人的資本の開示が国際的な流れとなっており、米国においては、2020年8月に上場企業に対して人的資本の開示を義務化する規制が追加され、2020年11月より順次、企業の人的資本の開示が始まっております。
今回は、人的資本の開示で先行する米国の開示状況の調査レポートの要点をご紹介致します。「人的資本」の情報開示の参考にしてみてください。
▼コーポレートガバナンスコードの改訂ポイントについては、下記のコラムで詳細に解説しています。
関連記事:コーポレートガバナンスコード改訂のポイント2021年版 〜「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマに〜
米国の人的資本の開示に関する規制改訂 米国においても、投資家からの人的資本の開示要請を背景に2020年8月26日、証券取引監視委員会(SEC)が、上場企業の人的資本の開示に関するRegulation S-Kを改訂することを公表しました。
改訂において第101項(c)の中に下記の文が追加され、上場企業は従来の従業員数に加えて、人的資本についての情報開示が必要となりました。
“(ii) A description of the registrant’s human capital resources, including the number of persons employed by the registrant, and any human capital measures or objectives that the registrant focuses on in managing the business (such as, depending on the nature of the registrant’s business and workforce, measures or objectives that address the development, attraction and retention of personnel).” (訳) 登録者が雇用する人の数を含む登録者(上場企業等)の人的資本資源の説明、及び登録者が事業を経営する上で重視する人的資本の施策又は目的(例えば、登録者の事業および労働力の性質に応じて、人材開発、人材誘引および従業員の維持に対処する施策または目的など)
なお、人的資本の開示に関しては、具体的な開示項目についての明記されない原則主義が採用され、例としては、人材の開発、人材誘引および従業員の維持という3項目が示されるに留められております。また、「事業を経営する上で重視する」と記載がある通り、何を記載し何を記載しないかは、企業自身の判断に委ねられております。
日米の人的資本開示に関する規制比較 日米の人的資本開示に関する規制を比較すると、下表の通りです。人的資本の開示項目については、日米ともに企業の判断に委ねられている状況です。
規則 原則/細則主義 人的資本の定義 人的資本の開示項目 開示方法 日本CGコード 原則主義 (Explain可) 定めず 中核人材多様性(性別、外国人、中途)、育成方針、人的資本への投資など コーポレートガバナンス報告書 米国Regulation S-K 原則主義 定めず 例示3件 Form 10-K
米国上場企業の人的資本の開示状況 米国の上場企業の人的資本の開示状況に関するレポートには、下記のレポートがあります。
FEI社レポートの内容(引用・要約) ①文章の長さ 人的資本に関する文章の平均的長さは1ページ。一方で1パラグラフで済ます企業もあれば、3ページにわたって記述する企業もある。
②定性的、定量的記述
多数派は文章による(定性的)記述を選択。一部の企業が文章の説明のために少数のデータ(定量的記述)を採用。約2/3の企業が、従業員数以外のデータを少なくとも一つ開示。 例としては、地域別従業員分布、フルタイムとパートタイム社員の人数、労働協約を結んでいる従業員比率、男女比率。その他、離職率、従業員エンゲージメントサーベイの結果、労働事故率などの従業員の安全に関わる事項。
③記述内容(記述数降順)
多様性、公正、包摂(Diversity, equity and inclusion) 従業員ベネフィット(Employee benefit) 従業員学習及び人材開発(Employee learning and development) 職場の安全(Employee safety) 従業員エンゲージメント/サーベイ(Employee engagement/surveys) 新型コロナの影響(Covid-19 impact/response) 報酬体系(Compensation philosophy) ④総評
記述項目、及び記述方法に大きな差異が生じたのは、SECが原則主義を採用したため。今後投資家の批判と規制当局の見解表明により、開示内容の向上が見込まれる。 実際、2021年に入り投資家からのプレッシャーが一段と高まり、SECも広範なESG開示が優先事項であるとシグナルを送っているので、企業の対応が向上するのではないかと見ている。
Intelligize社レポートの内容(引用・要約) Morgan Stanleyの人的情報公開メトリクス 参照:https://www.freewritings.law/wp-content/uploads/sites/24/2021/05/igz_report_humancapitalmanagement_final_05.pdf ①開示形態と内容
下記3つの類型に分類される。
従来の10−Kと変わらない。 データを開示せず特定のトピックスに限定して記述。 データ、グラフにてキーポイントを示している企業は極めて少数(Merck、Morgan Stanley) ②人的資本の施策と目標
半数以上の10−Kにおいて、Regulation S-Kで人的資本の施策と目標として例示された下記3項目について記述されている。
人材開発、従業員教育(Development or training) 人材誘引、採用(Attraction or recruiting) 従業員の維持(Retention of employees) 上記3項目に共通する項目として離職率(turnover)について140社以上、後継者計画(Succession Planning)について200社以上が述べている。
③記述内容(記述数降順)
安全(Safety)425社 健康(Health)425社 報酬(Compensation)425社 多様性と包摂(Diversity and Inclusion)424社 →90%以上の企業が、多様性と包摂について記述しているが、データを開示する企業は16社しかない。 組織文化(Culture)382社 地域社会参加(Community)330社 労使関係(Labor relations)322社 ④総評
企業は、人的資本に関するデータを保有しているが、これまでのところ、Form10−Kにおいてデータを開示することに積極的な企業は極めて少数。これはSECが人的資本の開示に関して企業に裁量を与えているため。 そういった中、企業は、企業の評価に直結する主体的に多様性(Diversity) と健康(Health)の開示に集中していた。
コメント 前述のレポートの内容を見る限り、2020年11月から人的資本の開示を始めた米国上場企業の報告水準は、データ等に基づいた定量的記述を行う企業は少数に留まり、投資家、規制当局の期待水準を下回っているようです。
米国の上場企業としては、規制が原則主義であったことから、初期の報告は、ミニマムスタンダードを満たせばという考え方があったからかも知れませんが、今後は投資家、規制当局の圧力から開示水準の向上が促されていくのではという見解もあることから、人的資本の開示状況に関しては継続的に注視していく必要があります。
日本企業の人的資本の開示の今後について 日本企業は、2022年4月から導入される東京証券取引所の新市場区分であるプレミアム市場及びスタンダード市場への移行を選択した場合には、本年12月末までに、コーポレートガバナンス報告書にて、人的資本に関する2原則の表明が求められます。
既にCSR報告書、統合報告書等で人的資本に関する開示をしている場合には、その旨記載をすれば良いかと思われますが、昨今では、人的資本の開示に特化した国際標準規格(ISO30414)も公表されていることから、ISO30414に準拠した報告を検討するというのも一案と思われます。
特にISO30414は、人的資本の開示項目全てがデータに基づくものであることから、人的資本に関して定量的なデータを求める投資家の期待に応えることができる他、社内の人的資本マネジメントのツールとして活用することも出来るというメリットも備えております。
▼ISO30414についてはこちらの記事で詳細に解説しているので、あわせてご覧ください
関連記事:ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説
当社では、企業様の人的資本開示にISO30414を活用したいというニーズに応えるため、コンサルティングメニューをご用意しておりますので、下記よりお気軽にご相談下さい。
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【2021年最新版】米国企業の人的資本の情報開示状況
お役立ち動画 2021年6月11日のコーポレートガバナンス・コード改訂以降、新コードに対応した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」が開示されておりますので、開示事例をご紹介いたします。[2021年8月12日更新: 事例1件追加(計20件掲載)]
2021コーポレートガバナンス・コード改訂概要 2021コーポレートガバナンス・コード改訂の概要 施行日:2021年6月11日 原則数:78原則から83原則へ5原則追加。 修正原則数:既存78原則のうち、14原則に対して修正。 開示を要する原則:既存11原則から14原則へ3原則追加。 ※新規追加5原則から2つ。既存原則から1つが追加。 プライム移行企業のみに適用する原則:6原則を適用 ※「原則」には「補充原則」も含む コーポレートガバナンス・コードの推移(各種情報に基づき当社にて作成) コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント 主な変更点は下記3点です。
1. 取締役会の機能発揮 2. 企業の中核人材における多様性の確保 【補充原則2-4①】3. サステナビリティを巡る課題への取組み 【補充原則3-1③】
2.の具体的内容: ・管理職における多様性の確保(女性・外国人・中途採用者の登用)についての考え方と測定可能な自主目標の設定 ・多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表 ⇒中核人材の多様性
3.の具体的内容: ・サステナビリティについて基本的な方針を策定し自社の取組みを開示 ・人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示 ⇒人的資本への投資
▼2021年コーポレートガバナンス・コード改訂ポイントの詳細については、下記コラムをご参照ください。
関連記事:コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント2021年版 〜「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマに〜
改訂後コーポレートガバナンス・コードに対応した開示事例 [2021年8月12日1件追加(計20件)] 以下、本コラム更新日時点で弊社にて確認した報告書の事例を、人的資本関連(「中核人材の多様性」「人的資本への投資」)を中心に ご紹介いたします。
(7月14日追記)報告書の改訂対応率は0.78% コーポレートガバナンス・コード改訂から1か月経過 しました。現時点で改訂後コードに対応した報告書の開示数は、18報告書 となります。この間に開示されたCG報告書は2,284報告書 ですので、報告書における対応率は 18/2284=0.78% となります。各企業様の対応が進められている状況と思われます。 ※数値については弊社調べによる
1.双日株式会社様 最終更新日:2021年6月18日 双日株式会社 証券コード:2768 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF]
・新コード対応83原則全て実施(Comply) ・新コード対応14原則全てにつき開示
新規項目の【補充原則2-4①】「中核人材の多様性」に関しては、報告書内にて2ページを使い詳細に説明されています。
・女性管理職については、2023年までに50% ・外国人については、2025年までに海外事業会社 CxO ポストの過半数超を外国人人材とする ・中途採用については、毎年の新規採用者数を現状の約 3 割程度を中途採用者としていく
など、具体的な目標数を示した明確な方針を打ち出しています。
さらに、同原則にて開示が要求されている「多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針、その状況」 については、「ジョブ型新会社の設立、独立・起業支援制度」など含め詳細な取り組み方針が記載されており、関連サイトへのリンクなども含め非常に豊富で明確な情報がわかりやすく開示されています。
同じく新規項目の【補充原則3-1③】「サステナビリティ、人的資本への取り組み」 に関しては、同社が推進する様々な施策について、統合報告書やWebサイトでの開示を記載するとともに、中期経営計画にて、人や組織変革の非財務投資(人材、DX 対応等)に対して300億円の資金配分をしている旨の開示を行っております。
なお、双日株式会社様のコーポレート・ガバナンス報告書については、弊社が確認する限り、改訂後初となる改訂版コード対応の報告書 となります。 新規追加原則である「中核人材の多様性」「人的資本への投資」も含めまして新コード対応について非常に充実した内容であり、今後の新コード対応報告書の模範となるような、大変参考となる報告書となっております。
2.ソーシャルワイヤー株式会社様 最終更新日:2021年6月18日 ソーシャルワイヤー株式会社 証券コード:3929 (東証マザーズ) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF]
こちらも新コード対応にて報告書を開示されています。 マザーズ上場企業ということで、原則(補充原則)への対応や開示についての要求は課されておりませんが、多くの原則(補充原則)への対応状況が記載されております。
「中核人材の多様性」「人的資本への投資」については今回の報告書には記載はありませんが、他の原則に対する自主的な開示によって企業としてのコーポレート・ガバナンスに対する取り組み内容が非常によくわかる開示内容となっております。
3.株式会社エヌ・ティ・ティ・データ様 最終更新日:2021年6月18日 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 証券コード:9613 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF]
同社につきましては、新コード対応の報告書ではありませんが、【補充原則4-11①】に関して下記の記載があります。
「【補充原則 4-11①】(取締役会の構成、役員の選任方針等) 取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方については、本報告書の「Ⅱ.2.(3)選解任・指名」記載の(取締役候補の選任の方針)をご参照ください。なお、本原則については、2021年6月の改訂後のコードに基づき記載しています」
【補充原則4-11①】に関しては、今回の改訂で「スキルマトリックス」の開示が開示事項として追加されました。 同社では、本補充原則のみ新コード対応 とし、報告書内にて15名の取締役のスキルマトリックスを開示されております。
4.株式会社アイシン様 最終更新日:2021年6月21日→6月25日更新 株式会社アイシン 証券コード:7259 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
(6月21日更新) 報告書の【対象コード】に、「2021年6月の改定後のコードに基づき記載しています。」との記載があります。新規追加の人的資本関連の原則に関する記載はありませんが、新コードにて新たに開示事項項目となった【4-11①】のスキルマトリックスについて、『各取締役のスキルにつきましては、一覧としてまとめ、「アイシングループレポート」及び当社ホームページ(https://www.aisin.com/jp/ )のコーポレート・ガバナンスのページにて開示しています。』 として、監査役も含めたスキルマトリックスを開示されています。
(6月25日更新) 21日の更新分に対し、【2-4①】の中核人材の多様性についての記載を追加した報告書を開示されました。報告書内にて定性的な説明があり、KPI等についてはホームページを参照とされています。 (例:「多様な人材の活躍推進」 https://www.aisin.com/jp/sustainability/social/employee/diversity/ )
5.株式会社サンテック様 最終更新日:2021年6月24日 株式会社サンテック 証券コード:1960 (東証二部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
【2-4①】(中核人材多様化)について記載があります。 「現状において、測定可能な管理職への登用目標を示すことは困難」であるとしながらも、「一例として、連結会社における非日本人の割合は40%を超えて」いると数値を使うことや、定性的な記述を充実させることで、投資家に対して丁寧な説明を心掛けているように伺えます。 【3-1③】(人的資本投資)についても具体的な数値はありませんが、「分かりやすく具体的に情報を開示・提供をし」ていくことを表明されています。
6.日本瓦斯株式会社様 最終更新日:2021年6月24日 日本瓦斯株式会社 証券コード:8174 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体としては改訂後対応とはなっておりませんが、各原則個別に対応を表明されています。(【2- 4- ①】【3- 1- ③】については対応) 【2-4①】(中核人材多様化)については「女性役職員の意識調査を実施、これを踏まえて、ESG経営推進委員会で多様性の確保と推進について議論を進め、2021年内に、考え方と測定可能な目標を開示する予定」 【3-1③】(人的資本投資)については「サステナビリティの取組み内容や人的資本等への投資については、統合報告書や2021年5月17日開催の事業・ESG説明会でご説明いたしました」 と開示されています。
7.株式会社いい生活様 最終更新日:2021年6月25日 株式会社いい生活 証券コード:3796 (東証二部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体として対応後CGコードに基づく内容であり、さらに、プライム向けの内容を含んだ対応とされております。 【2-4①】(中核人材多様化)についてはExplain事項として、実施しない理由を記載。【3-1③】についてはComply事項として、決算説明会等の資料にて開示を実施している旨、言及されています。 新CGコードに対するComply & Explain の状況については、自社ホームページにて「2021年6月25日 コーポレートガバナンス・コードに関する当社の取り組み」 として非常に詳細な記述を開示されています。
8.株式会社第四北越フィナンシャルグループ 最終更新日:2021年6月25日 株式会社第四北越フィナンシャルグループ 証券コード:7327 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体としては改訂後対応ではありませんが、【4-11①】については改訂後対応項目とし、株主総会招集通知にてスキルマトリックスを開示されています。https://www.dhfg.co.jp/financial/stock/meeting/pdf/20210518_general_meeting_01.pd
9.ヤマハ株式会社 最終更新日:2021年6月25日 ヤマハ株式会社 証券コード:7951 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体として改訂後対応となっております。【2-4①】については報告書内にて定性表記を行い、KPI等はホームページ上の開示を参照とされています。https://www.yamaha.com/ja/csr/human_rights_and_labor_practices/
10.アシードホールディングス株式会社 最終更新日:2021年6月25日 アシードホールディングス株式会社 証券コード:9959 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
全体として改訂後対応です。【2-4①】【3-1③】【4-11①】についてはExplainとし、今後対応されるとの記載がございます。
11.株式会社中京銀行 最終更新日:2021年6月29日 株式会社中京銀行 証券コード:8530 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体としては改定前対応となっておりますが、新コード対応として【2-4①】【4-10①】【4-11①】の開示を行っております。【2-4①】については、人事部内へのダイバーシティ推進室の設置、女性管理職比率の過去3年間の実績値と今後3年間の計画値を具体的な数値で開示 されています。【4-11①】に関してましては、監査役も含めた取締役会のスキルマトリックスを同報告書内にて開示しております。
12.扶桑化学工業株式会社 最終更新日:2021年6月30 日 扶桑化学工業株式会社 証券コード:4368 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体としては改定後対応となっており、【2-4①】について、女性、中途、外国人に対する取り組みがホームページ上で開示されていることが記載されています。
13.大同信号株式会社 最終更新日:2021年6月30 日 大同信号株式会社 証券コード:6743 (東証二部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体として改訂後対応となっております。【2-4①】については、具体的な数値目標の開示は今後検討とされています。
14.参天製薬株式会社 最終更新日:2021年7月1 日 参天製薬株式会社 証券コード:4536 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体は改訂前となっていますが、【2-4①】のみ改訂後として開示が行われています。データ詳細についてはホームページ上にて公開とし。「雇用・人材データ 2020」としてダイバーシティやワークライフバランスなど詳細なデータが公開されています。 「参天製薬 雇用・人材データ 2020」 https://www.santen.co.jp/ja/csr/assets/pdf/ehrd2020j.pdf
15.株式会社J-オイルミルズ 最終更新日:2021年7月1日 株式会社J-オイルミルズ 証券コード:2613 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
改訂後対応の報告書。【2-4①】については、女性管理職比率については2017年実績から2030年目標まで数値を用いて説明されています。【3-1③】についても、金額については記載はありませんが、取り組みについて非常に詳細に説明がされております。
16.株式会社加藤製作所 最終更新日:2021年7月2 日 株式会社加藤製作所 証券コード:6390 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
改訂後対応の報告書。人的資本関連の【2-4①】【3-1③】【4-11①】については実施しない事項として説明がされております。
17.カワセコンピュータサプライ 株式会社 最終更新日:2021年7月8 日 株式会社加藤製作所 証券コード:7851 (東証二部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
改訂後対応の報告書。【2-4①】については実施しない事項とし、説明をされています。
18.株式会社あおぞら銀行 最終更新日:2021年7月13 日 株式会社あおぞら銀行 証券コード:8304 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
プライム向けの内容も含めて、すべての原則へ対応。【2-4①】については、女性・中途・外国人それぞれの管理職に加え女性の調査役(係長級)の割合も指標とし、それぞれ現状と2023年までの目標を数値にて開示されています。また、人材育成方針や社内環境整備方針についても2020年度の状況として具体的な数値にて説明されており、非常に充実した内容と見受けられます。 なお、あおぞら銀行様におかれましては、企業ホームページにてさらに詳しく人材データを開示されております。(人事戦略、人事制度、キャリア開発、人材育成、働き方改革、従業員データ、女性の活躍等) 「あおぞら銀行 サステナビリティマネジメント Social(社会:従業員の活躍推進)」 https://www.aozorabank.co.jp/corp/sustainability/social2_hr/
19.株式会社丸井グループ 最終更新日:2021年7月19 日 株式会社丸井グループ 証券コード:8252 (東証一部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
報告書全体として対応後コード対応。特に【2-4①】については非常に充実した開示となっています。同社独自のKPIとして「女性イキイキ指数」を利用。女性管理職比率や男性育休取得率などの一般的な指標に加えて、「女性活躍浸透度」「女性の上位職指向」「男性の家事・育児参画度」「固定化した性別役割分担意識の見直し度数」など経営方針に基づいたオリジナルな指標の開示を実施し、同社の取り組みを社内外に明確に発信されています。また、数値データについては「ESGデータブック」参照とされ、こちらでは詳細な人事関連データが過去5年分開示されています。同社が早くから深い取り組みを続けられてきたことが伺えます。 「丸井グループ ESGデータブック」 https://www.0101maruigroup.co.jp/sustainability/pdf/esg/esg2021.pdf
20.児玉化学工業株式会社 最終更新日:2021年8月3 日 児玉化学工業株式会社 証券コード:4222 (東証二部) コーポレート・ガバナンス報告書[PDF ]
「当社は、株式会社東京証券取引所よりスタンダード市場への一次適合判定を受けており、スタンダード市場向けの内容を含めた改訂後のコードに基づいて記載を行っております。」と、改訂後コード対応となっております。【2-4①】【3-1③】ともにExplain項目とされていますが、2021年度中に具体的な方針を決定し、取り組みを始められるとのことです。
このように、6月11日の施行開始以降、新コードに対応した報告書の開示が順次始まっております。 現在多くの企業様にて開示内容の検討が行われている段階かと思われますが、本年12月の東証への提出期限に向けて、今後続々と対応した報告書が開示されていくものと思われます。 本コラムでは引き続き最新の開示事例をご紹介してまいります。
コーポレートガバナンス・コード改訂対応について、お困りごとがございましたらお気がるにコトラまでご相談ください。サービスについての疑問や質問、 その他お気軽にお問い合わせください!お問い合わせフォーム>
ISO30414を利用したコーポレートガバナンス・コード対応 コーポレートガバナンス・コードとISO30414の関係性 今回のコード改訂では、新規追加5原則のうち、3原則が人的資本関連 となっています。(【2-4①中核人材の多様性】【3-1③人的資本投資】【4-2②人的資本投資への取締役会の監督責任】)
また、全83原則(補充原則)のうち、人的資本関連が従来の5原則から12原則 (多様性、人的資本投資、教育、従業員の安全、健康、リーダーの多様性、等)へと増え、コーポレート・ガバナンスにおいて人的資本の重要度が非常に高まっております。
そのような中、人的資本関連の指標測定項目およびその開示方法について、国際標準である「ISO30414」 の活用に注目が集まっています。
▼そもそも「ISO30414」とは? という方は下記の記事で詳細に解説していますので、あわせてご覧ください。
関連記事:ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説
ISO30414活用のメリット 今回のコード改訂の中で、特に人的資本関連においては、定性的な記述として「考え方」の提示、また定量的な記述として「数字」の開示の両方が求められているのが特徴的です。
ISO30414の特徴としては、
1. 「国際標準」としてグローバルに比較可能な唯一のフレームワークである 2. 投資対効果を含め、「企業における人的資本の貢献度の可視化」の考え方で統一されている 3. 11領域58項目の測定項目が定められているが、全ての結果は「数字」で開示される
の3点が挙げられます。
つまり、「ISO30414」は、今回のコード改訂の考え方と極めて親和性の高いものとなっており、「ISO30414」の導入は、コーポレートガバナンス・コード対応へのご支援となるだけでなく、ESG/SDGsをはじめとしたサステナビリティ対応を推進する上でも非常に有効なフレームワークとなっております。
弊社では世界的に注目されている「ISO30414」につき、専門のコンサルタントにより、企業様へ導入に関するコンサルティングをご提供しております。
・幅広い人的資本関連施策について統一的な考え方で推進したい ・サステナビリティに関して一段高いレベルの開示を投資家に行いたい ・コーポレート・ガバナンスにおいて経営方針に沿った人的資本施策を進めたい 等
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「コーポレート・ガバナンス報告書」の開示事例~2021年改訂コーポレートガバナンス・コード対応~ お役立ち動画 この記事のSDGsカテゴリ
記事本編 改訂コーポレートガバナンスコード (2021.6.11更新) 本日、2021年6月11日、金融庁および東京証券取引所より2021年改定版のコーポレートガバナンスコード(確定版)が公開され、同日より施行となりました。同時に「投資家と企業の対話ガイドライン」も確定となりました。これにより2018年から3年ぶりとなるコーポレートガバナンス改訂に関わる作業は全て完了し、上場企業においては今後この新コーポレートガバナンスコードに即した運用が開始されることとなります。
2021年4月7日に東証および金融庁から公開された最終案からの変更点は、語句統一の1か所のみ。(原則5-2において「人材投資」を「人的資本への投資」に修正)。5/7に締め切られたパブリックコメントでも改訂内容への賛成のコメントが多数を占め、20回以上にわたって開催された「スチュワードシップコード及びコーポレートガバナンスコードのフォローアップ会議」にて十分な検討がなされた結果であることが伺える結果となりました。
本コラムでは、本日より施行開始となった2021年版コーポレートガバナンスコードを、2018年版コーポレートガバナンスコードと比較し、その改訂ポイントや金融庁および東証の狙いなどを解説いたします。
改訂の概要 2018年版のコーポレートガバナンスコードに対して、
5つの原則(補充原則)を新設 14の原則(補充原則)に追加・修正
が施され、全78原則から83原則となる最終提案となりました。全体を通して大きく変更された点は、
1.取締役会の機能発揮 2.企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保 3.サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み
の3つとなりました。
1および2については報道等もされており予想された内容ではありましたが、1の中でも社外取締役の重要性については予想よりもさらに重視された扱いとなっていると感じます。3のサステナビリティについては、新設・追加項目の随所に盛り込まれ、その内容も具体的で踏み込んだ内容となっており、非常に重視されています。今回の改訂コードでは、サステナビリティをESGとして分類しており、「E」として気候変動などの地球環境問題への対応が新規項目として追加されています。また、「S」として「人的資本」もサスティナビリティの項目として新たに追加。「人的資本と知的財産」「人的資本と投資」といった内容で重要項目として取り上げられています。
以下、今回の変更項目をまとめました。(Pはプライム市場対象)
【新設項目】
2−4① 女性の活躍推進を含む社内の多様性の確保 ・中核人材(管理職層)の多様化と開示 3−1③ 情報開示の充実 ・サステナビリティへの取り組み、人的資本への投資の開示。 ・TCFDの枠組みでの気候変動に対する方針と影響の開示。(P) 4−2② 取締役会の役割・責務(2) ・サステナビリティへの取組み、人的資本への投資に対する取締役会の責務。 4−8③ 独立社外取締役の有効な活用 ・支配株主がいる場合、独立社外取締役過半数。(P) ・支配株主がいる場合、独立社外取締役1/3以上。 ・もしくは、独立社外取締役を含む特別委員会の設置。 5−2① 経営戦略や経営計画の策定・公表 ・事業ポートフォリオの策定と開示
【追加・修正項目】
1−2④ 株主総会における権利行使 ・議決権電子行使プラットフォームの利用(P) 2 株主以外のステークホルダーとの適切な関係 ・「考え方」にサステナビリティ(ESG)への対応強化を追加 2−3① 社会・環境をはじめとするサステナビリティを巡る課題 ・「気候変動」「人権の尊重」「従業員の健康」等への対応強化を追加 3−1② 情報開示の充実 ・英語での情報開示(P) 4 取締役会等の責務 ・支配株主からの少数株主の保護 4−3④ 取締役会の役割・責務(3) ・内部統制の、全社/グループ全体への整備に対する取締役会の責務。 4−4 監査役および監査役会の役割・責務 ・監査役会による選解任の対象に監査役を追加。 4−8 独立社外取締役の有効な活用 ・独立社外取締役1/3以上。状況によっては過半数。(P) ・独立社外取締役2名以上。状況によっては1/3以上。 4−10① 任意の仕組みの活用 ・独立社外取締役が半数以下の場合、独立社外取締役を中心とした指名委員会、報酬委員会の設置。 ・指名・報酬委員会を独立社外取締役過半数で構成(P) 4−11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件 ・取締役会の多様性に職歴と年齢を追加。 4−11① 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件 ・スキルマトリックスの作成・開示。 ・独立社外取締役の要件に他社での経営経験を追加。 4−13③ 情報入手と支援体制 ・内部監査部門から取締役会への直接報告の仕組み ・監査役会の機能発揮を追加 5−1① 株主との建設的な対話に関する方針 ・株主との対話対応者に監査役を追加
コーポレートガバナンスコードの沿革 改訂の個別ポイントに入る前に、より理解を深めるために、コーポレートガバナンスコードの制定に至る歴史的背景について少し触れておきます。
日本において「コーポレートガバナンス」の示す意味は、時代とともに多少変わっています。バブル崩壊直後は、企業不祥事への反省から、正しく企業経営を行なうための「法令遵守・適法性」という意味合いが強いものでした。しかしながら、バブル崩壊後20年にも渡り日本経済が低迷。その主たる要因は日本企業の業績、企業価値の低迷にありました。その原因と考えられたのが「コーポレートガバナンス」。
つまり、「企業統治が不十分」→「企業パフォーマンスを上げることができない」→「企業価値が上がらない」→「日本経済が低迷」 という考え方が一般的となりました。その考え方は、日本政府が2014年6月24日に公表した「 日本再興戦略 改訂2014 」 においても明らかです。
Ⅱ.改訂戦略における鍵となる施策 1.日本の「稼ぐ力」を取り戻す (コーポレートガバナンスの強化) 日本企業の「稼ぐ力」、すなわち中長期的な収益性・生産性を高め、その果実を広く国民(家計)に均てんさせるには何が必要か。まずは、コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準の ROE の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である。 出典:「日本再興戦略」改訂 2014 -未来への挑戦- より抜粋
日本の鍵となる戦略の1番目として「日本の【稼ぐ力】を取り戻す」 を表明し、そのための策として、「コーポレートガバナンスの強化」による「攻めの経営判断」が重要としています。このような流れの中で、コーポレートガバナンスコードは制定され、2015年より運用開始となります。
金融庁は、コーポレートガバナンスを以下の様に定義しています。
コーポレートガバナンスコードについて 本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。 コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方 平成26年12月12日 金融庁
従いまして、現在の「コーポレートガバナンス」の意味するものとして、
1.いわゆるコンプライアンス目的の「守りのガバナンス」 2.企業の意思決定を迅速化、積極化し企業価値を向上を目的とする「攻めのガバナンス」
という2つが存在し、それらによって「企業の持続的成長」を目指します。また、上述の通り、近年では特に「攻めのガバナンス」が重視されており、コーポレートガバナンス・コードはそれを体系的に推進するための仕組みとなっております。
コーポレートガバナンスコード改訂のポイント 以上の背景のもと、今回の改訂の重要ポイントは以下5点と考えます。
ポイント1「取締役会の機能向上」 今回、非常に多くの項目にて「独立社外取締役」が登場することとなりました。取締役会の実質的運営主体を独立社外取締役へ移行するため、その割合とともに質についてもスキルマトリックスの策定を通じて適切なガバナンス体制の構築が求められております。 また、取締役会のみならず、それを支える指名委員会、報酬委員会などへも独立社外取締役を中心とした独立性を求めており、透明・果断な経営判断による攻めのガバナンスの促進を目指す考えが伺えます。今回の改訂における一番重要なポイントとなります。
ポイント2「中核人材の多様性」 報道通りの内容ではありましたが、管理職層の多様化の原則がが新設されました。具体的には、女性、外国人、中途採用者が挙げられており、自主的な目標設定と開示が求められています。また、多様性の確保に向けた具体的な社内環境整備や人材育成の方針と実施状況の開示も求められおり、企業としてはどのような開示をするべきか悩ましい項目かと思われます。
ポイント3「人的資本」 サステナビリティ(ESG)に分類されました。今までのコーポレートガバナンスコードでは「非財務情報」の一部として扱われていた人材に関わる項目が、「人的資本」として独立項目として取り上げられました。 特に、「投資」との関係について、取締役会の責務としても記載されるなど、重要なテーマとなっています。
ポイント4「環境」 今回大きく取り上げられることとなったサスティナビリティですが、人的資本と並んで「環境」についても具体的な項目が追加されました。3-1③では、プライム上場企業に対して、気候変動によるリスクと収益機会についてTCFD(または同等の枠組み)に基づいたデータ収集と分析を行い、開示することを求めています。同等の枠組み、とは、現在仕様化が進行しているIFRSの非財務情報開示の枠組みを想定しており、非常に具体的な要求内容となっています。
今回サステナビリティが大きく取り上げられましたが、その要素としては「人的資本」「環境」が大きく占めるものの、それ以外にも「人権の尊重」「従業員の健康」「労働環境」「公正・適正な取引」など広く例示されており、総合的に企業の持続的成長を求める内容となっています。
ポイント5「監査役の重要性」 今回、独立社外取締役が非常に多く取り上げられており目立ちませんが、監査役についても重要性が上がっています。4-13では「監査役会の機能発揮」が追加され、5-1の株主との対話においても、面談すべき対応者に監査役が追加されています。経営陣への監督機能として、社外取締役と同じく監査役の重要性も上がっており、取締役会の機能強化の一環となっています。
人的資本関連の改正点と狙い さて、上記改正点で重視されている人的資本について少し説明を加えます。
現在、全世界の企業経営にて最も重視されているのは「人材」と言っても良いでしょう。アメリカでは企業の無形資産への投資は2000年から既に有形資産への投資を上回っており、知的財産、そしてそれを生み出す「人」が最上の資産であり、投資先となっています。アメリカのこの投資行動がGAFAを初めとしたIT企業を成長させ、情報技術の発達や生産性の向上に結びついたことは広く知られています。
日本においては無形資産への投資は着実に伸びてはいるものの、依然として有形資産投資を下回っています。この差が日米の市場経済の差となっており、現代では無形資産(人)への投資の成否が企業価値を左右すると言っても過言ではありません。
無形資産、有形資産の対名目GDP比推移 日本とアメリカ比較 出典:内閣府資料
そのような投資家の視点を受け、世界的に人的資本への投資に注目が集まり、判断基準となる人的資本に関する情報開示の要求も高まっています。
・米SECによる全米上場企業に対する人的資本情報開示義務化(2020) ・ISOによる人的資本情報開示の標準化(ISO30414)(2019)
など、人的資本に関する情報開示と投資の関係が非常に注目されています。
人的資本情報開示に関する国際的なガイドライン「ISO30414」についてはこちらの記事で解説しています。
関連記事:ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説
今回のコーポレートがバンス・コードの改定で人的資本への投資に関する項目が重要視されているのは、このような背景のもと、人的資本への投資を促し、企業のROEを向上させることが目的と考えられます。 企業のROEが向上することで海外投資家が日本企業に再び目を向け、日本の市場経済の活性化につながることが期待されます。
今後のスケジュール 企業の対応 2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂に関連するスケジュールは以下の予定です。(6月11日情報更新)
・4月7日:金融庁よりコーポレートガバナンス・コード最終案公開、パブリックコメント受付開始 ・5月7日:パブリックコメント受付終了 ・6月11日:改訂コーポレートガバナンス・コード施行 ・6月末日:新市場区分の移行基準日 東証が移行先の基準に達しているかどうかを企業に7月末までに通知 ・9月〜12月:移行手続き期間 ・12月末:移行計画書を開示(コーポレートガバナンス・コードへの対応方針) ・2022年4月4日:一斉移行日
当社の取締役会支援サービス このようにコーポレートガバナンスコード改訂から来年4月の市場区分変更へ向けて上場企業(および上場予定企業)においては多くの対応が必要とされます。当社は人材紹介会社として、設立以来多数の「社外取締役」「監査役」のご紹介を行っております。また、その経験を活かして、社外取締役・監査役紹介に関連する支援サービスもご提供しております。
今回のコーポレートガバナンス・コード改訂における最重要テーマである「取締役会の機能強化」においては、
・「スキルマトリックスの策定支援 」 【4-11、4-11①】・「独立社外取締役・監査役のご紹介」 【4-8、4-9】・「新任取締役のトレーニング」 【4-14】・「取締役会の実効性評価」 【4-11、4-11③】
までを一連の流れとして、トータルソリューションとしてご提供する「取締役会支援サービス」 をご提供し、企業様の課題解決、ご負担の軽減につながるソリューションを提供しております。また、社外取締役以外にも、中核人材の多様性 【原則2-4①】を実現する多様な優秀人材のご紹介も行っております。
独立社外取締役・監査役をご紹介致します 弊社では、女性、SDGs、グローバルなど、多様性を考慮した独立社外取締役をご紹介しております。
社外取締役・監査役の選任にあたっては、御社経営方針、御社の求める人物像、現取締役会のスキルセットと求めるスキル等につきディスカッションさせていただき、最適な人材をご紹介させて頂きます。
詳しくは弊社サービスサイトをご参照ください。
人材に関わる課題はコトラコンサルまでご相談下さい 人材支援のプロフェッショナルとして今まで数多くの企業課題を解決してきたコトラでは、その経験と知見を活かした各種コンサルティングサービスを行っております。
「取締役会支援コンサルティング」の他にも、「ISO30414(人的資本情報開示)コンサルティングサービス」「ESG情報開示コンサルティングサービス」「SDGs推進コンサルティングサービス」「内部統制コンサルティングサービス」「年金資産運用コンサルティングサービス」など、人的課題を解決する様々なサービスをご用意しております。
ご相談等ございましたら是非お気軽にお問い合わせ下さい。
改訂コーポレートガバナンスコード (2021.6.11更新) 本日、2021年6月11日、金融庁および東京証券取引所より2021年改定版のコーポレートガバナンスコード(確定版)が公開され、同日より施行となりました。同時に「投資家と企業の対話ガイドライン」も確定となりました。これにより2018年から3年ぶりとなるコーポレートガバナンス改訂に関わる作業は全て完了し、上場企業においては今後この新コーポレートガバナンスコードに即した運用が開始されることとなります。
2021年4月7日に東証および金融庁から公開された最終案からの変更点は、語句統一の1か所のみ。(原則5-2において「人材投資」を「人的資本への投資」に修正)。5/7に締め切られたパブリックコメントでも改訂内容への賛成のコメントが多数を占め、20回以上にわたって開催された「スチュワードシップコード及びコーポレートガバナンスコードのフォローアップ会議」にて十分な検討がなされた結果であることが伺える結果となりました。
本コラムでは、本日より施行開始となった2021年版コーポレートガバナンスコードを、2018年版コーポレートガバナンスコードと比較し、その改訂ポイントや金融庁および東証の狙いなどを解説いたします。
改訂の概要 2018年版のコーポレートガバナンスコードに対して、
5つの原則(補充原則)を新設 14の原則(補充原則)に追加・修正
が施され、全78原則から83原則となる最終提案となりました。全体を通して大きく変更された点は、
1.取締役会の機能発揮 2.企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保 3.サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み
の3つとなりました。
1および2については報道等もされており予想された内容ではありましたが、1の中でも社外取締役の重要性については予想よりもさらに重視された扱いとなっていると感じます。3のサステナビリティについては、新設・追加項目の随所に盛り込まれ、その内容も具体的で踏み込んだ内容となっており、非常に重視されています。今回の改訂コードでは、サステナビリティをESGとして分類しており、「E」として気候変動などの地球環境問題への対応が新規項目として追加されています。また、「S」として「人的資本」もサスティナビリティの項目として新たに追加。「人的資本と知的財産」「人的資本と投資」といった内容で重要項目として取り上げられています。
以下、今回の変更項目をまとめました。(Pはプライム市場対象)
【新設項目】
2−4① 女性の活躍推進を含む社内の多様性の確保 ・中核人材(管理職層)の多様化と開示 3−1③ 情報開示の充実 ・サステナビリティへの取り組み、人的資本への投資の開示。 ・TCFDの枠組みでの気候変動に対する方針と影響の開示。(P) 4−2② 取締役会の役割・責務(2) ・サステナビリティへの取組み、人的資本への投資に対する取締役会の責務。 4−8③ 独立社外取締役の有効な活用 ・支配株主がいる場合、独立社外取締役過半数。(P) ・支配株主がいる場合、独立社外取締役1/3以上。 ・もしくは、独立社外取締役を含む特別委員会の設置。 5−2① 経営戦略や経営計画の策定・公表 ・事業ポートフォリオの策定と開示
【追加・修正項目】
1−2④ 株主総会における権利行使 ・議決権電子行使プラットフォームの利用(P) 2 株主以外のステークホルダーとの適切な関係 ・「考え方」にサステナビリティ(ESG)への対応強化を追加 2−3① 社会・環境をはじめとするサステナビリティを巡る課題 ・「気候変動」「人権の尊重」「従業員の健康」等への対応強化を追加 3−1② 情報開示の充実 ・英語での情報開示(P) 4 取締役会等の責務 ・支配株主からの少数株主の保護 4−3④ 取締役会の役割・責務(3) ・内部統制の、全社/グループ全体への整備に対する取締役会の責務。 4−4 監査役および監査役会の役割・責務 ・監査役会による選解任の対象に監査役を追加。 4−8 独立社外取締役の有効な活用 ・独立社外取締役1/3以上。状況によっては過半数。(P) ・独立社外取締役2名以上。状況によっては1/3以上。 4−10① 任意の仕組みの活用 ・独立社外取締役が半数以下の場合、独立社外取締役を中心とした指名委員会、報酬委員会の設置。 ・指名・報酬委員会を独立社外取締役過半数で構成(P) 4−11 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件 ・取締役会の多様性に職歴と年齢を追加。 4−11① 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件 ・スキルマトリックスの作成・開示。 ・独立社外取締役の要件に他社での経営経験を追加。 4−13③ 情報入手と支援体制 ・内部監査部門から取締役会への直接報告の仕組み ・監査役会の機能発揮を追加 5−1① 株主との建設的な対話に関する方針 ・株主との対話対応者に監査役を追加
コーポレートガバナンスコードの沿革 改訂の個別ポイントに入る前に、より理解を深めるために、コーポレートガバナンスコードの制定に至る歴史的背景について少し触れておきます。
日本において「コーポレートガバナンス」の示す意味は、時代とともに多少変わっています。バブル崩壊直後は、企業不祥事への反省から、正しく企業経営を行なうための「法令遵守・適法性」という意味合いが強いものでした。しかしながら、バブル崩壊後20年にも渡り日本経済が低迷。その主たる要因は日本企業の業績、企業価値の低迷にありました。その原因と考えられたのが「コーポレートガバナンス」。
つまり、「企業統治が不十分」→「企業パフォーマンスを上げることができない」→「企業価値が上がらない」→「日本経済が低迷」 という考え方が一般的となりました。その考え方は、日本政府が2014年6月24日に公表した「 日本再興戦略 改訂2014 」 においても明らかです。
Ⅱ.改訂戦略における鍵となる施策 1.日本の「稼ぐ力」を取り戻す (コーポレートガバナンスの強化) 日本企業の「稼ぐ力」、すなわち中長期的な収益性・生産性を高め、その果実を広く国民(家計)に均てんさせるには何が必要か。まずは、コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準の ROE の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である。 出典:「日本再興戦略」改訂 2014 -未来への挑戦- より抜粋
日本の鍵となる戦略の1番目として「日本の【稼ぐ力】を取り戻す」 を表明し、そのための策として、「コーポレートガバナンスの強化」による「攻めの経営判断」が重要としています。このような流れの中で、コーポレートガバナンスコードは制定され、2015年より運用開始となります。
金融庁は、コーポレートガバナンスを以下の様に定義しています。
コーポレートガバナンスコードについて 本コードにおいて、「コーポレートガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する。本コードは、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたものであり、これらが適切に実践されることは、それぞれの会社において持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応が図られることを通じて、会社、投資家、ひいては経済全体の発展にも寄与することとなるものと考えられる。 コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方 平成26年12月12日 金融庁
従いまして、現在の「コーポレートガバナンス」の意味するものとして、
1.いわゆるコンプライアンス目的の「守りのガバナンス」 2.企業の意思決定を迅速化、積極化し企業価値を向上を目的とする「攻めのガバナンス」
という2つが存在し、それらによって「企業の持続的成長」を目指します。また、上述の通り、近年では特に「攻めのガバナンス」が重視されており、コーポレートガバナンス・コードはそれを体系的に推進するための仕組みとなっております。
コーポレートガバナンスコード改訂のポイント 以上の背景のもと、今回の改訂の重要ポイントは以下5点と考えます。
ポイント1「取締役会の機能向上」 今回、非常に多くの項目にて「独立社外取締役」が登場することとなりました。取締役会の実質的運営主体を独立社外取締役へ移行するため、その割合とともに質についてもスキルマトリックスの策定を通じて適切なガバナンス体制の構築が求められております。 また、取締役会のみならず、それを支える指名委員会、報酬委員会などへも独立社外取締役を中心とした独立性を求めており、透明・果断な経営判断による攻めのガバナンスの促進を目指す考えが伺えます。今回の改訂における一番重要なポイントとなります。
ポイント2「中核人材の多様性」 報道通りの内容ではありましたが、管理職層の多様化の原則がが新設されました。具体的には、女性、外国人、中途採用者が挙げられており、自主的な目標設定と開示が求められています。また、多様性の確保に向けた具体的な社内環境整備や人材育成の方針と実施状況の開示も求められおり、企業としてはどのような開示をするべきか悩ましい項目かと思われます。
ポイント3「人的資本」 サステナビリティ(ESG)に分類されました。今までのコーポレートガバナンスコードでは「非財務情報」の一部として扱われていた人材に関わる項目が、「人的資本」として独立項目として取り上げられました。 特に、「投資」との関係について、取締役会の責務としても記載されるなど、重要なテーマとなっています。
ポイント4「環境」 今回大きく取り上げられることとなったサスティナビリティですが、人的資本と並んで「環境」についても具体的な項目が追加されました。3-1③では、プライム上場企業に対して、気候変動によるリスクと収益機会についてTCFD(または同等の枠組み)に基づいたデータ収集と分析を行い、開示することを求めています。同等の枠組み、とは、現在仕様化が進行しているIFRSの非財務情報開示の枠組みを想定しており、非常に具体的な要求内容となっています。
今回サステナビリティが大きく取り上げられましたが、その要素としては「人的資本」「環境」が大きく占めるものの、それ以外にも「人権の尊重」「従業員の健康」「労働環境」「公正・適正な取引」など広く例示されており、総合的に企業の持続的成長を求める内容となっています。
ポイント5「監査役の重要性」 今回、独立社外取締役が非常に多く取り上げられており目立ちませんが、監査役についても重要性が上がっています。4-13では「監査役会の機能発揮」が追加され、5-1の株主との対話においても、面談すべき対応者に監査役が追加されています。経営陣への監督機能として、社外取締役と同じく監査役の重要性も上がっており、取締役会の機能強化の一環となっています。
人的資本関連の改正点と狙い さて、上記改正点で重視されている人的資本について少し説明を加えます。
現在、全世界の企業経営にて最も重視されているのは「人材」と言っても良いでしょう。アメリカでは企業の無形資産への投資は2000年から既に有形資産への投資を上回っており、知的財産、そしてそれを生み出す「人」が最上の資産であり、投資先となっています。アメリカのこの投資行動がGAFAを初めとしたIT企業を成長させ、情報技術の発達や生産性の向上に結びついたことは広く知られています。
日本においては無形資産への投資は着実に伸びてはいるものの、依然として有形資産投資を下回っています。この差が日米の市場経済の差となっており、現代では無形資産(人)への投資の成否が企業価値を左右すると言っても過言ではありません。
無形資産、有形資産の対名目GDP比推移 日本とアメリカ比較 出典:内閣府資料
そのような投資家の視点を受け、世界的に人的資本への投資に注目が集まり、判断基準となる人的資本に関する情報開示の要求も高まっています。
・米SECによる全米上場企業に対する人的資本情報開示義務化(2020) ・ISOによる人的資本情報開示の標準化(ISO30414)(2019)
など、人的資本に関する情報開示と投資の関係が非常に注目されています。
人的資本情報開示に関する国際的なガイドライン「ISO30414」についてはこちらの記事で解説しています。
関連記事:ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説
今回のコーポレートがバンス・コードの改定で人的資本への投資に関する項目が重要視されているのは、このような背景のもと、人的資本への投資を促し、企業のROEを向上させることが目的と考えられます。 企業のROEが向上することで海外投資家が日本企業に再び目を向け、日本の市場経済の活性化につながることが期待されます。
今後のスケジュール 企業の対応 2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂に関連するスケジュールは以下の予定です。(6月11日情報更新)
・4月7日:金融庁よりコーポレートガバナンス・コード最終案公開、パブリックコメント受付開始 ・5月7日:パブリックコメント受付終了 ・6月11日:改訂コーポレートガバナンス・コード施行 ・6月末日:新市場区分の移行基準日 東証が移行先の基準に達しているかどうかを企業に7月末までに通知 ・9月〜12月:移行手続き期間 ・12月末:移行計画書を開示(コーポレートガバナンス・コードへの対応方針) ・2022年4月4日:一斉移行日
当社の取締役会支援サービス このようにコーポレートガバナンスコード改訂から来年4月の市場区分変更へ向けて上場企業(および上場予定企業)においては多くの対応が必要とされます。当社は人材紹介会社として、設立以来多数の「社外取締役」「監査役」のご紹介を行っております。また、その経験を活かして、社外取締役・監査役紹介に関連する支援サービスもご提供しております。
今回のコーポレートガバナンス・コード改訂における最重要テーマである「取締役会の機能強化」においては、
・「スキルマトリックスの策定支援 」 【4-11、4-11①】・「独立社外取締役・監査役のご紹介」 【4-8、4-9】・「新任取締役のトレーニング」 【4-14】・「取締役会の実効性評価」 【4-11、4-11③】
までを一連の流れとして、トータルソリューションとしてご提供する「取締役会支援サービス」 をご提供し、企業様の課題解決、ご負担の軽減につながるソリューションを提供しております。また、社外取締役以外にも、中核人材の多様性 【原則2-4①】を実現する多様な優秀人材のご紹介も行っております。
独立社外取締役・監査役をご紹介致します 弊社では、女性、SDGs、グローバルなど、多様性を考慮した独立社外取締役をご紹介しております。
社外取締役・監査役の選任にあたっては、御社経営方針、御社の求める人物像、現取締役会のスキルセットと求めるスキル等につきディスカッションさせていただき、最適な人材をご紹介させて頂きます。
詳しくは弊社サービスサイトをご参照ください。
人材に関わる課題はコトラコンサルまでご相談下さい 人材支援のプロフェッショナルとして今まで数多くの企業課題を解決してきたコトラでは、その経験と知見を活かした各種コンサルティングサービスを行っております。
「取締役会支援コンサルティング」の他にも、「ISO30414(人的資本情報開示)コンサルティングサービス」「ESG情報開示コンサルティングサービス」「SDGs推進コンサルティングサービス」「内部統制コンサルティングサービス」「年金資産運用コンサルティングサービス」など、人的課題を解決する様々なサービスをご用意しております。
ご相談等ございましたら是非お気軽にお問い合わせ下さい。
本記事は、弊社サービスコトラコンサル 掲載記事を転載したものです。
【2021年版】コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント 「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマに 本コラムは
企業の情報公開を進めたいが、何から手を付けたら良いかわからない 自社で企業の情報公開をしているが、公開内容が適切かどうか判断がつかず、確認指標になるような情報を知りたい という方向けの記事となっています。
ESG情報開示が求められるようになった背景 2020年1月、アメリカの大手機関投資家ブラックロックが、ESG投資の採用を表明したことにより、これまで欧州の投資家が先導してきたESG投資が、世界的な投資手法として広がっていく状況となっております。
日本では、2017年にGPIFがESG投資を開始したことに伴い、先行する企業においてGPIFの投資対象となるよう、ESGを経営課題とし、それに伴いESG情報開示にも積極的に取組むところが出てきました。
さらに、2022年4月から、東京証券取引所は新市場区分を導入する予定であり、その中でもプライム市場は、「より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向け」市場と定義されおります。コーポレートガバナンス・コードには、ESGに関する適切な対応と情報開示に主体的に取組むことが記載されておりますので、プライム市場上場を目指す企業は、ESG情報開示を行うことが不可欠になると見込まれております。
一方で、ESG情報開示に取組むにしても、ESG情報開示枠組みには多様な枠組みがあること、また、ESG情報開示方法の標準が確立されていないことが、情報開示担当者にとっても、ステークホルダーにとっても混乱の元になっているようです。
本コラムでは、これまでESG情報開示を行ってこなかった企業の情報開示責任者、担当者の方向けに、ESG情報開示枠組みとして代表的なIIRCフレームワーク、GRIスタンダード、SASBスタンダードについて、その特徴を整理し、導入の方向性をお伝えいたします。
ESG情報開示枠組みの概要 日本取引所グループが、ホームページで紹介しているESG情報開示枠組みの中で、グローバルな枠組み、かつESGの3項目全てについて開示を求めている枠組みは下記の通りです。
これらの枠組みを理解する上では、個別の開示項目を理解する前に、上記の表1に示した「特徴」を理解し、全体像を把握することが不可欠です。
1つ目の特徴は、ルールの性質です。枠組みの名称通り、IIRC報告フレームワークが原則主義であるのに対して、GRIスタンダード、SASBスタンダードは細則主義となっております。レポートの対象に関しては、IIRC報告フレームワーク及びSASBスタンダードが、投資家及び債権者であるのに対して、GRIスタンダードはステークホルダー全般となっております。レポートの開示対象は、ESGの情報開示方針を策定する際に、重要な検討対象 となるものと思われます。
報告する事項は、IIRC報告フレームワーク及びSASBスタンダードが企業価値にインパクト与える事項であるのに対して、GRIスタンダードは、経済、環境、社会に与える事項となっております。報告する事項もESGの情報開示方針を策定する際に、重要な検討対象 となるものと思われます。
開示する重要事項の特定に関しては、IIRC報告フレームワーク及びGRIスタンダードが企業が行うのに対して、SASBスタンダードは、業種・産業ごとに開示すべき重要事項が定められており、後発で公表されたSASBスタンダードの大きな特徴 とも言えます。
ESG情報開示枠組みを、報告する事項で分類すると下記の図1のように分類されます。
【図1】ESG情報開示の枠組み、報告事項での分類 現時点では、ESG情報開示の多くが企業の裁量に任されています。そういった、企業のESGの情報開示方針を定め、その方針に従い、各枠組みを取捨選択して開示することが、開示に伴う効率を高めると同時に、ステークホルダーの満足度を高めることにつながります。
ESG情報開示枠組み統合の動き 冒頭で、ESG情報開示枠組みが多様なこと、標準的手法が確立されていないことが関係者に混乱を与えていることを述べましたが、こういった問題を解決しようと、枠組みを公表している団体が動き始めております。
ESG情報開示枠組みを提供しているIIRC、GRI、SASB、CDP、CDSBの5団体は、2020年9月に「包括的企業報告に向けて協働するための報告書」 を公表しました。 その報告書の中で、ESG情報開示枠組みは、現時点では信用格付け(S&P、Moody’s等)や会計基準(IASB、FASB)に比べて標準化されておらず関係者を混乱させているので、信用格付けや会計基準と同様の水準に高めるために、包括的企業報告を上記5団体が協働して策定していることが述べられています。 そして、報告書の中には、標準的な包括的企業報告の一案として、下図(図2)のように示されております。
【図2】標準的な包括的企業報告の一案 【出所】”Statement of Intent to Work Together Towards Comprehensive Corporate Reportin g”から抜粋
この図によると、SASBスタンダードに基づく非財務情報を、財務情報と合わせて統合報告書へ掲載することを企図しております。
一方、GRIスタンダードに基づく非財務情報は、サステナビリティ報告書へ掲載することを企図しております。
上記枠組みが、一つの枠組みとして示された場合には、企業及びステークホルダーの混乱も相当に収まることが見込まれますが、そういった枠組みが公表されるまでには、図2の包括的企業報告案を参考に自社のESG情報開示方針を定め、開示していくことが一案として考えられます。
なお、SASBスタンダードを採用している実際の開示事例を見てみますと、東京電力は、統合報告書(2019年)で、財務情報と合わせて、GRIスタンダード、SASBスタンダードに基づく非財務情報を開示しております(図2の情報を全て統合報告書で報告)。
ニーズが高まるこの機会にESG情報開示に取り組んでみませんか? 日本企業は、ESG(サステナビリティ活動)経営に既に取組んではいるものの、ESG情報開示に積極的ではないため、ESG評価機関は、日本企業のESGに関する評価を低くせざるを得ないとの指摘があります。折角コストをかけて取組んでいることが、中途半端な成果となっているとすれば、勿体無いことです。
繰り返しになりますが、2022年4月の東京証券取引所の新市場区分の導入により、プライム市場への上場を目指す企業には、ESGに関する適切な対応と情報開示に主体的に取組むことが不可欠となることが見込まれております。
現在は、日本企業が、ESG経営及びESG情報開示に対して、経営課題として積極的に取り組まざるを得ない転換点にあるといっても過言では無いと思われますので、この機会にESG経営及びESG情報開示に積極的に取り組まれることを推奨致します。
企業の情報公開にお困りでしたらコトラにご相談ください このようにESG情報開示では、多様な情報開示枠組みの中から自社の開示方針に合った枠組みを選定することにより有益な情報開示を行うことが可能です。
弊社では、企業の情報開示に関する総合的なコンサルティングサービスをご用意しております。法令等の要求への対応のみならず、企業様の戦略的な情報開示のサポートも承りますので、ご相談等ございましたら是非お気軽にお問い合わせ下さい。
ESG情報開示が求められるようになった背景 2020年1月、アメリカの大手機関投資家ブラックロックが、ESG投資の採用を表明したことにより、これまで欧州の投資家が先導してきたESG投資が、世界的な投資手法として広がっていく状況となっております。
日本では、2017年にGPIFがESG投資を開始したことに伴い、先行する企業においてGPIFの投資対象となるよう、ESGを経営課題とし、それに伴いESG情報開示にも積極的に取組むところが出てきました。
さらに、2022年4月から、東京証券取引所は新市場区分を導入する予定であり、その中でもプライム市場は、「より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向け」市場と定義されおります。コーポレートガバナンス・コードには、ESGに関する適切な対応と情報開示に主体的に取組むことが記載されておりますので、プライム市場上場を目指す企業は、ESG情報開示を行うことが不可欠になると見込まれております。
一方で、ESG情報開示に取組むにしても、ESG情報開示枠組みには多様な枠組みがあること、また、ESG情報開示方法の標準が確立されていないことが、情報開示担当者にとっても、ステークホルダーにとっても混乱の元になっているようです。
本コラムでは、これまでESG情報開示を行ってこなかった企業の情報開示責任者、担当者の方向けに、ESG情報開示枠組みとして代表的なIIRCフレームワーク、GRIスタンダード、SASBスタンダードについて、その特徴を整理し、導入の方向性をお伝えいたします。
ESG情報開示枠組みの概要 日本取引所グループが、ホームページで紹介しているESG情報開示枠組みの中で、グローバルな枠組み、かつESGの3項目全てについて開示を求めている枠組みは下記の通りです。
これらの枠組みを理解する上では、個別の開示項目を理解する前に、上記の表1に示した「特徴」を理解し、全体像を把握することが不可欠です。
1つ目の特徴は、ルールの性質です。枠組みの名称通り、IIRC報告フレームワークが原則主義であるのに対して、GRIスタンダード、SASBスタンダードは細則主義となっております。レポートの対象に関しては、IIRC報告フレームワーク及びSASBスタンダードが、投資家及び債権者であるのに対して、GRIスタンダードはステークホルダー全般となっております。レポートの開示対象は、ESGの情報開示方針を策定する際に、重要な検討対象 となるものと思われます。
報告する事項は、IIRC報告フレームワーク及びSASBスタンダードが企業価値にインパクト与える事項であるのに対して、GRIスタンダードは、経済、環境、社会に与える事項となっております。報告する事項もESGの情報開示方針を策定する際に、重要な検討対象 となるものと思われます。
開示する重要事項の特定に関しては、IIRC報告フレームワーク及びGRIスタンダードが企業が行うのに対して、SASBスタンダードは、業種・産業ごとに開示すべき重要事項が定められており、後発で公表されたSASBスタンダードの大きな特徴 とも言えます。
ESG情報開示枠組みを、報告する事項で分類すると下記の図1のように分類されます。
【図1】ESG情報開示の枠組み、報告事項での分類 現時点では、ESG情報開示の多くが企業の裁量に任されています。そういった、企業のESGの情報開示方針を定め、その方針に従い、各枠組みを取捨選択して開示することが、開示に伴う効率を高めると同時に、ステークホルダーの満足度を高めることにつながります。
ESG情報開示枠組み統合の動き 冒頭で、ESG情報開示枠組みが多様なこと、標準的手法が確立されていないことが関係者に混乱を与えていることを述べましたが、こういった問題を解決しようと、枠組みを公表している団体が動き始めております。
ESG情報開示枠組みを提供しているIIRC、GRI、SASB、CDP、CDSBの5団体は、2020年9月に「包括的企業報告に向けて協働するための報告書」 を公表しました。 その報告書の中で、ESG情報開示枠組みは、現時点では信用格付け(S&P、Moody’s等)や会計基準(IASB、FASB)に比べて標準化されておらず関係者を混乱させているので、信用格付けや会計基準と同様の水準に高めるために、包括的企業報告を上記5団体が協働して策定していることが述べられています。 そして、報告書の中には、標準的な包括的企業報告の一案として、下図(図2)のように示されております。
【図2】標準的な包括的企業報告の一案 【出所】”Statement of Intent to Work Together Towards Comprehensive Corporate Reportin g”から抜粋
この図によると、SASBスタンダードに基づく非財務情報を、財務情報と合わせて統合報告書へ掲載することを企図しております。
一方、GRIスタンダードに基づく非財務情報は、サステナビリティ報告書へ掲載することを企図しております。
上記枠組みが、一つの枠組みとして示された場合には、企業及びステークホルダーの混乱も相当に収まることが見込まれますが、そういった枠組みが公表されるまでには、図2の包括的企業報告案を参考に自社のESG情報開示方針を定め、開示していくことが一案として考えられます。
なお、SASBスタンダードを採用している実際の開示事例を見てみますと、東京電力は、統合報告書(2019年)で、財務情報と合わせて、GRIスタンダード、SASBスタンダードに基づく非財務情報を開示しております(図2の情報を全て統合報告書で報告)。
ニーズが高まるこの機会にESG情報開示に取り組んでみませんか? 日本企業は、ESG(サステナビリティ活動)経営に既に取組んではいるものの、ESG情報開示に積極的ではないため、ESG評価機関は、日本企業のESGに関する評価を低くせざるを得ないとの指摘があります。折角コストをかけて取組んでいることが、中途半端な成果となっているとすれば、勿体無いことです。
繰り返しになりますが、2022年4月の東京証券取引所の新市場区分の導入により、プライム市場への上場を目指す企業には、ESGに関する適切な対応と情報開示に主体的に取組むことが不可欠となることが見込まれております。
現在は、日本企業が、ESG経営及びESG情報開示に対して、経営課題として積極的に取り組まざるを得ない転換点にあるといっても過言では無いと思われますので、この機会にESG経営及びESG情報開示に積極的に取り組まれることを推奨致します。
企業の情報公開にお困りでしたらコトラにご相談ください このようにESG情報開示では、多様な情報開示枠組みの中から自社の開示方針に合った枠組みを選定することにより有益な情報開示を行うことが可能です。
弊社では、企業の情報開示に関する総合的なコンサルティングサービスをご用意しております。法令等の要求への対応のみならず、企業様の戦略的な情報開示のサポートも承りますので、ご相談等ございましたら是非お気軽にお問い合わせ下さい。
本記事は、弊社サービスコトラコンサル 掲載記事を転載したものです。
ESG情報開示に対応するために知っておきたい、ESG情報開示の枠組み お役立ち動画 厚生労働省の「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下、労働施策総合推進法)が改正されました。これにより企業の「中途採用比率の公表」について、2021年4月1日から義務化の運用が開始されます。
本記事では、中途採用比率の公表義務化に至った経緯と企業に求められる対応をお伝えいたします。
中途採用比率の公表義務化に至った経緯 「労働施策総合推進法」の改正自体は2020年に実施されましたが、同法律の第27条2の「中途採用比率の公表」については2021年4月からの実施となっています。(労働市場における「中途採用」の状況については、厚生労働省から公表されているこちら の資料で詳しく結果が出されていますので、ご興味のある方はご参照下さい。) この第27条の「中途採用比率の公表」は以下の経緯で成立に至りました。
・「成長戦略実行計画」(2019 年 6 月 21 日閣議決定) →労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会決定 ( 2019 年12月 25 日) →「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(2020年3月31日決議、同法第27条2「中途採用比率の公表」については2021年4月1日より施行) →同法のガイドライン公表(2020年12月28日官報に掲載)
「中途採用比率の公表」を義務化する意図とは? 第27条2の「中途採用比率の公表」ですが、( )や但し書きが多用され、別途定めるとしている部分もあり、条文のみからはその意図を汲み取ることは非常に難しく、理解のためには労働審議会部会の決定まで遡る必要があります。
Ⅱ.中途採用に関する情報公表について 中途採用に関する情報の公表により、職場情報を一層見える化し、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングをさらに促進することが必要である。 1 企業規模について 情報公表を求める対象は、中小企業の中途採用が既に活発であることや中小企業への負担を踏まえ、労働者数 301 人以上の大企業についてのみ義務とすることが適当である。 2 公表項目について 情報公表を求める項目については、正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合とすることが適当である。 また、経年的に企業における中途採用実績の変化を把握するため、直近3事業年度の割合を公表することが適当である。 3 公表方法について 情報公表の方法については、企業のホームページ等の利用などにより、求職者が容易に閲覧できる方法によることが適当である。
※労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会決定より一部抜粋
また、2020年12月28日付官報に「中途採用比率の公表についてのガイドライン」が掲載され、一部詳細につき補足されました。
同法第二十七条の二第一項の規定 による公表は、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者が容易に閲覧できるように行わなければならない。
官報 令和2年12月28日(本紙 第403号) 中途採用比率の公表に関する最新情報(2021/02/16) 本コラムで解説しております「中途採用比率の公表」につきまして、厚生労働省より最新情報が公開されました。
【資料1】 リーフレット:正規雇用労働者の中途採用比率の公表の概要
【資料2】 正規雇用労働者の中途採用比率の公表Q&A
資料1につきましては、制度概要のリーフレット。資料2については、運用上の詳細なQ&Aとなっております。特に企業の人事部様など、中途採用比率公表の実務に関わる方々はご一読頂くことをお勧めいたします。
なお、資料2のQ&Aをご覧頂くとわかりますが、中途採用比率の公表という開示項目ひとつをとっても、各企業間での比較が可能となるような基準を設定すると、様々な疑問点や運用上のルール決めなどが必要となってきます。
後述する情報開示のガイドライン「ISO30414」では全部で58項目の開示項目が定められておりますが、それぞれがこれと同様(もしくはそれ以上)の内容となっており、対応を進めるうえでは専門的な知識が必要となります。ISO30414対応にてご不明点等ございましたら弊社までお問い合わせ下さい。
公表する内容と対象企業 上記のような議論、法律改正を経て、下記内容が企業に課されることとなりました。
「令和3年4月1日より」 「従業員301人以上の企業」については、 「全正社員採用数(新卒含む)に対する中途採用正社員の割合※」を、 「少なくとも年1回」「過去3年分」を 「公表日を明示」し「インターネット上で公開する」こと ※正社員や中途社員の定義については同法27条2およびガイドラインで規定。
政府の狙い 政府の意図としては、企業の採用状況を透明化することにより企業側と求職者側のマッチング率を上げ、適切な人材配置によって会社の長期的成長を後押しすることにより、日本全体の経済成長を推進するという大きな経済目標があります。
経済成長を支える原動力は「人」である。劇的なイノベーションや若年世代の急減が見込まれる中、国民一人一人の能力発揮を促すためには、社会全体で人的資本への投資を加速し、高スキルの職に就ける構造を作り上げる必要がある。 (中略) 終身雇用や年功序列を基盤とした日本型の雇用慣行を社会の変化に応じてモデルチェンジし、多様な採用や働き方を促す必要がある。 足元で進む新卒一括採用の在り方の見直しと同時並行的に、中途採用・経験者採用、あるいはキャリア採用と呼ばれている採用形態の拡大や、評価・報酬制度の見直しを促していく必要がある。
「成長戦略実行計画(2019)」より一部抜粋 ここで重要なキーワードが2つ出てきます。「人的資本」と「多様な採用や働き方」です。 まさに今世界では「人的資本」に対する重要性が非常に注目されており、ISOによる国際標準化(ISO30414)や各国での法制度化が行われています。日本における今回の「中途採用情報公開」は、まさにこの世界的な時流のもとでの情報公開の一部であり、第一歩と言える重要な法制度化と言えるのです。
人的資本についての世界の状況 上述の通り現在世界では「人的資本」が注目を浴びています。その背景には、2015年に国連で採択され、現在では全世界で共通目標となっている「SDGs」があります。 人や企業の「持続的成長」(Sustainable Development Goals)が最も重視される世の中にあって、企業が持続的に成長するため最も重要なものは「人」であるということが近年世界の共通認識となっています。
アメリカの状況 アメリカでは2020年11月より、SEC(全米証券取引委員会)によって、アメリカの全ての上場企業に対して「人的資本」の情報公開が義務付けられました。 主に投資家からの要望で成立した制度ですが、その企業に属する「人的資本」について、定性的な内容も含め、アニュアルレポートにより株式市場を通じて多様なデータの公表が義務付けられています。
欧州の状況 欧州においては、主に企業を主体とした動きが目立ちます。例えばドイツ銀行は人的資本の公開を積極的に進めている企業のひとつで、2013年より、人的資本のみに焦点を当てた年次報告書「Human Resource Report」 を開示しています。2013年版では、ダイバーシティや教育などを中心に全37ページで始まり、年々その質や量の発展を重ね、2019年版ではエンゲージメント、ダイバーシティ、リーダーシップ、障碍者雇用率、採用戦略、教育手法、昇進状況、育児休暇後の職場復帰率に至るまで、全56ページに渡り非常に詳細な人事データが公表されています。
もともとESGへの意識が高く、積極的に開示を行っている企業が多い欧州において、ドイツ銀行の取組は他の金融機関、企業にも大きく影響を与え、今では欧州は人的資本公開について先進的な地域となっています。
日本の状況 日本における動向としては、2021年3月とされているコーポレートガバナンスコードの改訂において、「社外取締役の割合」「管理職における男女比の割合」などの多様性についての公表が義務付けられると予想されております。これにより日本の上場企業においては、「中途採用比率」とともにこれらの人的資本に関する公表も行うことが義務付けられます。
アメリカでは投資家から、欧州では企業から、日本では政府からと起点は異なりますが、目指すところは同じで、「企業の持続的成長を達成するために、企業の人材活用状況を透明化する(=人的資本の公開)」ということで、これが昨今の全世界的な流れとなっています。
コーポレートガバナンス・コードの改定についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【2021年】コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント 〜「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマに〜
大企業だけでなく中小企業も義務化の可能性がある 話を厚生労働省の「中途採用比率」の法律に戻します。 第27条2についての説明は冒頭で致しましたが、この条文には続きがあります。
2 国は、事業主による前項に規定する割合その他の中途採用に関する情報の自主的な公表が促進されるよう、必要な支援を行うものとする。
これは何を意味するかと言うと、理解するにはやはり元となる審議会決定を参照する必要があります。
大企業については、法的義務を求める項目以外にも自主的な公表が進むよう、中高年齢者、就職氷河期世代の中途採用比率等といった定量的な情報、中途採用に関する企業の考え方、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇等といった定性的な情報の公表を支援することが適当である。 また、中小企業についても、大企業に法的義務を求める項目と併せて他の情報の公表が自主的に進むよう、支援を行うことが適当である。
※労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会決定より一部抜粋 つまり、法律で明記した公表項目は「中途採用比率」のみであるが、国は大企業に対してはその他定性的な項目の公表も促進すべく「支援」して行く(求めていく)ということ、また、中小企業に対しても程度は別として大企業と同様のものを「支援」していく、ということが暗に示されている条文と理解できます。
今後も法律やガイドラインなどの改正や追加によって企業に対する様々な情報公開が求められていくことが予想されます。
【備考】情報公開のガイドライン「ISO30414」 世界的に進む人的資本の公開についてですが、「中途採用比率の公表」のようにその公表項目の詳細が法的義務によって定められているケースというのは実はほとんどありません。先述したアメリカでの上場企業に課せられている情報公開にについても、その項目の選定から計算方法、目標値の設定に至るまで全て企業側の裁量に任されています。上記の第27条2-2についても同様です。
このような状況下で、情報の発信側(企業)にとっても受け取り側(投資家や労働者)にとっても有益なガイドラインとなるのがISO30414です。
ISO30414では11領域58項目の詳細公表項目が規定されており、企業側はこれに沿った報告を行うことで、上述のSECの義務化要求にも対応する報告を作成することが可能となっています。2022年4月とされている東証プライム市場開設にあたっても、企業に対して要求される一段高い、国際的なガバナンスへの対応方法として、国際標準であるISO規格が採用されていくことは非常に自然な流れです。
ISO30414については下記の記事で詳細に記載しています。関連記事:ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説
中途採用比率の公表義務化に至った経緯 「労働施策総合推進法」の改正自体は2020年に実施されましたが、同法律の第27条2の「中途採用比率の公表」については2021年4月からの実施となっています。(労働市場における「中途採用」の状況については、厚生労働省から公表されているこちら の資料で詳しく結果が出されていますので、ご興味のある方はご参照下さい。) この第27条の「中途採用比率の公表」は以下の経緯で成立に至りました。
・「成長戦略実行計画」(2019 年 6 月 21 日閣議決定) →労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会決定 ( 2019 年12月 25 日) →「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(2020年3月31日決議、同法第27条2「中途採用比率の公表」については2021年4月1日より施行) →同法のガイドライン公表(2020年12月28日官報に掲載)
「中途採用比率の公表」を義務化する意図とは? 第27条2の「中途採用比率の公表」ですが、( )や但し書きが多用され、別途定めるとしている部分もあり、条文のみからはその意図を汲み取ることは非常に難しく、理解のためには労働審議会部会の決定まで遡る必要があります。
Ⅱ.中途採用に関する情報公表について 中途採用に関する情報の公表により、職場情報を一層見える化し、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングをさらに促進することが必要である。 1 企業規模について 情報公表を求める対象は、中小企業の中途採用が既に活発であることや中小企業への負担を踏まえ、労働者数 301 人以上の大企業についてのみ義務とすることが適当である。 2 公表項目について 情報公表を求める項目については、正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合とすることが適当である。 また、経年的に企業における中途採用実績の変化を把握するため、直近3事業年度の割合を公表することが適当である。 3 公表方法について 情報公表の方法については、企業のホームページ等の利用などにより、求職者が容易に閲覧できる方法によることが適当である。
※労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会決定より一部抜粋
また、2020年12月28日付官報に「中途採用比率の公表についてのガイドライン」が掲載され、一部詳細につき補足されました。
同法第二十七条の二第一項の規定 による公表は、おおむね1年に1回以上、公表した日を明らかにして、直近の3事業年度について、インターネットの利用その他の方法により、求職者が容易に閲覧できるように行わなければならない。
官報 令和2年12月28日(本紙 第403号) 中途採用比率の公表に関する最新情報(2021/02/16) 本コラムで解説しております「中途採用比率の公表」につきまして、厚生労働省より最新情報が公開されました。
【資料1】 リーフレット:正規雇用労働者の中途採用比率の公表の概要
【資料2】 正規雇用労働者の中途採用比率の公表Q&A
資料1につきましては、制度概要のリーフレット。資料2については、運用上の詳細なQ&Aとなっております。特に企業の人事部様など、中途採用比率公表の実務に関わる方々はご一読頂くことをお勧めいたします。
なお、資料2のQ&Aをご覧頂くとわかりますが、中途採用比率の公表という開示項目ひとつをとっても、各企業間での比較が可能となるような基準を設定すると、様々な疑問点や運用上のルール決めなどが必要となってきます。
後述する情報開示のガイドライン「ISO30414」では全部で58項目の開示項目が定められておりますが、それぞれがこれと同様(もしくはそれ以上)の内容となっており、対応を進めるうえでは専門的な知識が必要となります。ISO30414対応にてご不明点等ございましたら弊社までお問い合わせ下さい。
公表する内容と対象企業 上記のような議論、法律改正を経て、下記内容が企業に課されることとなりました。
「令和3年4月1日より」 「従業員301人以上の企業」については、 「全正社員採用数(新卒含む)に対する中途採用正社員の割合※」を、 「少なくとも年1回」「過去3年分」を 「公表日を明示」し「インターネット上で公開する」こと ※正社員や中途社員の定義については同法27条2およびガイドラインで規定。
政府の狙い 政府の意図としては、企業の採用状況を透明化することにより企業側と求職者側のマッチング率を上げ、適切な人材配置によって会社の長期的成長を後押しすることにより、日本全体の経済成長を推進するという大きな経済目標があります。
経済成長を支える原動力は「人」である。劇的なイノベーションや若年世代の急減が見込まれる中、国民一人一人の能力発揮を促すためには、社会全体で人的資本への投資を加速し、高スキルの職に就ける構造を作り上げる必要がある。 (中略) 終身雇用や年功序列を基盤とした日本型の雇用慣行を社会の変化に応じてモデルチェンジし、多様な採用や働き方を促す必要がある。 足元で進む新卒一括採用の在り方の見直しと同時並行的に、中途採用・経験者採用、あるいはキャリア採用と呼ばれている採用形態の拡大や、評価・報酬制度の見直しを促していく必要がある。
「成長戦略実行計画(2019)」より一部抜粋 ここで重要なキーワードが2つ出てきます。「人的資本」と「多様な採用や働き方」です。 まさに今世界では「人的資本」に対する重要性が非常に注目されており、ISOによる国際標準化(ISO30414)や各国での法制度化が行われています。日本における今回の「中途採用情報公開」は、まさにこの世界的な時流のもとでの情報公開の一部であり、第一歩と言える重要な法制度化と言えるのです。
人的資本についての世界の状況 上述の通り現在世界では「人的資本」が注目を浴びています。その背景には、2015年に国連で採択され、現在では全世界で共通目標となっている「SDGs」があります。 人や企業の「持続的成長」(Sustainable Development Goals)が最も重視される世の中にあって、企業が持続的に成長するため最も重要なものは「人」であるということが近年世界の共通認識となっています。
アメリカの状況 アメリカでは2020年11月より、SEC(全米証券取引委員会)によって、アメリカの全ての上場企業に対して「人的資本」の情報公開が義務付けられました。 主に投資家からの要望で成立した制度ですが、その企業に属する「人的資本」について、定性的な内容も含め、アニュアルレポートにより株式市場を通じて多様なデータの公表が義務付けられています。
欧州の状況 欧州においては、主に企業を主体とした動きが目立ちます。例えばドイツ銀行は人的資本の公開を積極的に進めている企業のひとつで、2013年より、人的資本のみに焦点を当てた年次報告書「Human Resource Report」 を開示しています。2013年版では、ダイバーシティや教育などを中心に全37ページで始まり、年々その質や量の発展を重ね、2019年版ではエンゲージメント、ダイバーシティ、リーダーシップ、障碍者雇用率、採用戦略、教育手法、昇進状況、育児休暇後の職場復帰率に至るまで、全56ページに渡り非常に詳細な人事データが公表されています。
もともとESGへの意識が高く、積極的に開示を行っている企業が多い欧州において、ドイツ銀行の取組は他の金融機関、企業にも大きく影響を与え、今では欧州は人的資本公開について先進的な地域となっています。
日本の状況 日本における動向としては、2021年3月とされているコーポレートガバナンスコードの改訂において、「社外取締役の割合」「管理職における男女比の割合」などの多様性についての公表が義務付けられると予想されております。これにより日本の上場企業においては、「中途採用比率」とともにこれらの人的資本に関する公表も行うことが義務付けられます。
アメリカでは投資家から、欧州では企業から、日本では政府からと起点は異なりますが、目指すところは同じで、「企業の持続的成長を達成するために、企業の人材活用状況を透明化する(=人的資本の公開)」ということで、これが昨今の全世界的な流れとなっています。
コーポレートガバナンス・コードの改定についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【2021年】コーポレートガバナンス・コード改訂のポイント 〜「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマに〜
大企業だけでなく中小企業も義務化の可能性がある 話を厚生労働省の「中途採用比率」の法律に戻します。 第27条2についての説明は冒頭で致しましたが、この条文には続きがあります。
2 国は、事業主による前項に規定する割合その他の中途採用に関する情報の自主的な公表が促進されるよう、必要な支援を行うものとする。
これは何を意味するかと言うと、理解するにはやはり元となる審議会決定を参照する必要があります。
大企業については、法的義務を求める項目以外にも自主的な公表が進むよう、中高年齢者、就職氷河期世代の中途採用比率等といった定量的な情報、中途採用に関する企業の考え方、中途採用後のキャリアパス・人材育成・処遇等といった定性的な情報の公表を支援することが適当である。 また、中小企業についても、大企業に法的義務を求める項目と併せて他の情報の公表が自主的に進むよう、支援を行うことが適当である。
※労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会決定より一部抜粋 つまり、法律で明記した公表項目は「中途採用比率」のみであるが、国は大企業に対してはその他定性的な項目の公表も促進すべく「支援」して行く(求めていく)ということ、また、中小企業に対しても程度は別として大企業と同様のものを「支援」していく、ということが暗に示されている条文と理解できます。
今後も法律やガイドラインなどの改正や追加によって企業に対する様々な情報公開が求められていくことが予想されます。
【備考】情報公開のガイドライン「ISO30414」 世界的に進む人的資本の公開についてですが、「中途採用比率の公表」のようにその公表項目の詳細が法的義務によって定められているケースというのは実はほとんどありません。先述したアメリカでの上場企業に課せられている情報公開にについても、その項目の選定から計算方法、目標値の設定に至るまで全て企業側の裁量に任されています。上記の第27条2-2についても同様です。
このような状況下で、情報の発信側(企業)にとっても受け取り側(投資家や労働者)にとっても有益なガイドラインとなるのがISO30414です。
ISO30414では11領域58項目の詳細公表項目が規定されており、企業側はこれに沿った報告を行うことで、上述のSECの義務化要求にも対応する報告を作成することが可能となっています。2022年4月とされている東証プライム市場開設にあたっても、企業に対して要求される一段高い、国際的なガバナンスへの対応方法として、国際標準であるISO規格が採用されていくことは非常に自然な流れです。
ISO30414については下記の記事で詳細に記載しています。関連記事:ISO30414が注目される理由とは?企業への影響についても解説
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本記事は、弊社サービスコトラコンサル 掲載記事を転載したものです。
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