることを知った場合、その宿を予約する可能性は高くなるだろう」と答えた旅行者は、日本人でみると全体の36%だった一方、世界全体でみるとその割合が70%にのぼるなど、日本における環境の持続可能性などサステナブルツーリズムに対する意識や知識は世界全体と比べて低い傾向にあることが読み取れる。
新型コロナウイルスの感染拡大により、これまで以上にサステナブルへの意識が世界中で高まっている。感染が収束した後の国内・訪日旅行の回復に向けて、このような世界的な旅行トレンドに対応する旅行業者の取り組みだけでなく、政府など行政機関による情報の提供や制度の実施の必要性が増すであろう。
[1] Euromonitor International, Top Countries for Sustainable Tourism, March 2021
[2] ブッキング・ドットコム、「ブッキング・ドットコムが2019年の「サステイナブル・トラベル」に関する調査結果を発表 ~日本人のエコに対する知識不足が世界との差を拡大させる要因に~」(2019年4月)
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記事本編 9月30日より、経済産業省による「人的資本経営に関する調査」が実施されます。 全世界で人的資本に対する重要性が高まっている中、日本での人的資本に関する調査としては初の大規模調査となります。
【調査について】 経済産業省のコメント: 経済産業省では、中長期的な企業価値向上の観点から、「人的資本経営」を推進していますが、この度、人的資本経営の実現に向けた日本企業の取組を一層後押しする観点から、「人的資本経営に関する調査」を実施します。
対象企業: 市場1部、2部、マザーズ、JASDAQに上場している全ての企業(外国株は除く)
実施期間: 2021年9月30日(木)10時開始 ~2021年10月29日(金)17時終了
調査手法: Web調査(依頼状一式は郵送)
特徴 アンケート内容は非公開だが、アンケート回答社名は公開 経営層のみならず、事業リーダー層、管理職層、非管理職層からの回答も実施 アンケート回答企業には、データ分析をしたレポートを送付 詳細につきましては、9月28日に実施された説明会の模様がYouTubeにて公開されましたので、下記をご参照ください。
「人的資本経営に関する調査オンライン説明会」2021年9月28日開催 01 基調講演「人的資本経営の着実な実践に向けて」 一橋大学CFO教育研究センター長 伊藤 邦雄 氏
https://www.youtube.com/watch?v=2YayFh3E2RY&list=RDCMUCAMvYSb3oO7oQpcaHZQYv7A&start_radio=1&rv=2YayFh3E2RY&t=49
02 人的資本経営に関する調査について 経済産業省産業人材課長 島津 裕紀 氏
https://www.youtube.com/watch?v=d5B3bQkjdYU&list=RDCMUCAMvYSb3oO7oQpcaHZQYv7A&index=2
03 調査に関する補足説明 事務局:株式会社三菱総合研究所
https://www.youtube.com/watch?v=GgiIBsev-yE
説明会についての経済産業省のプレスリリースはこちら https://www.meti.go.jp/press/2021/09/20210921002/20210921002.html
以上
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【ISO30414】よくある質問事例と回答を紹介 お役立ち動画 2020年11月に米SECが上場企業に対して人的資本の情報開示を義務づけ、日本でも「ISO30414」 に対する注目が高まってきています。
本コラムでは、「ISO30414」リリースの背景、基本的な内容の解説とともに、今後の日本企業への影響について考察したいと思います。
ISO30414とは? ISO30414は、「人的資本の情報開示」に対する、国際的なガイドラインです。2019年1月にISOから正式にリリースされました。
ISO30414が注目される理由 投資家からの要望 企業の人的資本への重要性が高まったのは主に投資家が起点となっています。
「ESG投資」という言葉があるように、企業の持続的な成長に大きな影響を与える「ESG」への取り組みについて、近年投資家からの重要度が非常に増しています。
そのESGの中でも特に「S(Social)」に分類されるものとして、従業員と企業の「関わり」、即ち、企業としての「人材の活用」への取り組みについての状況を把握したいというのが投資家の大きな要求となっています。
しかしながら、従来の決算報告書ではそのような定性的な事項を正確に投資家に伝えることはできませんでした。そのため、最近では企業側は決算書とは別の文書で投資家向け情報公開に取り組むところが増えてきました。(日本では統合報告書や決算説明会での説明資料などにて発信されるようになってきています)
人的資本の定量化・可視化 人材の活用について、現状決算書で分かるのは「人件費」「福利厚生費」と言ったP/L上に出てくる費用のみです。実際に企業を動かす「人材」がどのようなスキルや能力を持っているか、個人ではなく組織として見た場合にどの程度のパフォーマンスを生み出し、会社の価値を向上させられるか、と言ったことについては決算書からはわかりません。
この定性的な「人材」の価値について、できるだけ定量化・可視化し、人的資本情報として開示しよう、というのがここ10年ほどの大きな流れとなっています。
ITテクノロジーの飛躍的進歩と浸透 このような流れを後押しするものとして、人事領域におけるITテクノロジー「HRTech」の進歩が挙げられます。組織のパフォーマンスを定量化・可視化するためには、組織に属する個人の「多種多様な」情報を、「漏れなく」「正確に」「遅滞なく」収集・分析する必要があります。
現状HR分野では勤怠管理などはもちろん、タレントマネジメントシステムなど様々なITツールが開発・利用されています。それらの多くはクラウドで一元管理され、地域を超えてリアルタイムで分析できるようになってきており、また、このようなツールと連携した他部門データも含めた分析も可能になってきているなど、ITツールの技術進化のおかげで人材に関して「公開するに足る正確で多様なデータ収集」が可能な環境が整ってきたと言えます。
働き方の多様化とスキル型社会への変化 時代の流れとして「働き方の多様化」の流れが既にあった中で、コロナウイルスによるリモートワークも進み、企業として従業員ひとりひとりの詳細な労働管理も否応なく進むこととなりました。また、結果として労働者側も働き方の選択肢が増え、自らの持つ「スキル」の活用の仕方を選べる時代になりました。つまり、企業としても、労働者としても「スキル」単位での労働スタイルに徐々に変化していることも、「組織としてのパフォーマンス」を測定する流れを後押ししていると言えるでしょう。
ISO30414による企業への影響 続々と生み出される制度 投資家の要求と、環境(主にテクノロジー)の整備、という必要十分な条件が揃ったことで、それまで行われてきた議論が徐々に実際の社会に「制度」として生み出されてきました。それらのひとつが2019年1月に公開された「ISO30414」であり、2020年11月に米SECにより上場企業に課せられた人的資本情報の開示義務なのです。
今後の企業の取り組みは? 米SECによる人的資本情報の開示義務化ですが、Regulation S-K の改訂により Form 10-k (アニュアルレポート)内の非財務情報としての報告が義務付けられました。現段階では報告しなかった際の罰則はありませんが、起点が投資家の要望である以上、ほとんどの企業は積極的に対応を進めるものと思われます。
一口に人的資本の情報開示っても、何を、どのように測定して報告すれば良いのか、ということはまだまだ一般的な認識が揃っているとは言えません。また、投資家の観点からすれば、企業間での比較(同一市場企業同士はもちろんのこと国や地域を超えた企業間でも比較できる)や、暦年での比較ができることが望ましいことから、開示項目については様々な方法が検討されてきました。BloombergやRobecoSAMなどの投資機関にスコア付けをしてもらいそれをもって投資家に理解を求めるといった取り組みも実際に行われています。
ISO30414は普及するのか? そのような中で国際的なガイドラインである「ISO30414」は、米SECの要求を最低限クリアすることから、多くの企業で利用されるガイドラインとなると予想されています。
人的資本の開示については日本の証券市場ではまだ米SECのような義務化はされていませんが、義務化の有無に関わらず、ESGに関する開示と同様に、投資家に対し積極的に公開する企業が今後増えていくことはほぼ間違いがないと思われます。
ISO30414については項目によっては測定や開示内容が具体的に示されているものもあり対応しやすい点、また、国際基準であるため海外に拠点を持つような大企業との親和性が高い点、が挙げられ、今後ますます認知度が上がっていくことになるのでは、と期待されています。
ISO30414に関する最新の動向 コーポレートガバナンスコード(2021)での規定 日本での政府の動きとして、金融庁より「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」の議事要旨 が発表されました。(2020年12月8日)
その中で、
(中略)こうした観点を踏まえ、上場企業に対し、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況の公表を求めるべきである。また、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表するよう求めるべきである。
との記載があります。ダイバーシティ(人材の多様化)についての人的資本の開示要求内容となっていますが、報道によると、予定されている次期コーポレートガバナンスコードの改訂(2021年3月策定、6月適用)にこの内容が織り込まれる見込みであるとのことです。
ダイバーシティについてはISO30414の中でも定められており(規格番号4.7.4)、日本においても企業として国からの要求に対応した情報公開が必要となりそうです。
コーポレートガバナンス・コードの改定についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【2021年】コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント 〜「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマに〜
中途採用比率の公表義務化 厚生労働省の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改定され、企業の中途採用比率の公表義務化が、2021年4月1日から実施されます。その具体的なガイドラインが2020年12月28日付官報 にて公開され、従業員301人以上の企業については同ガイドラインに基づいた公表が義務化されます。
同法第二十七条の二第一項の規定 による公表は、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者が容易に閲覧できるように行わなければならない。官報 令和2年12月28日(本紙 第403号)
中途採用比率の公表義務化について下記の記事で詳細に解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
関連記事:「中途採用比率の公表」2021年4月1日より義務化へ。人的資本公開の流れが本格化。
企業の情報公開でお困りでしたらコトラにご相談ください このようにISO30414では幅広く体系的に公表項目に対するガイドラインが定められており、より多様で有益な公表を行うことが可能です。 弊社では、「中途採用比率義務化」も含めて、ISO30414に基づいた総合的なコンサルティングサービスをご用意しております。 法的要求への対応のみならず、ISO30414を活用した企業様の戦略的な人的資本情報公開のサポートも承りますので、ご相談等ございましたら是非お気軽にお問い合わせ下さい。
サービスについての疑問や質問、 その他お気軽にお問い合わせください!
本記事は、弊社サービスコトラコンサル 掲載記事を転載したものです。
ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説 お役立ち動画